第22話..


 馬車が行き交い人が途切れる事無く歩き、道沿いには多種多彩な店が建物の間隔を空ける事無く立ち並んでいた。


「王都より凄くないか」


「王都もこんな感じだよ、アオは王都で商業区に行ったないの?」


「無いな」


「王都は中心部に色々とあるからね、そうだ今度一緒に行こうよ」


「そうだな、今度王都で時間がある時は頼む」


「楽しみにしててね。あっ、ギルドはこっちだよね、行こ」


 向き合って話していたユアが急に振り返り、ギルドがあると教えてもらった方に一足先に歩き出し、明桜も追う様に歩き出す。


「少しぐらい寄り道してもいいと思うよ」


 ユアが何度も店の方を興味深そうに見ていた為に、明桜が後ろから声をかける。


「今日はギルドに行って早く仕事をしなきゃダメだもん」


「凄いなユアは」


「え、そぉなの?別に、普通じゃない?」


(いえいえ、とんでもなく凄いですって。日本で言えば中学生が学校が休みの日なら、アルバイトするのが普通ですって言ってるようなものでしょ)


「クレアさんのおかげで焦らないでも良い状況なんだから、今日は頑張るとしても、気楽にやろうな、ユアだって昨日は大変な目に遭ったんだからさ」


「私は大丈夫だから。気にしないでって言っても、アオも同じでしょ。まさか楽な仕事をする為に、私に言ったんじゃ‥」


「何の事だかさっぱりだけど、今日は庭の手入れとかが良いなぁ~」


「ハッキリ言ってるじゃんもぉ。でも、庭掃除ね。うん、有ったら一緒にやろっか」


「助かる」


 人が行き交う道を進み冒険者ギルドが目に入る。


 王都と同じ様に冒険者ギルドは、メイン通りの道を塞ぐように建ち、それを避けたかの様に道が左右に分かれT字に成っていた。



(それにしても、外見は同じでも中の作りも少し違うし、統一されてる訳じゃないんだな) 


 ギルドに入って直ぐ右に明桜だけ行き、バーカウンターも依頼が貼られてる掲示板も無く、ただ数席用意された人気の無い場所で明桜だけが座り、ギルドを見渡していた。


「有ったよ、庭掃除の依頼」


 明桜とは逆方向にある掲示板から、依頼書を剥がし、受付で手続きを済ませたユアが明桜の所に戻ってきた。


「全部任せてごめん」


「字が読めないんじゃ仕方ないから気にしないで、それに字が読めない人も沢山居るしそんなに気にしなくても大丈夫っ」


(ほんと読めない何て笑えないよ、依頼も受ける事無かったし、店でメニューを見る事だってなかったしな、何だかんだ言って言葉が通じれば、どうにかなるもんだな)


「だからこれからも字が読めなくても、困ったら私に言ってね」


「なるべく早く覚える様に頑張るけど、それまでは悪いけど頼らせてもらうな」


「うん、それじゃ行こっか」


 受付で依頼に明記されていた庭の所在を聞いたユアの後に付いて行き、明桜は来た道を戻れと言われれば帰れる程度に覚えながら歩き、最終的にユリルガの南西区に辿り着いた。


「このお家、だと思うんだけど‥」


 ユアが示したその家は、他の家とは違い区を仕切る壁に隣接し、隣の家とも距離があり外壁に囲まれた庭がある一際目立つ建物で、生い茂った雑草が廃家感を出していた。


「見たまんま金持ちの屋敷‥だった家だな」


「だね」


「本当に報酬出るのか、これ」


「それが、受付でも依頼事態がかなり前だから、屋敷に行って依頼主の、ゴーラさんに自分たちで確認してからやってねって、言われてて」


「確認って言ってもなぁ」


 ユアと明桜は目の前の格子状の門を開けても、自分達と同じ高さまで伸びた雑草の中をどうやって進み、建物まで近づけば良いのか検討もつかず立ち尽くしていた。


「思ってたより、凄いね」


「凄いってレベルじゃないよ、正直やりたくない」


「私達は贅沢言ってられないもん、行くよ」


「行くってどうやって」


「そんなのアオがほら、火でバババッってね?」


(ユアってこんな危ない子だって、それやると高確率で建物も燃えるし、庭なんて手入れ何て優しい表現とはかけ離れてしまうのだが..)


「言ってみただけよ」


「よし、言われたし仕方ない。全てを焼きつk―」

「待ってッうそうそ、嘘だから!言ってみただけだから!」


 手を前に伸ばした喋り始めた明桜に驚き、ユアが慌てて伸ばした腕にしがみ付き止めた。


「どうした」


「どうしたじゃないよ、言っただけッて言ったでしょ!燃えちゃったら大変だよッ」


「やらないよ、振りだ振り。でも実際どうやって入る?」


(そしてこの子はいつまで腕に張り付くのだろうか‥)


 前方で腕にしがみ付いたまま、建物の方を眺めるユアを横目で明桜は見ながら、離れてくれと言えば逆に意識してしまいそうなので敢えて言わず、ユアが気づき離れてくれる事を待っていた。


「君達は、私の家の前でどうしたのかね?」


 ユアが明桜の腕にくっついたまま、屋敷の門の前で立っていると、後ろから話しかけられた二人が同時に振り返ると、杖を突きながら立っている年配の男性が居た。


「失礼ですが、貴方がゴーラさんですか?」


「そうだが?」


「初めましてゴーラさん、自分は冒険者をしている明桜で、彼女はユアです。二人で庭の手入れの依頼をギルド受けて来たのですが、依頼はまだ有効という事で大丈夫でしょうか?」


「依頼?‥‥‥ああぁ、そう言えば昔に、出したままだったの。それにしても、ようやく来てくれたと思えば随分と、仲良しなお二人さんだの」


「ごめんっ、私止めようとして、その..」


「なにお二人さんがやってくれるというのなら、庭の手入れの依頼どうか引き受けてくれぬか」


 慌てて飛び離れたユアがうつむきがちに話、声を詰まらせたタイミングでゴーラが二人に依頼を頼んで来た。


「ゴーラさん、その、依頼は受けたいのですが、この依頼を出されたのはかなり前なんですよね?」


 段々と落ち着いたユアが顔を上げ、ゆっくりとゴーラさんに話かける。


「そうじゃが、何か手続きがあったりするのかい」


「いえ、手続きなどはありません。でも庭の状況を見て、庭の手入れにしては仕事量が多そうなので、その、報酬の交渉をしたくて」


「依頼を出しのはだいぶ前だからの、すまんがその依頼には、報酬はどのくらいと、書いたかの」


「大銅貨三枚です」


(大銅貨三枚って、あぁ、俺が買った小さい短剣三つで、スライムの魔核が一個で銀貨二枚だから、スライム十五匹分か、まぁ多くないか?)


「確かにこの量で大銅貨三枚は少ないの、銀貨一枚でどうかな?」


「銀貨一枚ですね。分かりました依頼を引き受けます」


「よろしくの、お二人さん」


「はい」


 明桜が返事をすると、ゴーラは門を開け、何も無いかの様に進んだ、すると手で掻き分けてる様に生い茂った雑草が、雑草の方から避ける様に勝手に左右に傾きゴーラは進んでいき、ゴーラが通ると再び雑草は道を塞いだ。


「やっぱり凄いよッあの草!」


「いや、だから凄いってレベルの話じゃ無いって、おかしいよ色々と」


 ありえない光景を目の前にしユアが、飛び跳ねのに対し、明桜は苦笑いを浮かべていた。







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