第16話 寄り道しよう

「これにて本日の撮影は終わりです」


 本日の撮影が全て終わり、綾佳が着替えている間に北島は今後の仕事の話をしていた。

 海里も北島の横に立ち、話している事を聞きながらメモをしている。

 

「では、次もよろしくお願いします」


「こちらこそ、またよろしく。綾佳ちゃんの時は雑誌がよく売れるって編集部も言ってるし」


「それは嬉しいお言葉ありがとうございます」


「じゃ、私はこれで」


 そう言って、鹿島はポケットに手を入れてドアから何処かに出て行った。

 

「寺本さん、私達もこの場から一旦出ましょう。そして控室の近くで瀬倉を待ちましょう」


「分かりました」


 海里と北島は撮影場所から離脱して、綾佳の着替えている控室の近くまで移動した。



「瀬倉さん、着替え終わりましたか?」


「うん!着替え終わってるから、中に入っても大丈夫だよ」


「では失礼します」


「失礼します」


 中に入ると先程まで来ていた制服をハンガーラックに掛けていた。

 

「本日のお仕事はこれで終わりですね。瀬倉さんこの後どうしますか?」


「そうだね〜」


 そう言いながら、綾佳は海里の方をチラリと見て何かを思いついたような顔をして話を続ける。


「海里くんと寄り道しながら帰りたいから、どこかに寄ってください」


「瀬倉さん、あまり人混みは良くないですよ。だけどそこまで言うなら、せめて映画とかにしませんか?」


「映画か…うん、気になってたのもあったし今回はそれで手を打とう!」


「あの、俺の意見はないのですか?」


 話が段々と進んでいき、自分の意見はないのかと思ってしまった海里はつい聞いてしまった。


「海里くんは私と一蓮托生だから、どこまでも意見を言ってはいけません!」


「それって…今後一切の反論をしてはいけないという事では!?」


「そうともいう〜」


 めちゃくちゃ笑顔で言ってきたので海里も流石に反論したかったが、色々と力が抜けて今回は見逃すことにした。


「とりあえず、今日は行きますけど今後行きたくない所は反論しますからね」


「えぇー北島さんも何か言ってよー」


「流石に私も…ですね」


 北島も綾佳の言葉に呆れて、海里に同情の目を向けられた。

 そして、映画館のある場所へと移動した。



「とうちゃーく!今回はこの映画館で見ようと思います!」


 撮影現場から車に乗って三十分、着いたのは新宿にある大きな映画館だ。

 海里は現場近くの映画館だと思っていたので、何故?と思いながら座り疲れをしていた。


「とりあえず、海里くん大丈夫かい?」


「だ…大丈夫。ちょっと慣れないことが続いたからさ」


「そっか…とりあえず、映画館の中に入ろうか」


「そうですね」


 心配してくれたので映画は後日と言ってくれる事を期待した海里だったが、期待とは反対の言葉が返ってきて残りの元気がなくなりかけた。

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