第18話 久しぶりの学校

 今日は朝から海里がずっとソワソワして落ち着きがなかった。

 何故なら、一週間ぶりに学校へ登校するからだ。


「もう少し落ち着きなよ〜別に転校した訳ではないんだし」


「簡単に言ってるけど、一番大変だからな?この一週間何してたのとか、何があったのとかさ」


「私との同棲の話をひ・み・つだもんね」


「俺は何を話せばいいんだろうか…」


 海里は頭を悩ませながら、綾佳が話をしながら用意してくれた朝食が置いてある場所へ座った。

 

「とりあえず、海里くんが久しぶりの学校という事で、張り切って目玉焼きを作ってみました!」


「いやいや、張り切った結果がパンと目玉焼きは誰でも作れる朝食だよな?」


「そんな目で見ないで…私、貴方の為に頑張って作ったの」


「はぁ、言いすぎたかもな。ごめん」


「うん!全然、許してあげる!」


 海里は涙目になっていた綾佳に謝ったが、その後に続いた綾佳の発言にイラっとした。

 それと同時に演技だったのを見抜けなかった自分に、悔しい気持ちが押し寄せた。


「それより海里くんさ、時間大丈夫?」


「えっ?」


 海里が時計を見ると、八時の時刻を指していた。

 学校までは綾香のおかげで自転車があるのだが、それでも三十分は掛かる場合がある。

 すなわち、遅刻になる可能性が高いのだ。


「うわー綾佳、俺行ってくる」


「うん!行ってらっしゃい!」


 海里はネクタイをきっちりと締め、ブレザーを羽織ってからスクバを持ち自転車の元へ駆け込んだ。

 そのままの勢いで自転車を準備し、一気に学校へ向かって行った。


 その間際に、海里はもう一度眺めていた綾香の方を見たら声は聞こえなかったが、口元を見ると「あなた」と言ってる様に見えた。

 



 八時二十五分ギリギリの到着で遅刻にならずに済んだが、教室に入った途端にクラスメイトの視線は全て海里に向けられた


 海里は少し俯きながら席へ着き、周りの声を聞いていた。


「寺本くんだわ。一週間前のあの日何があったのかしら」


「誰だっけ?あんな奴いたっけ?」


「一週間もお休みしてたけど、まさか仮病だったりしてな」


 様々な意見が聞こえるが、海里が一番辛かったのは一週間で忘れられた事だった。

 数ヶ月も休んでて忘れられるなら分かるけど、一週間で忘れるものか?と言いたかったが、グッと我慢して堪えていたら後ろから声を掛けられた。


 声の主は楚辺颯斗。海里の友達だ。

 そして、一週間ぶりの再会であった。


「海里久しぶりじゃん!何してたんだ?」


「おぉ、颯斗じゃん。風邪は大丈夫か?」


「質問に対して、質問で返すなよ〜俺は見ての通り元気になったぜ」


「悪い悪い。俺はちょっと訳あってな…」


 友達の笑顔を見て少しは元気が出た海里だったが、颯斗の質問はなかなか答えられずにいた。


「そうか…まぁ、話したくなったら聞くさ。とりあえず、海里が元気そうで良かったよ」


「そう言ってもらえると助かる。いつになるか分からないけど、話せる時が来たら話すよ」


「待ってるぜ」


 颯斗の言葉には色々と含みがあるように聞こえたが、その優しさが今の海里には暖かく感じた。

 

 それからすぐに先生が来て、ホームルーム後に昼休みに職員室に来るようにと言われた。

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