第8話.リベンジスライム


「トガリちゃんと作戦通りにね」


「任せとけ」


「頼んだトガリ」


「おうっ」


 宿で互いの職業に関する情報を交換し、作戦を立てた明桜達三人は、昼食を食べてから、明桜が昨日一人で負けた森に再び足を踏み入れていた。


 茂みに隠れて居た三人だがトガリだけが茂みから出て、目の前に居る標的のスライムの前に姿を見せる。直ぐにスライムはトガリに気づき襲いかかろうと、その滑らかな身体を流動的に動かし表面の一部を大きくう凹ませる。


「こいよ!スライム」


 トガリが左手に持っている木の盾を右手で持っている剣で叩く、そして体当たりすると思っていたスライムから空気が放たれ、放たれたソレはトガリの盾に衝突し、トガリの左半身が大きく後ろに反れる。


「ひぃぃぃこわいぃぃいいい!!!!」


 猿芝居のトガリがそう叫びながら背中を見せたまま走り出し、スライムが軽々と跳ねながらトガリを追いかけ始めた。


「追いかけましょ」

「うん、急ごう」


 明桜とユアの二人は急いでトガリとスライムの後を追いかけた。


「トガリちゃんと分かってるかな」


「ユア言わないでくれ不安になる」


 そんな二人の心配を他所に、真っ直ぐ走っていたトガリが半円を描くように進み、半円を描くとまた真っ直ぐ走り出した。


 スライムは真っ直ぐ最短距離でトガリに向かう為、トガリが避けたその場所に見事な着地をし、そのままスライムの姿は見えなくなった。


「やった」


(うわぁ。まさかこんな古典的な落とし穴で良いとは…)


「ねえちゃん、アオやったぜ!」


「お疲れ」


「そうやって油断しないっ、まだスライムは生きてるんだからね」


「わかぁってるよ、もぉ」


「ならば良し、アオ後はお願い」


「任された」


 作戦は至ってシンプルだった、まず土魔法を使えるユアが高さ2m弱、直径1m程の落とし穴を作り、そこに薪や葉を入れ、トガリが誘導してスライムが落とし穴に落ちたら、明桜が魔法で火を生み出し放り投げる。


「火よ付け。」


 手に持っていた葉付きの枝に火が付き、葉が燃え枝が燃え徐々に火の大きさが増し、明桜は覗き込む事無く、ゆっくりと落とし穴に枝を放り投げた。


 ものの数秒で焚き火以上の炎が燃え盛り、落とし穴からは液体が蒸発する様な音と薪が弾かれる音が聞こえてくる。


「トガリ覗いちゃ駄目よ。…まだ生きてるもの」


 残酷な殺し方を見たくないという気持ちから見ていないのでは無く、まだ生きている。それは覗いてしまえばその顔を的にスライムが攻撃出来るから覗けないのだ。


 



≪経験値を獲得しました≫

≪Lvが上がります≫

≪Lvが2になりました≫

≪1 STP・3 SP・5 PSP獲得しました≫


 スライムが絶命した事を示すそのアナウンスが、頭の中に響いたのは燃やし始めて1分以上経った後だった。





「よっしゃぁあああああ倒したぞぉおおおおお!!!!!!」


「トガリ喜びすぎよ。少しは静かにしなさいよ」


 叫びトガリを注意するも、いつもより控えめでユアも安堵からか表情はかなり明るく、嬉しそうだった。


「二人ともありがとう。二日目で倒せたのは二人のおかげだ」


「何いってんだよ、アオが居たから倒せたんだろ」


「そんな訳――」

「そうよ、だって私とトガリの二人だったら、落とし穴に火をつけるなんて思いつかなかったもん」


「俺が身体張って、アオが頭を使ってねえちゃんが支えるんだ。俺達良いパーティーじゃね!?」


「トガリにしては珍しく良い事言うじゃん、アオもそぉ思うでしょ?」


「そぉ‥だな」

(俺が居なくても火は得られるし、作戦だって時期に思い付く筈だ。本当にただのちょこっと頭脳役だな俺は)


「どうかした?アオ」


「いや、ちょっと考え事してただけだ、気にしないでくれ。それより火を消そうか」


「うん、任せて」


 ユアが落とし穴の間近で両手を地面に着き魔法を使う。


「アースクエイク」


 ユアが魔法を使うと穴の縁沿いの土が崩れ落ち、底で燃える薪に土が覆い被さり、火の勢いは衰え徐々にに消えていった。


「サンドウォール」


 続けて発動されたその魔法で今度は、穴の底一面に溢れる砂を利用して落とし穴の壁の補強を行い、底からはみるみる砂が無くなっていき、半分焦げた薪達が姿を現す。


「再利用できそうだな」


 明桜は出て来た薪を見て言葉を言う。


「でも。これっ、かなり‥疲れ、るぅ…」


「ごめんなユア俺が手伝える魔法を使えなくて」


「んんんっ大丈夫、私の、MPが少ないのがいけないの」


 明桜も最初は手伝えないかと密かに魔法を使って確認はしていた、しかし明桜が穴よ空けと言って出来たのは、高さ1cm直径1cmの小さな小さな落とし穴だったのだ。


「少し休憩しよう、俺が周囲を警戒しとくから二人は休んでてくれ」


「アオも少しは気抜いてて良いぞ、俺も、ねえちゃんも、常に周りは見てるからさ」


「助かる」


(なら少し甘えて視界が取れる方向だけに集中したまま、ステータスを見るとしよう。さっきLvも上がったし気になる事もあるしな。ステータスオープン)


――ステータス――

文元ふみもと 明桜あお】Lv2

【言魔士】Lv1


【H P】:12

【M P】:10

【STR】:1

【VIT】:1

【INT】:1

【RES】:1

【AGI】:1

【DEX】:1


スキル

【言魔法】Lv1

【言魔法対象】Lv1

【言魔法効果範囲】Lv1

【言魔法持続時間】Lv1


【言霊魔法】Lv1

【言霊魔法対象】Lv1

【言霊魔法効果範囲】Lv1

【言霊魔法持続時間】Lv1


パッシブスキル

【HP自動回復】Lv1

【MP自動回復】Lv1


『STP・6』『SP・8』『PSP・10』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る