第10話.


「「かかった!」」

「よっしゃあ」

 

 三人はまた森を歩き、一匹のスライムを落とし穴に誘導していた。


「3匹目だっそろそろLv上がるぞこれ」


「その謎の自信は何処から来るのよ、全く」


「まぁアオ頼んだ」


「りょうかい」


 3度目ともなればその動作もスムーズに行え、明桜が落とし穴に火がついた枝を放り投げる。


 瞬く間に落とし穴の底に無造作に置かれた薪に燃え移り、勢いを増し火柱が穴から飛び出そうな程に成長する。


「何か強くないか?」


「私も思った」


「「トガリ?」」


「よく分かったな、俺が薪を増やしといたぜ!」


「はぁ」

「バカ何やってるのよっ」


「何だよ、この方が早く倒せるだろ」


「確かにこれじゃ早く倒せるけど」

「目立ち過ぎなのよっもぉ……サンドウォール」


 ユアが直ぐに燃え盛る炎に土を被せ、炎の勢いを下げていく。


「なんかごめん」


「いい、のよ。確かにm早く倒したいものね」


 ユアが苦しそうに話、トガリから段々と陽気さが薄れていく。


(そういえば俺は魔法を使っても大丈夫だけど、やっぱり瞬間的に消費するMPの量が関係してるのかな、だとすると手頃魔法の乱用は魅力的なのかもしれないな)


「君たち大丈夫か!?今凄い煙が見えたんだが!?」


「えっ」

「え、あ。大丈夫です、弟が焚き火の加減を間違って勢いが増しましたが、直ぐに土の中に入れたので」


 明桜が言葉を詰まらせる中、話しかけて来た40代過ぎの冒険者であろう男性相手にユアが冷静に状況を説明した。勿論その中にはスライムを倒す為の落とし穴である事は伏せたまま。


「ザルドどうだった、大丈夫そうか?」


「あぁ子供が火の調整間違っただけだ」


 ユアと話しをしていた男性をザルドと呼ぶ男性と、その背後にもう一人男性が居た。三人ともどうみても長年冒険者業を生業にしてたであろう見た目で、強うそうには見えないが頼もしそうなベテラン的印象が感じ取れた。


「坊主気をつけろよ、油断して木にでも火がついたら大変な事になって最悪死罪だぜ」


「あ、あぁ。わかってるよ」


 不満をどうにか隠したままトガリが後から来た男性に言葉を返す、その間も最後尾から来た男性は周りを警戒しており一言も話す事無く、目も合わせる事無くただひたすら周りだけを警戒している事を明桜は瞳孔を話す男性に向けたまま、視界の端で捉えていた。


「ちょうど良いしそろそろ戻ろうぜ、ユアの体力も心配だし」


「有難うアオ、そうね、戻りましょうトガリ」


「なんだよ、もうちょっと頑張らないのかよ」


「俺も疲れたんだ、帰りたい」


「なんだよ坊主以外は元気がねぇな、坊主も災難だな」


「災難って別にそんな―ッ!?―――おっさん…何すんだよ‥‥」


 流れる様な身のこなしで背後に回り込んだ男が、腰から抜き出したナイフの刃をトガリの首筋にピタリと張り付かせる。


「トガリ!?」


「おっと、動くなよお姉ちゃん、大事な弟の首が落ちるぜ?」


「トガリを離しなさいよ!」

 

「離したってどうにも何ねぇし、従う気もねぇな」


「良いから離しなさいよッ」


「ユア落ち着け」


 今にも飛びかかりそうなユアの肩に手を置き下がらせる。


(しかしだ、どうする。不味い不味い、非常に不味い。相手が生身の人間ならどうにか出来たかもしれないが、ステータスがあるこの世界の人は通常でも鎧を着ている様な状態だぞッ、そんなん対等な数値を得られて無い俺に何が出来るってんだ)


「アオ逃げて‥‥私達の事は良いから」


(逃げて?)


 肩に手が届く程の至近距離に居るユアが、明桜にだけ聞こえる様にそっと呟いたその言葉を明桜は明確に聞いた、そして思考が弾け硬直してしまう。これが異世界何だと平和ボケの日本とは何もかもが違うのだと。


「出来ない‥」


「ッどうして―」

「仲間を見捨てて逃げたら、会わせる顔が無い」


「何よそれ意味わかんない。死んだら会わせる顔は無いわよ、奴隷でも同じだけどね」


(やっぱりこのまま奴らの予定通りに進んだら死ぬか奴隷なのか。嫌だな)


「なぁおっさん達は何の為にこんな事してるんだ?」


 明桜が更にユアに近づきながらトガリを拘束してる男に話しかける。


「そんなの決まってるだろ、おめぇらを奴隷として売り捌く為だよッ」


「そうか、やっぱりそうか。トガリの職業狙いだな」


「まさかこんなガキがレア職業だってんだからな、いい儲けだろ?」


「そうかもな」


「それにユアも容姿が良いからな」


「アオ何言って――」

「もぉそいつらは纏めて買い取りが済んでんだ。って訳でオメェも一緒に売ればまぁ多少は色が付くだろうよ」


「それは残念だったな」


「何言って……おめぇ‥何の真似だ”!止めろッ」

「アオッ!?お前ッ」


「黙れッ良いのか?せっかくの商品が傷つくぞ?」


 ユアの背後に張り付いた明桜がとった行動は相手の写しであり、相手がトガリにナイフを当ててる様に明桜もユアの頬の近くに小さな刃物を触れさせていた。


「はッハッタリも良いとこだな、仲間を―」

「ザルドよせ!やつは本気だ」

「アオお前何やってんだよッ!」


 ザルドがヘラヘラと笑いながら明桜に語りかけると、明桜は言葉では反応せず、手に持つナイフを動かした為にユアの首筋からは血が流れ出ていた。


「さて取引を始めようか」


 トガリを含めた男性4人は、薄気味悪く微笑みながら話しかけて来る明桜を見て恐怖していた。


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