第4話 マネージャー襲来

 一時間後、室内にインターンが鳴り響いた。


——ピーンポーン ピーンポーン


「はい、どちら様ですか?」


 綾佳は訪ねて来た人が誰だか分かっているのに、口元がニヤけながら惚けていた。

 その姿を見た海里も思わず笑みを溢しそうになったが、これから真面目な話をする事を考えぐっと我慢した。

 そして綾佳の悪戯を怒りながら、マネージャーは部屋に上がる事ができた。


「初めまして。私、瀬倉綾佳のマネージャーをやっております北島絢美と申します」


「初めまして。えっと…寺本海里です…」


 海里は立ち上がり綾佳のマネージャーの元へ行き挨拶しようとしたら、先に挨拶をされた。

 続けて海里もお辞儀と挨拶をしたが、話す事が思い浮かばず名前だけ言って座っていた所に戻った。

 マネージャーも綾佳に座るように促され、座る。


 四角い机に海里と綾佳が対面に座り、マネージャーがその横に座ったのでこれからミニ裁判が起こりそうな雰囲気になった。

 だがその雰囲気を一瞬で壊したのが、綾佳である。


「さっき挨拶してたけど、こちらが私と同棲する事になりました寺本海里くんです!」


 ノリノリでしかも拍手をしなが挨拶をされて、海里は少し恥ずかしくなった。


「それは分かりましたが、ずっと我慢してたことを言いますね」


 マネージャーは一息吐くと、続けて口を開く。


「瀬倉さん!貴方、トップアイドルの自覚ありますか?私中に入ってすぐに男の人が見えた時、叫びたくなりましたよ。週刊誌にバレたら…はぁ…」


「大丈夫でしょ。バレないように過ごせば!それと私———」


 綾佳はマネージャーの耳元に近づいて小声で話していたので海里には聞こえなかったが、聞いていたマネージャーは開いた口が塞がらないでいた。


「…ちょっと、社長に電話するから待ってて」


 流石に一人で対処出来なくなったのか、社長に電話すると言って携帯を取り出した。


「あっ、北島です。今、瀬倉の自宅で話を聞いていたのですが———」


 話を聞くにどうやらここまで来る間に、マネージャーは社長に事の顛末を話していたらしい。

 

「えっ、ほんとにいいんですか?…はい、わかりました」


 電話は僅か数分で終わり、マネージャーは電話を切るなり海里達の方を向いた。


「結論から言うと、社長は貴方の考えに賛同するそうよ。だから同棲するのも、貴方の要望も許すって。ただ、専属マネの件は少し話が必要かな」


「…」


 えぇ…それ許すのかよと海里は思いながら無言の綾佳の方を見るが、すぐにニコニコして口を開いた。


「そうですか。まぁ同棲とそれはすんなり通るのは予想通りでしたね。専属の件は話し合いか…面倒臭いな〜」


「私だって社長が許すなんて驚いたわ。でもね、バイトとなると雇用問題があるから、瀬倉さんが勝手に決める事が出来ないのよ」


「分かりましたよ。話をしに事務所行けばいいのでしょ…海里くんも一緒に着いてきてね?本人なんだから」


 突然話を振られた海里は驚きながらも、綾佳の質問に対して「分かった」と答えた。

 

「じゃあ、事務所いつに来る?今日は金曜日だから、明日来てもいいけど?」


「そうだね〜海里くんはいつがいい?」


「俺は明日でも大丈夫だよ」


「だそうなので、明日行く事にします!迎えはいりませんから!」


 綾佳は腕をバツにして、マネージャーに向けた。

 マネージャーは今の綾佳には何言っでも無駄だと諦めた顔をしながら、溜息をしながらジト目を向けた。


「では私は今日これで失礼します。海里さん、明日お待ちしておりますね。瀬倉さんはちゃんと連れてきてくださいよ!変装も忘れずに!!」


「はーい!」


 綾佳はマネージャーに挨拶をすると、海里にだけ聞こえる声で「変装はしてるけど、二人でお出かけだからデートみたいだね!」と悪戯に言ってきた。

 海里はそれで顔を赤くして、それを見たマネージャーの頭には〝?〟が浮かんでそうに首を傾けた。

 そして、マネージャーは綾佳の家を出た。


 すっかり遅くなったので夕飯は出前を取る事になったのだが、またもや金額が高すぎて海里は卒倒しそうになっていた。

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