第8話 エピローグ

気がつくと、ベッドの側にパイプ椅子が並べてある病室に寝かされていた。


どうやら、俺は仕事に行くのが嫌になり、考え事をしている内に、誤って駅のホームに落ちてしまったらしい。

運が良かったのは、ぶつかったのが各駅停車の車両であった為、減速途中であり、即死にはならなかった事だ。


自殺の様にも見えるが、自分自身は本当に死ぬつもりじゃなかったんじゃないかと思う。


俺が意識を取り戻して、両親は狂ったように泣いていた。その姿を見て、二度とこんな事はしまいと心に誓った。


俺は結局、病院での仕事を辞めた。

今は、コンビニでアルバイト生活をしている。

30歳前にして、アルバイト生活なんて、きっと普通の人なら理解が出来ないと思う。


それでも俺は、きっとどこかに今の自分の行いを信じてくれる存在がいてくれる…と信じている。

どれだけ愚鈍でも、どれだけ怠惰でも、人として、全うに生きていきたい。


そう言えば、もうすぐ近所の神社のお祭りがある。「占部川の羽根西神社」といえば、小学生達には大人気のお祭りで、勤め先のコンビニもかき入れどきとなる。


明日の事はわからないけれど、ちょっとでも地元の子供たちが喜んでくれたら、とアルバイトに向かう今日この頃である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

天使の居場所 かぬち まさき @jhons

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ