一瞬で終わった異世界生活〜現世で死んで異世界に飛んだけどなんだかんだで魔王と結婚しちゃったので現世には帰れません〜
徳田雄一
転生したけど……
だが就職が上手くいかず、親を困らせてしまっていた。就職が出来ないまま、数年が経ってしまっていた。
今日もそんな日に嫌気がさし、親の金でストレス発散をしようとパチ屋に行った帰りのことだった。道路に飛び出たボールを追いかけて道路に飛び出した五歳くらいの男の子が居た。
「危ないぞー」
そう声をかける大人の声も届かないほどにボールを取りに行こうと必死になっていた子ども。
予想通り車が来て、子どもは轢かれかけていた。気づけば俺は身体が動いていて、子どもを弾き飛ばした後に轢かれ、死んでしまった。
☆☆☆
「おはようございます。慶次様〜」
「ここは?」
「私は女神ユーラ」
「へー。もしかしてラノベとかでよくある転生ってやつ?」
「はいそうです。ちなみにチート能力とかはないですよ?」
「目的は?」
「魔王討伐です」
よくあるラノベ展開で俺は飽き飽きしていた。チート能力が無くても外れスキルを貰おうとも結局は魔王討伐が出来ちゃうんだろうと思っていた。
女神の話など聞くつもりもなく、「さっさと転生させてくれ」と言った瞬間、女神は俺の頬に手を当てながら言った。
「魔王討伐後は貴方を現世に返し、生きた状態で死んだ日に戻します。ちなみに子どもが道路に飛び出るとかそんな事態は起こらないです〜」
「転生なのに現世に返してもらえんの?」
「はい。ちょっと変わってますよね〜」
「まぁいいや。了解〜」
さっさと魔王討伐をして現世に帰ろうと思い、転生先に送って貰うと、魔王城前に落とされてしまっていた。
これでは転生ではなく転移なのでは無いかと疑問が浮かんだが、気にすれば気にするほど問題が出てくると思い、考えることをやめた。
俺はステータスオープンと唱えて何かが出てくるかなと思いきや、何も出てこなかった。本当に何も力を授けられていないのだと、無双やハーレムなどの異世界転生後の世界で何も出来ないんだと感じていると、魔王城から誰かが出てくる。
俺は急いで近くにあった木の後ろに隠れ様子を見守っていると、遠目からでも分かるほどの美人とゴツゴツした身体の男が何やら話していた。
数十分時間が経ち、美人と男は魔王城に帰って行った。俺は一度死んだからこそ、何回死のうが関係ないと思い、魔王城へ乗り込んだ。
「何奴だ?!」
「どーもー。魔王様に会いに来ましたよ〜」
「貴様最近現れた勇者か?!」
「知らないけど、まぁそうかもね」
魔王城に居た魔物たちを現世でやっていた格闘技術を使い関節をへし折り、骨を砕くなどを繰り返していると、気づけば魔王の目の前に居た。
「どーもー。貴方を倒せば現世に帰れるらしいんで殺しに来ました〜」
「……お主。かっこいいな」
「え?」
先程は遠目からしか見れなかったが、近くで見れば見るほどスラッとしたモデルのような体型であるのにも関わらず、出るところは出ていてそして美人だった。
そして求婚をする魔王に、周りの魔物たちも驚きを隠せずにいた。
「魔王様正気ですか?!」
「考え直してください!」
「うるさいのじゃ!」
魔王は激を飛ばしながら、魔物たちを黙らせる。そして俺の目を見ながら言った。
「私と結婚しないか?」
「……んー」
「私と結婚すれば生活は裕福で、好きなことがやれて、そして私のこの身体を自由にしていいんだ!」
俺は魔王の身体をジロジロと見つめながら、魔王の条件を繰り返し頭の中でリピートしていた。
生活は裕福。綺麗な女の身体は自由に。そして何も残してきていない現世。俺の中での考えは決まった。
「なぁ。俺と結婚してくれるんか?」
「私は嘘をつかぬ」
「そうか。なら結婚してくれ」
「本当か?!」
「あぁ。本当だ」
「嬉しいのじゃ!!」
魔王は魔物たちに旦那が出来たと知らせを出した後に、俺の周りを喜び跳ねていた。
これだけ喜んでいてくれるなら俺もいいやとなり、結局魔王は討伐することなく、魔王を嫁に迎えて、新魔王として君臨した。
その日から次々と新魔王である俺を殺そうとしてくる連中が現れたが、俺と俺の嫁で殲滅していき、幸せな暮らしを始めた。
「なー。ケイジよ」
「んー?」
「そ、そろそろ妾は子が欲しいぞ」
「人間の子を孕めんの?」
「わ、わからぬ。だからこそ妾と」
「そうだな。ヤってみなきゃ分からねーか」
俺は魔王をお姫様抱っこし、魔王の部屋まで行きそこに置いてあったベッドに降ろすと同時に俺も一緒にベッドにインした。
頬を赤らめながら、魔王は期待するような顔をしながら俺を待った。
そして魔王の服を脱がし、事を始めた。
☆☆☆
「お前らに魔王の座を譲る」
「父様、母様。今までお世話になりました。そして魔王になった私たちをいつまでも見守っていてください」
「……頑張るんだぞ」
何十年かが経ち、三人の子宝にも恵まれ、子供たちに魔王の座を譲った。
そして人間である俺にとうとう寿命が訪れた。
俺は魔王と出逢う前に来て、隠れたあの木に寄りかかりながら目を瞑った。
「妾はお主と居れて幸せだったぞ」
「……おう」
「また会えるかの……?」
「どうだろうな。でもなんだろうな。お前とは異世界じゃなくても会える気がするわ」
「……愛しているぞ。いつまでも」
「俺もだ。そろそろお別れだ。シュリ。またな」
「……」
優しく魔王と俺を包み込むような風が吹く。
そして次に目を覚ました瞬間だった。目の前にはあの女神が居た。
「討伐しろって言ったのに……」
「すまんすまん」
「まぁいいです。では貴方を現世に送り返します」
「……倒さなかったのにか?」
「天界からの指令ですので」
「そうか」
☆☆☆
次に目を覚ました時、目の前にはいつもの風景が広がる。
ポケットに入ったスマホ、あの日死んだ道路の近くに俺は居た。
俺はあの経験を思い出しながら、俺はシュリに似た人に会えないかと、そして二度と死なないように真面目に生きようとハローワークに通いつめて、働き始めた。
数年後三十五歳になった日。俺は結婚した。
「私慶次と結婚できて嬉しいよ」
「あぁ。俺も嬉しいよ。シュリ」
一瞬で終わった異世界生活〜現世で死んで異世界に飛んだけどなんだかんだで魔王と結婚しちゃったので現世には帰れません〜 徳田雄一 @kumosaki
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