第20話.


「嘘だろ、街か?」


「え、って事はあれってユリルガ?」


「ユリルガ?」


「ユリルガってあれだろ、王都から馬車で3日かかる所にあるっていう」


「待て待て二人共、馬車で3日?俺達歩いて半日だぞ?」


「う~ん、でもアオ。私他に東側であんなに大きい街他に知らないの」


 トガリを支え歩いた速度で三人が森を陽が沈むまで数時間、歩き続けていると、森が突如途絶え木が生えない草原が広がり、川沿いに目を動かすと川が街の外壁の中に組み込まれており、街の大きさは王都よりは遥かに小さいが、左右に伸びる壁の大きさからそれなりの規模である事は明白だった。


「一応確認だけど、東側の近くに他国があったりは?」


「あるけど、それこそユリルガから馬車でもっと何日もかかるぐらい遠かった筈だよ」


「他国の心配が無いならとりあえず行こうか」


 陽が沈みかける中、明桜はトガリを支えたまま、一刻も早くと急ぐが、三人が街の入り口に着いたのは陽が沈んだ直後だった。


「君たちどおした!?大丈夫か?」


「すいません、仲間が怪我をして手当をお願いします」


「ああ、もちろんだ」


 門番の一人が駆け寄って来、明桜と入れ替わりにトガリを支えた。


「すまない、君たちはこの子の分も手続きを済ませてから来てくれ」


「はい、分かりました」


 トガリが門番の騎士に運ばれ、城壁の壁の中に作られた詰所に入って行き、明桜とユアはもう一人の門番の側に行った。


「二人とも、この水晶に手を置いてくれ」


 明桜はユアに続き、同じ様に手を置いた。


「よし問題ない、それじゃさっきの子の分も合わせて、大銅貨三枚だ」


「大銅貨二枚と銅貨十枚でお願いします」


 明桜が出す前にユアが素早く払ってしまい、明桜とユアは無事にトガリが居る詰所に入っていった。


「手当をしてくれて有難うございます」


 詰所に入って直ぐにユアが、トガリの側に居た女性騎士気づき、頭を下げて礼を言う。


「良いのよ仕事だもの」


「有難うございます」


 髪を後ろで束ねた女性騎士が首を傾げ、微笑むその姿を見てからユアと明桜はトガリの側に近寄っていった。


「骨が少し折れてたから、一週間は安静にしててね」


「そんな‥」


「足が繋がってて動く様になるんだから、そんな贅沢言わないの、大人しくするのね。じゃないと治療分のお金後で請求しますからね」


「・・・・」


「そうよ、いい機会でしょ、トガリ良い?大人しくするのよ」


 お金を請求すると言われ、トガリが静かに頷き黙り、ユアがここぞとばかりにトガリに言い聞かせる様に念を押した。


「ごめん、ねえちゃん。アオ」


「何謝ってるんだ。ユアの言うとおりだ、トガリは大人しく休んでてくれ、頑張りすぎだ」


「そうよ、あんたは余計な心配しないで大人しくしとけば良いの」


「ごめんね、私も仕事だから色々聞かないといけないの、まず名前を教えてもらっても良いかな?私はクレアよ」


「あ、はい。私はユアです。そして隣に居るのがアオです」


「ども」


「こっちが弟のトガリです。クレアさん弟を手当してくれて有難うございます」


「 それでトガリくんだったよね、その子の怪我はどうして出来たのかな?」

 

 少し厳しい目つきになったクレアが、ユアの両目を見て問いただす。


「実は私達は王都、シーゼダソスの東の森でゴブリンを倒そうとしてました、そしてゴブリン相手に逃げる事態になって走ってたら崖から落ちて。落ちた先に水があって助かったのですが、弟はその時に怪我をしました」


「待って、貴方達三人でゴブリンを倒しに?」


「はい」

「そうですが、何か変ですか?」


 ユアが二つ返事で返し、明桜が会話に割って入る。


「失礼とは思うが、君達は見たところまだ冒険者に成ったばかりであろう。それなのにどうしてゴブリンなのかが気になってな」


「僕たちもまだ、スライムで頑張ろうと思ってたんですけど、ギルドの方にゴブリンを勧められたので今日行ってみたら、この有様で恥ずかしい限りですが、勧めてくれた方が責任を感じてないと良いのですが」


「ギルドが‥そうか。君達の状況は理解した、なら君達はその少年が治るまでは此処の奥の部屋を使うと良い」


「良いんですか?」


「構わないさ、元々部屋は多く作ってある、だけど出入りする時はさっき使った入り口じゃなく、街中に繋がってる方を使ってほしい」


「分かりました、暫くの間お世話になります」


「あまり堅くならずゆっくりして頂戴」


「はい、有難うございます」


「あ、だからって一言も言わないで姿を消さないでね。お礼を言えとは言わないけど、何も言わずに消える人が時々居て、騎士がそれを心配して巡回の時間を過剰に増やしたり、人員を割いたりと色々問題なのよ」


「トガリの手当もしてくれた人に、挨拶の一言も言わないで消えるなんて事はしませんよ」


「そうしてくれると助かるわ」


「はい」


 会話を終えたクレアは明桜達を奥の部屋に案内し、食事は後で持ってくると言い、何処かに行ってしまった。


「クレアさんが居てくれて良かったね」


 シングルベットが横並びに4つ置かれた部屋で、一番奥の窓際をトガリが使い、ユアがその隣のベットに座り話し、アオが間隔を一つ空け、入り口から一番近いベットに仰向けに寝転がってから言葉を返した


「宿を探すだけでも一苦労だもんな」

 

「ギルドの場所も分からないもんね、私達」


「後でクレアさんに教えてもらうしかないな、明日には行かないといけないんだし」


「そうね、簡単な依頼があると良いんだけど」


「薬草採取とかは無いのか?」


「あると思うけど、アオは薬草見分けられるの?」


「聞いてみただけだ、すまない」


「気にしないで、あっでも薬草採取とかは錬金ギルドに行かないとだから、そこは覚えておいてね」


「ありがとう、ユア」


「うん」


 明日の事を話しているとクレアが食事を持ってきた為、明桜達は少し遅めの夕食を食べてから、疲れからか早めに寝るのだった。









 

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