第13話 朝、起きたら
翌日になり布団の上で寝ていた海里は、体が重いと感じていた。
目を開けるとそこには、悪戯顔をした綾佳が乗り掛かっている。
「綾佳、何で俺の上に乗っかってるの?」
「えっ?私、昨日海里くんの事起こしに行くって言ったよね?」
「言ったな。で、今何時だ?」
「六時だよ」
綾佳は近くにあった時計を手に取って、海里に見せながら言ってきた。
「待ち合わせの時間って何時だっけ?」
「七時半だよ。撮影が八時半で今日は遅い方だね」
八時半と聞いてこれで遅い方なのかと、海里はマネージャーの仕事の大変さを一日目にして体感していた。
「とりあえず起きるから、そろそろ横にずれてくれないか?」
「そんな事を言っていいのかな?今ならトップアイドルの女の子を、ここで襲う事が出来るんだよ?」
「そのトップアイドルが、何言ってるんだよ!!!ほら、着替えるから横にずれなさい」
綾佳は着ていたワイシャツの胸元までボタンを開けて、隙間から見えるふくよかな双丘で海里を誘惑していた。
海里は誘惑を振り切って、無理矢理体を起こして綾佳をずらした。
「いったーい…今日撮影なのに怪我したらどうするの!!」
「綾佳が移動しなかったのが悪い」
「もう!仕方がないから、私はリビングで待ってるよ」
「普通はそうだから」
綾佳は頬を膨らませながら部屋を出て行き、海里はやっと着替えられると思いながら支度を始めた。
支度が終わりリビングに行くと、綾佳は朝食を食べるのを待っていた。
「遅い!!支度に三十分も掛けるなんて、前の日から準備しないと駄目じゃない」
「それは申し訳ないが、綾佳は持っていく物とか準備出来ているのか?」
「前の日から用意してます!それに持っていく物は、今日はあまりないかな」
「そうなんだ」
海里は仕事内容しか聞いてないので、持ち物とかについては知らなかった。
「とりあえず、時間がなくなるから朝食食べようよ」
「そうだな」
「「いただきます」」
海里と綾佳は息を合わせて、挨拶をした。
朝食は撮影って事で、綾佳はお腹が出ない食べ物で海里はパンが用意されていた。
海里は自分だけ美味しく食べていいのかなと罪悪感を持ちながら、綾佳に迷惑かけないように早めに食べ終えた。
「「ごちそうさまでした」」
「海里くん、お腹いっぱいになった?私、今日も少ないけど普段の日も少ないから、普通の人の量が分からなくて」
「パン一個だけでもお腹いっぱいになったよ。それよりも、綾佳の目の前で食べるのが申し訳なかったよ」
「気にしないでどんどん食べていいよ!私はいつも通りだから、気にする事もないし」
そう言って綾佳は立ち上がり、食べ終えたお皿を台所へと持っていった。
海里もちょうど食べ終えたので、綾佳の後を追いお皿を持っていく。
「私が洗うから、海里くんは座ってていいよ」
「分かった。次は俺が洗うから」
「それは楽しみにしてますね」
綾佳はニヤニヤしながら呟くと、お皿に目を向け洗い始めた。
海里は邪魔にならないように、リビングに移動して座る事にした。
◇
———ピーンポーン ピーンポーン
三十分後、部屋の中にインターホンが鳴り響く。
画面を見ると、北島が映り迎えに来たことが分かる。
「瀬倉さん、寺本さん準備は出来てますか?」
「私はいつも通り出来てるよ!」
「俺も出来てます」
海里は急に苗字で呼ばれた事に驚いたが、同業者になったので変わったのだとすぐに察しがついた。
「では、行きますが、寺本さんは現場に着いたら私の側にいてください。スタッフに紹介するので」
「分かりました」
「あと、なるべく〝俺〟ではなく〝自分〟と言った方がいいと思いますよ」
「はい。以後気をつけます」
こうして、海里の初めてのマネージャーの仕事が始まるのであった。
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