第98話 迷ったら新作だ!
「フラペチーノ… 種類を聞くのを忘れた…」
コーヒー屋さんに着いた海里はメニューを見ながら迷っていた。綾佳はお金だけ渡して、欲しい種類を言わなかったからだ。
もし気に入って貰えなかったら、綾佳も怖いが柚月にも怒られると考えていた。
「どうしよう… 定番そうな抹茶か?それとも季節限定のいちごか?一体どれにすれば…」
フラペチーノには色んな種類があり、海里の中での定番は抹茶だと思っていた。
だけど、それは海里の中での定番なので、例えそれを買ったとしても喜んでくれるとは限らない。
「あれ?貴方は確か、颯斗の友達の…」
悩んでいると声を掛けられた。
声の主は颯斗の彼女の水瀬楓だった。
「あっ、楓さん。寺本海里です。こんにちは」
「海里さん!そうそう、名前忘れててごめんなさい」
「いえ、大丈夫ですよ。でもこんな所で会うなんて珍しいですね」
「ほんとですね。それで、海里さんは何をしていたのですか?」
「綾佳とその友達にフラペチーノを買ってくることになりまして、その悩んでいた所です。楓さんはどうしてここに?」
楓がここにいる理由を何となく海里は聞いてみた。
「なるほど。私は用事の帰りに新作のフラペチーノを飲みに来たのです!」
「そうでしたか。やはり買っていくとなると、新作を買ったら喜んでくれますかね」
同じ女性という事で楓に聞いてみた。
二人の好みが分かれていたとしても、女性目線からのアドバイスを貰えれば怒られる事はないと考えていた。
「そうですね… 新作は確かに喜んでくれるとは思いますが、チョコとかもいいかもですね」
「なるほど…」
「でも迷っているなら、新作で手を打ってもいいのでは?下手に買うより、季節限定は今しか飲めないですし」
「そうですね。ありがとうございます!とても参考になりました」
「いえ、お役に立ててよかったです」
海里は楓にお辞儀をして感謝を述べた。
楓も微笑みながら返答した。
それから楓は席を取りに行き、海里はレジへと並びに行った。
「いらっしゃいませ。店内でお召し上がりですか?」
「お持ち帰りで」
「ご注文はいかがなさいますか?」
「いちごフラペチーノを二つお願いします」
「かしこまりました。お会計は——円になります」
海里はトレイの上に綾佳から預かったお札を乗せた。
「お預かりいたします」
店員は手際良くお金を手に取り、レジを操作した。そしてお釣りを手に取り、トレイの上に乗せて海里の元に置いた。
「受け取りはバーカウンターになりますので、こちらの番号をお持ちになってお待ちください」
海里はお釣りを財布に入れ、番号札を手に取り移動した。
それから五分後、番号が回ってきて自分が頼んだ飲み物を受け取った。
◇
楓に一言言ってコーヒー屋さんを出た海里は、急いで綾佳と柚月が待つ家へと向かった。
「寺本さーん!少し待ってください」
早歩きで歩いているとまた声を掛けられた。
今日はよく声を掛けられるなと思いながら、後ろを振り向くと北島さんがいた。
「お疲れ様です。北島さんがここにいるってことは綾佳に用ですか?」
「お疲れ様。綾佳のマネージャーなのだからそれしかないのでしょ」
海里の質問に、北島は呆れながら答えた。
「因みに、家に今一ノ瀬柚月という子がいますよ」
「……はっ?!」
今までに見たことがない顔をしていて、海里は少し笑いそうになってしまった。
「学校の後輩になって、何だかんだあり家に来ることになったのです」
「ちょっと、えっ… 状況が飲み込めないのだけど」
北島は頭に手を当てながら俯いていた。
余程、理解が出来ないのだろう。
「柚月と綾佳が仲良くなりました」
「まさかこんな事になるとは…」
「何かダメなのですか?」
北島の反応がとても悪い雰囲気に見えたので、恐る恐る聞いてみた。
「ダメでは無いですよ。寧ろ、タイミングが良すぎて怖すぎます」
「どうゆう意味ですか?」
「それは本人の前で言いますので、急いで綾佳さんの家に向かいましょう」
海里は頷き、北島と急いで家に向かった。
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