第6話 『目太母神社の秘密』


 駐車場は(空き地、と、言うべきですが)思いの外、静かで、自動車は、10台くらいしかいませんでした。


 それでも、前回来たときは、からっぽでしたから、大幅な増加です。


 人影も、チラチラと見られました。


 もしかしたら、あの、遮光器土器みたいな宇宙人が居たりするかもしれないと、考えていたので、ちょっと安心したのです。


 しかし、それは、まさに、杞憂ではなかったのですが。


 階段を上がり、鳥居のしたをくぐり抜け、本殿の敷地に入りましたが、そのとたん、そこは、もはや異世界です。


 『な、な、な、なんとお。』


 前回来たときは、確かに、かなり広いけれども、本当に疲れたような場所でしたが、今は、別世界のように、人々がたくさん、集まっており、活気に満ちています。


 色とりどりの飾りつけが行われ、華やかな雰囲気が演出されていました。


 しかし、このたくさんの人々は、どこから来たのでしょうか。


 駐車場の自動車は、少なすぎるような気がします。


 近隣の人々が、歩いてきている、というのが、最も有りそうなことでした。



 しかし、みな、普通の人間のようであり、おかしな人の姿はありません。



 『よく、いらっしゃいました。』



 振り向けば、それは、前回、あの丸薬を買わせていただいた、巫女さまです。


 『たぶん、来ていただけるとは思いましたが。』


 『あの、たいへん、お世話になりました。病気は、かなり、良くなりました。』


 『それは、目出度いことでした。』


 『はい、しかし、あのあと。あのような事件がありまして、………』


 やましんは、ちょっと、言い淀んだのです。


 『わかります。では。こちらにどうぞ。』


 巫女さまは、やましんを、社務所の奥にある、屋敷の中の一室に案内したのです。


 すると、60代くらいの男性が現れました。


 『当神社の宮司です。父親でもあります。』


 『ようこそ。あなたさまは、我らにとって、非常に大切な方なのです。本日は、良くご説明をいたしたく存じます。』


 『それは、ありがたいですが、難しいことは、わからないですよ。』


 『なに、しごく、簡単なのです。ここは、目太母神社ですが、正式には『抗目太母神社』なのです。かつて、目太母星人により、滅ぼされた、火星人の末裔が興した神社です。我々は、この山の奥に細々と住んできました。いま、集まっている多くの人々は、火星人の子孫たちです。』


 『しかし、あまりに、桁外れに時間の差がありますね。火星に海があり、地球と良く似た環境だったのは、30億年は前とされます。』


 『たしかに。しかし、我々は、長く宇宙をさ迷いました。地球が住みやすくなったのは、つい最近です。しかも、目太母星人は、残忍で執念深い。我々も、簡単にはやられなかったから、連中も相当の被害を受けたのです。反省しているようなことは言っているが、いまだに、宇宙に出た火星人の末裔は、不当な監禁や暴力にさらされています。連中が、ついに地球に手を出してきたのなら、地球にいる火星人の末裔も、危ないと見るべきです。もちろん、地球人はなおさら危ないですよ。にもかかわらず、ですが、地球人は、残念ながら、いまだ、メタボ星人の敵ではない。当時の火星は、より科学分野では進歩していましたから。


 あなたは、地球に於いて、火星人から地球人に同化した一族の子孫です。しかも、あなたは、火星の王室の、末裔です。あなたのDNAには、特殊な細工がなされていて、まだ、休眠状態ですが、それが、目覚めると、あなたは、超人補佐になります。ともに、地球を守り、メタボと闘うのです。』


 『あの、補佐ってなんですか?』


 『超人は、まだ、見つかっていません。あなたは、超人を補佐する7人の補佐役のひとりなのです。』


 『残りの6人は?』


 『あなたをふくめ、4人までは分かっています。我々はそのふたりです。あなたが飲んだ、あの丸薬は、その能力を開放します。メタボ星人の作ったものではなくて、我々が製造しました。』


 『げっ❗』


 『で、こちらが、超人補佐役の七つ道具です。プレゼントします。いやあ、ついに、メタボとの、決戦の時がやってきました。』


 『その、超人とかは?』


 『じつは、見当は付いています。まだ、秘密ですが、きのう、バーゼル近郊で、生まれました。』


 『気の長いはなしですな。』


 『まったくそうです。しかし、あなたが、おっしゃるように、これは、長い長い闘いなのです。』



       👾=?


 メタボ星人は、地球の資源や、食糧となる生き物を、平和の代償として、要求してきたのです。


 とくに、太りがちな人間が、大好物なようでした。


 その代わりに、各種がんの、治療薬や、難病の治療方法などを、ちょっと小出しにしてではありますが、地球人に伝授したのです。



 『抗目太母神社』の、超人補佐たちは、やがて、地球の敵と呼ばれるようになり、社会からは、阻害されたのです。


 やがて成人した超人は、超人たることを、拒否しました。


 地球は、もはや、メタボで溢れたのです。


 あまり、明るい未来はなさそうでした。



 

   ・・・・・・・・・・・・・・・


              おしまい


 

 続編があるかどうかは、まだ、わかりません。作者は、実はメタボですから。

 


 



 

 

 


 


 

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『メタボ星人の逆襲』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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