第2話 ファミレスで大事な話
海里は話しかけてきた瀬倉綾佳の事を知っていた。テレビで見た事あると言ってもいいが、一番に知ったのは学校のクラスメイト達が話していたからだ
そんなトップアイドルが、何故ボロボロになっている海里に話しかけたのか疑問に思っていた。
「とりあえず、海里くん寒そうだからあそこのファミレスでお昼食べようか!私が奢ってあげるから」
少し警戒した雰囲気を出していたら、綾佳が指を指して提案してきた。
その提案は嬉しい事で、お金がなかった海里は食事を取れていなかった為空腹の状態で過ごしていた。
なので警戒はしながらも、綾佳の提案に乗ることにした。
ファミレスに入るなり、四人席へと案内される。
広々と使えて少し満足している海里に、綾佳は少し嬉しそうに見つめていた。
「とりあえず、何か注文しようか。そこのタッチパネル取ってもらってもいいかな?」
海里はすぐ側にあったタッチパネルを取って綾佳に渡した。
綾佳は慣れた手付きで操作して行き、自分の料理を選び終わったのか海里の方を向いて聞いてきた。
「海里くんは何食べたい?一応、ランチも美味しいけど私は鶏もものみぞれ煮御膳がオススメかな〜」
綾佳はそう言って、オオスメしてきた料理のページを見せてきた。
海里はとりあえず何か食べたかったので、オススメされた料理を頼んだ。
「じゃあ…その、鶏もものやつで」
「おっ!いいね!じゃあ、頼んじゃうね…ドリンクバーも付けとくね!」
それを聞いて海里は首を縦に振って反応する。
注文を終えお互いにドリンクバーを取りに行き落ち着いたので、綾佳がさっきの話の続きをする為に口を開いた。
「それで海里くんには、私の家で同棲する事になるんだけどいい?」
「あの…話が見えてこないのですが、何故俺が貴方の家で同棲する事になったのですか?」
どう考えても初対面の俺といきなり同棲するはずがないと思い、海里は核心を聞く事にした。
「う〜ん…話せば長くなるんだけど、海里くんのお母さんと私のお母さんが同級生で今でも親交があったわけ。それでこの前、海里くんのお母さんの訃報を聞いて私のお母さんが海里くんの事が心配になり私に見に行って言われたの」
「話は分かりましたが、それだと同棲の話は無かったと思いますが?」
「それは私が一人暮らしで生活していて部屋が余ってるし、お母さんが「海里くんと生活しちゃえば?」って言ってきたからノリで?まぁ、私は海里くんの第一印象は良かったから全然平気だよ!」
全然良くないー!!と思った海里はその理由を綾佳に伝える。
「あの、瀬倉さんってトップアイドルですよね?それなのに、同棲って…」
周りにバレるのを避ける為、海里は小声で綾佳に話した?
「バレなければ大丈夫でしょ?マネージャーには…後で伝えとくけど、ゴリ押しで通すから!」
流石にそれは無理じゃないかなと思いながら、注文していた料理が来たので話は一旦終了した。
途中食事をしていた時、面白い話が聞こえてきて海里は綾佳と二人で聞き耳を立てていた。
「私達は貴方の曲が好きなの。グループとしても応援してるけど、貴方が大変だと聞いたから私達に手伝いをさせて欲しいの。それでこの家を貴方に貸すから、頑張ってね」
「ほんとうにありがとうございます。俺、結構大変で今も音楽に力入れたくても出来なくて…」
「そうだよね。それで、テレビや洗濯機もないらしいね。家電も提供するから安心してね」
「俺、絶対に売れます!!頑張ります!!!」
「焦らなくていいからね。それと一人には言ってもいいけど、他の二人には私達の事は秘密だよ」
「はい!」
トップアイドルの真後ろで絶対に売れますは強気に出てるなと思いつつ、海里は綾佳の方を見た。
すると綾佳は少し苦笑いしながら、アイスティーが入ったコップを手に取りストローで飲んでいた。
それにしても、さっきの話をしていたおじさんとおばさんはいかにも怪しい雰囲気があったが、あの青年が騙されていないといいなと思いながら残りの食事を一気に食べた。
「ふぅ…食べたね〜海里くんもお腹いっぱいになった?」
「久しぶりにお腹いっぱいになりました。感謝します」
「いいのいいの。あっ、デザートも食べる?」
「いやいや、遠慮しますよ。いくら奢って貰えるからって、そこまで我儘ではありません」
そもそもトップアイドルである綾佳に奢って貰うこと自体海里にとっては恐れ多いのに、更に追加で注文していいと言われても遠慮してしまう。
「まぁ、デザートも私のオススメを勝手に注文しちゃうんだけどね〜」
海里の遠慮は綾佳には通用せず、海里の目の前で楽しそうにタッチパネルを使って注文していた。
「あっ!大事な事言うの忘れてた。同棲する条件があるの!!」
「じょ、条件…?」
トップアイドルが提示する条件は何だろうと思いながら、海里は反復して聞き返していた。
「そ、でもそんな警戒する事はないよ。まず一つ目が家賃、光熱費、食費、ケータイ代は私が全て受け持つから安心してね」
海里は「えっ…それが条件?」と思いながら、目を丸くして聞いていた。
そして綾佳は更に話を続ける。
「二つ目が土日と学校終わってからの放課後は、私の専属マネージャー(バイト)をやってもらうね!」
「へ?」
予想外の台詞に、海里は変な声を出して反応した。そして学校通っていいんだっと思った。
「えっと…いくつか聞きたいのですが、学校通い続けていいのですか?学費とか…」
「あー、その辺は気にしないで。私が何とかしてあげるから」
「もう一つが、瀬倉さんの専属マネをやる理由が分かりません」
「それは、私が海里くんを養うんだから主人の側にいるのは当然でしょ?それにバイト代出してあげるから、一石二鳥でしょ?」
色々と理不尽に聞こえる部分があるが、住む所と食事、それに学校まで通えるなら悪い話ではない。
「専属マネ(バイト)は、本当のマネージャーは解雇になりませんよね?」
「てか、マネージャーの手伝いをするマネージャー的な?とりあえず、これもゴリ押しで通すから任せなさい」
ドヤ顔をしながらサムズアップして、海里の方を見ていた。
そして頼んでいたデザートのケーキが届き、美味しく頂いた。
それから俺達はファミレスを出たのだが、会計が三千円と奢りと分かっていながら今の海里では高額で顔が真っ青になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます