いちごとあめ
眠れる森のぶた
いちごとあめ
「今年の梅雨は例年より3~4週間はやく....」
テレビの天気予報士がモニターに映し出された日本列島を指差し今週1週間の天気予報を報道している。
もうそんな時期か。とふと考えていると外の雨が強くなりテレビの声をかき消す。
いつだったか。
彼とどしゃ降りの雨の中イチゴ狩りに行った日は........。
────────
「今日イチゴ狩りいこ!」
その日は朝から天気が悪く5月のわりにじめじめしている日だった。
「今日雨降ってるよ?」
と私が怪訝そうな顔をして言うと彼は笑った。
「分かってるよ!でも予定の空いてる日も少ないしさ、なにより昨日苺を食べたがってたのは君じゃん。」
そういって彼は微笑んだ。
スーパーの苺でもいいのにわざわざ採りに行こうと考えてくれるところが彼らしいと思った。
まぁこのぐらいの雨なら雷が落ちることもないし大丈夫だろう。
なんて考えて私はイチゴ狩りに行くことにした。
けれどそんな私の考えを裏切るかのように雨はどんどんひどくなっていった。
ビニールハウスに入ると雨が屋根に打ち付けられる音が響き渡っていた。
「こんな日に来るなんてもの好きだねぇ。」
そう言ってそこの農家さんは笑った。
その日私たち以外に客はおらず私たち二人だけだった。
雨がひどくなったら帰ってもらうと言って農家さんは先程まで作業していた場所に戻っていった。
そうして私たちはイチゴ狩りを始めた。
「...!?おいしい!あまい!!」
私は苺の甘い美味しさに雨のことなど忘れ無我夢中になって苺を頬張った。
今考えると雨のことも彼氏のことも忘れ苺を頬張っていたのは流石に大人げなかったと思う...。
そんな私を戒めるためか大きな雷が響いた。
「きゃー!!!」
耳を塞ぎしゃがみこむ。ガタガタと震えが止まらない。
すると彼が急いで駆け寄って来てくれる。
「大丈夫?ごめんね。ここまでひどくなるとは思わなくて.....。今日はやめとけばよかったね.....。」
彼があまりにも悲しそうな声で言うから申し訳なさと悲しさで心がいっぱいになった。
「ううん。...楽しかったから。」
そんな私の声をかき消すかのように1つまた1つと雷音が響く。
「雷がひどいから今日は帰ってください。」
という農家さんの言葉で私たちは帰宅した。
「ごめんね。大丈夫?」
ごめんね。は連れ出したことについて、大丈夫?は雷が苦手な私を心配してなのだろう。
「ううん!苺おいしかったし!ひとりじゃなかったから大丈夫!」
そういって私が笑うと彼は安心したのかふんわりと笑った。
────────
そんなことを思い出していると苺が食べたくなり昨日買ってあった苺を取り出す。
「うん。普通に美味しい。」
苺を食べていると何かが光り数秒後雷の音がした。
今のは光ってから4秒かかったから結構遠いな。なんて考えながらあの頃より酸味も甘味も薄れたような苺を飲み込んだ。
いちごとあめ 眠れる森のぶた @nemu_novel
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