第102話 花見 (後編)

「皆さん、今日はお集まりいただきありがとうございます。あまり騒ぐ事は出来ませんが、花見なので楽しみましょう!」


 ブルーシートに座ると、綾佳は一言呟くと各々に紙コップを配り、飲み物も注いでいった。

 そして配り終わると綾佳は、「乾杯」と言ってコップを高くあげた。


「乾杯」

「綾佳先輩、私と乾杯してください」

「乾杯」

「うふふ、乾杯だなんて初めてですわ」


 海里、柚月、麗音、レイナも後に続いて言った。


「それでみんなは何を作ってきたの?私はね、サンドイッチを作ってきたよ!」


 周りに聞きながら、綾佳は鞄からお弁当箱を取り出して箱を開いた。

 

「美味そうだな。私はその… デザートなんだが、いちご大福だ」


「麗音さんがデザートですって…?! っふふ…似合わなすぎる」


 レイナは最初は驚いたが、途中から笑うのを我慢していた。


「うるさい!レイナは何を作ったんだよ!!」


「私はこれですわ」


 そう言って鞄から取り出したのは重箱だった。

 箱を開けると、下段にはごはんを上段にはおかずを詰めていた。


「凄い!!レイナちゃんが作ったの?」


 柚月と話していた綾佳がレイナのお弁当を見て聞いてきた。

 それに釣られて柚月も、綾佳の側を離れずにくっついて見ていた。


「違いますわ。これはお取り寄せしましたの。私は料理があまり出来ないので」


「なるほど〜!でも、美味しそうだからこれはこれで許す!!」


「うふふ、ありがとうございます!」


「綾佳先輩はもちろんだけど、麗音先輩やレイナ先輩も凄い…! これが上位の力…」


 柚月はそれぞれのお弁当を見ながら感心していた。まるで自分はまだまだと言っているような気がする。


「おい、さっきから気になったがこいつ誰?」


「私も気になっていましたわ」


 麗音とレイナは柚月を見ながら呟いた。

 柚月は肩を竦めて綾佳の後ろに隠れた。


「この子は一ノ瀬柚月ちゃん。女優だよ!だから、二人とも仲良くしてほしいんだけど」


 綾佳は麗音、レイナと順に見て、最後に柚月の方を見た。

 

「そうか。で、海里はどう思うんだ?私とその子の相性合うと思うか?」


「………えっ?!」


 海里は静観して見ていたので、急に話し掛けられて驚いていた。


「いいから率直な意見を聞かせてくれ」


「そうですね… 麗音さんやレイナさんとは相性合うと思いますよ。彼女は女優だし、お二人から学びたいこともあるでしょう」


「なるほど。海里にしてはいい事を言ってるな」


「そうなのですね。なら、私も仲良くさせてもらおうかしら?」


 海里の言葉に二人は共感していた。

 そして柚月の方を見て、手を差し出した。


「よろしくな、一ノ瀬」

「よろしくね柚月ちゃん」


 柚月は綾佳の陰から手を差し出して小さく


「よろしくお願いします…」


 と呟いた。



「それじゃあ、皆んな仲良くなれたと言う事で、早くお弁当食べよ!」


「(綾佳、そこは空気を読んで… 今、確実にいい雰囲気なんだから)」


 三人の友情が芽生えた所の発言に、海里は小声で綾佳に伝えた。


「海里、全て聞こえているぞ〜」


「ごめんなさい」


「別に謝らなくてもいいんだが。ほら、一ノ瀬が怖い顔をしてきたじゃん」


「麗音ちゃんの目付きじゃない?」


「綾佳さんそれは違いますよ。麗音さんは言葉がキツいのですよ」


「お前ら、二人揃って…」


 麗音は溜息を吐きながら、頭に手を当てた。


「ふふふ… 皆さん、揃うと面白いですね」


 四人の会話を聞いていた柚月は思わず微笑んでいた。

 その笑みにそれぞれ顔を見合わせたあと、四人も笑みを溢した。


「そうだな。私たちが揃うと、案外最強なのかもな」


「そうですわね。今度何かしらで共演できたらいいですわね」


「それ面白そう!!私も何かしらで共演できたらいいな〜!」


「いいですね!私も先輩達の共演している所見たいです!あわよくば、私も…なんて(笑)」


 三人の話を聞いて柚月は共感しつつ、抜け目なく自分も推薦して貰おうとしていた。


「もちろん!柚月ちゃんも共演できるようにしないとね!いいよね、みんな?」


「もちろん。こんなに面白そうな子を見逃す訳にはいかないよ」


「えぇ、私も賛成しますわ」


「皆さん… ありがとうございます…!!」


 まだまだ未熟者の柚月だが、憧れの先輩たちに興味を持ってもらえて涙目になっていた。


「よし、皆んなで写真を撮ろう!」


 綾佳の提案に三人は頷いた。

 そして写真を撮ってもらう為に、綾佳は海里に携帯を手渡した。


 海里は「分かった」と一言呟き、携帯を受け取った。


「それじゃあ、撮るよ。ハイチーズ」


 海里の合図で、四人は笑顔でピースをした。

 そして撮り終わったら写真を確認して、四人は満足して写真を交換していた。


「海里くんありがとうね!」


「これくらいなら、いつでもやるよ」


「優しいですわね」


「流石、海里だな」


「気に入らないですが、今日はだけは感謝を伝えます。ありがとございます」


「えっと、その… こちらこそ」


 皆んなから感謝をされた海里は少し照れ臭くさり、頭を掻きながら呟いた。


 その後、花見は午後二時まで続き、動物園に行くことになった。

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