第13話.
(それにしても昨日奴らがあのまま、強硬手段を取っていたら、どうなっていた事か‥)
「アオどうしたのっ早くトガリを追うよ」
「あっ、うん。」
考え事をしていた明桜が出遅れ、それに気づいたユアが明桜の手首を掴み立たせ、二人はスライムを連れて先に走っていったトガリの後を追った。
「遅かったけど、何かあったんか?」
「アオがまた考え事してた」
「悪いな二人共」
「森に来てからずっとそんなだけど、アオは昨日の事気にしてるの?」
「うん」
「起きた事は仕方ないけど、何か気になる事があるなら私達にも言って、トガリは無理でも私も一緒に考えるからさ」
「ならお言葉に甘えて言うんだけどさ。奴ら昨日買い取りが済んでるって言っただろ?」
「うん、言ってた」
「彼奴等、俺達を物扱いしやがってッ今度会ったら許さねぇ」
「まぁトガリそんな怒るのは悩むより疲れるんだから、一旦止めてくれ。それで、買い取りが済んでるって事は買う気で金を払った金持ちが居るって事だ。そいつからしたら金は払ったのに商品が来ない、今頃怒り狂ってると思う...」
「不味くねぇかそれ、てか勝手に売られた俺達が怒りてぇのに逆ギレって何だよ」
「私もそれには言いたい事は沢山あるけど、ねぇアオ‥私達大丈夫なのよね?」
「正直金持ち連中、特に貴族なんかの事は全く知らないからな、予想もつかない」
「それならギルドに言って助けてもらおうぜ」
「トガリ、ギルドは冒険者の為にわざわざ動いてくれたりしないよ」
「じゃあどおすんだよ」
(やっぱりもう少し奴らから話を聞くべきだったか、いや。あれ以上に要求をすれば結果が変わっていたかもしれないし、過ぎた事をこれ以上考えるのは止そう)
「相手が手出しするには面倒と思わせるしか無いだろうな。その為にもLv上げが必要だからトガリ行って来い!」
「おうッそれで助かるんなら何百体でも連れてくるぜ!うぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお・・・・‥‥‥…」
トガリが叫びながら1人、森を全速力で走り出し、それをユアと明桜の二人は眺めていた。
「アオは行かないの?」
「正直、俺が一緒に行っても足手纏だからな。ユアの方こそ、見てないと何するか分かったもんじゃないが良いのか?」
「まぁ~大丈夫なんじゃない、トガリって間抜けで大雑把だけど、戦って生き残る事なら私よりよっぽど凄いもん」
「それに比べて俺達って戦闘出来なさ過ぎだよなぁ、どうしたもんかね」
「アオ何だかおじさんクサイよ?」
「えッ、俺って臭いのか!?」
「違う違う」
とっさに自分の匂いを嗅ぐ明桜を見て、ユアが笑いながら否定する。
「言い方がそう感じただけだからさ」
「それにしたって、そんなに笑う事無いだろ」
「だぁっ…て――」
クスクスと笑いを堪え、口を塞ぐユアを見て明桜ももらい笑いをし、二人はしばらく馬鹿みたいに笑いながら話をするのだった。
「ぁぁぁぁあぁあああねえちゃん、アオ助けてくれぇぇええええええ」
二人が笑い、作業を進めて数分経つ頃にはトガリがまたもや叫びながら森を走っていた、そしてトガリの声を聞いた二人は嫌予感をいだきながらトガリが姿を現すその時を待っていた。
「ぁッああッ!!」
茂みから飛び出したトガリを見て、ユアと明桜はトガリに目に見て分かる外傷が無い事で一瞬安堵するが、その次の瞬間に背後から続々と現れたスライムの大群を見て目を見開く。
「おいットガリ連れて来すぎだ!」
「馬鹿トガリ!何やってるっ」
「そんな事言ってないで助けてくれぇえええ」
ボッ!と大きな音を立てて地面に穴が現れる。それはトガリの身体が無意識に落とし穴を避け走る事を覚え、スライムの大群がその後は殆ど音も無く次々に落とし穴になだれ込んで落ちていった。
「「あ」」
「ふぅ。助かったぜぇ..」
「トガリどうやったらこの数のスライムを連れて来れるんだよ、危うく俺達スライムの餌食だったぞ」
「って言ってもよ、少し進んだ所にスライムが群がってて数匹だけ連れて来ようとしたら皆付いてきちまったんだよ、仕方ねぇだろ」
「「・・・・」」
「って事で後は任せた、流石に疲れたぜ」
明桜とユアが呆れて返す言葉が遅れると、トガリは後処理を自然と任せ盛大に仰向けで寝転がった。
「スライムが脱走したら大変だ、早めに倒そう」
「沢山経験値になって貰わないとね」
「火よ付け」
明桜が手に持っていた枝の葉に火を付け、火が枝に燃え広がったのを確認してから落とし穴に放り込んだ。
「アオ‥煙が全然見えないのは私だけ?」
「大丈夫だユア、俺も見えない…」
そして二人は同時に寝そべるトガリに視線を向けるが、当の本人は大の字で空を眺めている為、それに気づく事は無かった。
「恐らく、というか絶対だが、スライムが敷き詰められ過ぎて薪まで火が届いて無いなこれは」
「やっぱりそうよね..」
(マジで連れて来すぎだって、どうすんだよこれ)
「ねぇアオ、私が上から土を落として埋めちゃう?」
「いや、一瞬で覆い尽くす程の量を降らせない限り、スライムが上に擦り出て来る可能性があるから止そう」
「ならどうしよっかあの‥‥スライム。達……」
「どうしたユ‥‥」
ユアの声色が変わった事で明桜が異変を感じ視線をスライムの居る落とし穴に向けた、明桜は落とし穴が目に映ると思っていた、しかし明桜の視線の先に見えるのは見える筈のないスライムだった。
「溢れてるッ!おいトガリ起きろスライムが溢れてるぞ!」
「うぉおッやべーだろこれっ」
「ヤバいって話じゃ無いだろ!どんどん溢れて来るぞ、下がれッ」
明桜がトガリに話かける間もスライム達は水が容器から溢れるかの様に、一匹また一匹と落とし穴から継続的に湧き出てくるのだった。
「こっちに来る前に逃げるぞ!」
「トガリ早く」
「おうっ」
明桜とユアが走り出しトガリが二人の真後ろに付き、三人は王都の方角に森を抜け出るまで走り続けた。
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