第7話

「鏡の国とドッペルゲンガーは別なのに同じ…?」


「ああ。特性自体はあまり変わらない。例えば本人同士が会えば死ぬし、フラッと現れる。怪異の方は色んなやつに化けて情報を集めたり妖力を集めたりするが、鏡の国はただ紛れ込むだけだから、大抵すぐに帰る」


「でも澪は…」


「…ああ。強制的にこちら側に送られたんだ」


「でもなんで?私、こっちにいてもメリットないんだけど」


「…先程から向こうの俺と連絡が取れていない。つまり…」


「…!」


「え?なに?」



話を要約すると、鏡の国というのは元々は存在しなかったという

過去に起きた種族間大戦と呼ばれる死神•吸血鬼•天使•冥府との戦争の際に作られた、戦うための場所

それが鏡の国であり、別名を崩壊世界というようだ



「崩壊世界の特徴は、鏡の国って名前からわかるようにこちらの世界とは真逆の…鏡合わせの世界だ。そこに複製されたこちら側の住人がいる。無理やり作ったせいで法則が崩れ、本人が会うとこっち側が死ぬようになったけどな」


「…けど、ならなんで澪が贈られたんだ?その話を聞く限り、こっちに送るメリットはないぜ?」



一樹の問いかけに対し、夜斗はまたスマホを出した

画面に表示されているのは夜斗の神機夜刀神が地面に突き刺さり、その横で向こう側の夜斗が地に伏している画像



「負けたんだよ。死神が」


「「「え…?」」」



黙って話を聞いていた莉琉までもが声を上げた

そしてその画像を送ってきた人物から送られてきたメッセージを夜斗が読み上げる



「「こちらの世界の久遠を送ります。その子だけは助けてください。僕は来夏らいかを…こちら側の君を助け出し隠れることにします。おそらくこちらの世界はもう壊れることでしょう。どうか、澪をお願いします」と書かれている。つまり、「俺」が負けて、「俺」が澪をこっちに送ってきたんだ」


「…でもなんで…。そんなこと、一言も…」


「…慰み者にするつもりなのね、敵は」


「おそらくな。今も、送り主…こっちでいう紗奈が来夏を匿ってなければおそらく…」


「性的な拷問を受けることになるのね…」


「…そんな…。来夏様…」



夜斗はそこまで言って、澪の肩に触れた

1分程度で手を離し、ため息をつく



「…なるほどな。ちょっと外に来い。天音!俺上がる!」


「えー…。別にいいけど、バイト減らしたくないから生きて帰ってきてねー」


「わかったっての。心配するとこそこじゃねぇだろ」


夜斗はバックヤードから荷物を持って外に出た

後ろから全員がついてきたのを確認して、彼女を呼ぶ



「唯利!」


「…?」



目の前にレールが現れた

そして夜斗の目の前で、その電車が停止して中から猫耳パーカーの女の子が降りてくるのが見える



「久しぶりに呼ばれた気がする。なに?」


「鏡の国まで頼む」


「…何があったの」


「向こうで来夏が負けたらしい。応援に行く」


「…そう。…でも向こうの駅は使えなくなってるから、そのへんに投げるよ?」


「構わん。急行で頼む」


「了解。全員乗って」



唯利が中に入り、スイッチを操作すると乗り込み口にハシゴが現れた

夜斗は躊躇いなくそれを使って中に入り、全員に乗るよう促す

戸惑いながら乗り込む一樹と久遠、そして澪

莉琉は予備戦力としてこちら側に残ることになった



「唯利!」


「うん。進行方向確認、崩壊世界。信号ヨシ、戸閉確認。起動…発車!」



唯利がコンソールに手を当てる

すると電車が動き出し、光の輪の中へと突入して行った

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