第17話.目的


「流石にスライムの時より歩くな」


「アオは体力がねぇな、これくらい俺らは小さい時から歩いてたぜ」


  明桜達は準備を済ませた後、東の門を出て街道を歩き今は森の中を歩いていた。


「そりゃ凄い、俺も小さい頃は歩いてたが、ここ数年は歩く事が減ってたからな、自業自得って奴だ」


(小学を卒業する頃には一駅でも歩く事を止めたのは、我ながら自堕落な奴だと思ったよ、社会人で時間が忙しい訳でもない学生なのにさ)


「でもあんた朝の水汲み面倒がって私に押し付けてたじゃない」


「アレは朝早いのが悪いんだ、俺は悪くない」


「二人はどうして王都に来たんだ?」


「ねえちゃん話していいよな?」


 いつもは確認をしないで軽率に発言をするトガリが、ユアに確認を求め、ユアが頷いた。


「俺達が住んでた村はよ、街からも遠いし、200人ぐらいの小さな村だったんだけどよ。そんなんだから、騎士も居なし冒険者も勿論居ない、平和な村だったんだよ」


 トガリの声色が変わり、まだ少ししか言ってないが、そんな言い方をされれば誰だって、良くない事が起きた事は想像がつく、明桜はトガリの表情を見て既に確信に変わっていた。


「そんな平和な村に彼奴等がやって来た。彼奴等はお金も人の命も何もかも奪いやがったんだ…」


「盗賊か」


「ぁぁ、でも俺達は生きられた」


「うん、私達はね、父さんと母さんの代わりに生きてるの」


「母ちゃんと父ちゃんが代わりに守ってくれたから、俺は生きてる。だから俺が今度は姉弟を家族を守ってやりてぇんだよ」


「二人共すまない」


「気にすんなよ、話したの俺だし」


「それにこんな話アオに聞かせて、こっちこそごめんね」


「遅かれ早かれ王都に居る理由は聞いてたと思うから。早めに聞けて、良かったのかもしれない」


「アオがそう言うんなら良いか」


「それで二人は冒険者になって生活する為に来たんだな」


「う~んっ。でね私達が逃げたまでは良かったんだけどね、やっぱり自分の事で精一杯だったから最初は施設に行ったの。そしたらそこで4人しか受け入れられないって言われてね」


「ならどうして、ユアとトガリは施設に入らなかったんだ?」


「小さい妹や弟が外で生きてけないから、私達二人が冒険者になることにしたの」


「そうそう、小さいのはフユねぇに任せて来たんだよ」


「はい?フユねぇ?ユアとトガリ達は何人姉弟なんだ?」


「そういやぁ言ってなかったな、俺入れて6人姉弟だ!」


「ええぇえええぇええええッ!それが一番の驚きだわッ」


「そうか?普通だろ」


「そうね、小さな村だと子供が多いのは確かね」


「てかアオは何で王都に来たんだよ、俺達より余っ程不思議だぜ」


「あぁ俺か、俺はある人を探してるんだ」


「家族の誰かとかか?」


「そうだな、大切な人だとても」


「なら言ってくれれば俺達も探すの手伝うのによ、なぁねえちゃん」


「そうだね。パーティーメンバーの大切な人は私達にとっても大切な人だもんね」


「二人共ありがとう、でもまずは最低限のお金を稼いでからじゃないと探せない、だから強くなりたんだ」


「だからアオはスアさんに勧められた時に前向きだったのね」


「そういう事になるな。ごめんなユアは来たく無かっただろうに」


「もぉ来たんだから謝らないで、それに来たからにはアオ、頼りにしてるね」


「そうだぜ、考える事は任せた!」


 急に横からトガリが思考の全てを放棄したかのように、満面の笑みで明桜に考える事を丸投げしてきた。


「そうは言われても、ゴブリンの外見も分からないんじゃ、厳しいぞ。まぁ最低限のプランは考えてるけどさ」


「なら大丈夫だ行こうぜ」


「トガリも、少しは危機感持ってくれよ」


「無駄よアオ、トガリはあんなだもん。だから私は一緒に冒険者になったんだから」


「なるほど、確かにユアが居なかったらトガリの無鉄砲さはヤバそうだ」


「でしょ」


 明桜とユアの二人は前を歩くトガリを見てから、互いに横を見て顔を合わせ、少し笑いながら森を歩いた。




 そして三人がそれから森を歩き続け1時間ぐらいが過ぎた頃、木々が少し開けた場所で木の実を食べる2匹のゴブリンと遭遇したのだった。


「あれがゴブリンかぁ‥」


 身長が1mあるか無いかぐらいの小柄な生物であり、目が悪い人なら人の子供と間違えてもおかしくない程に似た体格をしていて、分かりやすく違う点といえば緑色の肌と、醜い顔だけだ。


「アオは大丈夫そ?やっぱり二足歩行の魔物だと、最初は躊躇う人が多いって聞くから」


「俺は大丈夫だと思う、それより一番的に近づくのはトガリだ。トガリ大丈夫そうか?」


「当たり前だぜっ」


 声を抑えたトガリが声が小さいならと、力強くガッツポーズしながら答えた。


「それは良かった、ユアも大丈夫か?」


「私は、正直分かんない。けどやらなきゃやられるもんね、それは嫌」


「良し、ゴブリン共を倒すぞ」


「おう」

「うん」


 明桜達は来た道を100m程戻り、明桜の指示でユアとトガリが動き準備を進め、なるべく多くの状況で対応出来る様にしてから、再びゴブリンを探しに向かい呼び寄せるのだった。





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