最初の伝説
第2話 神の力
キャリーさんと話をした後、俺はノーマルと一緒に例の役所へと向かった。
「ここか…」
この商店街の中で一際目立つ役所は、多くの人で賑わっていた。
「この役所はこの町で一番大きい建物なんです。ここでこの世界の基準である『魔力』を測ります。」
「魔力ってゲームで言うMPみたいなやつか?」
「そんな感じのやつですね。魔力は大きければ大きいほど強力な魔法が使えます。魔力量はvillagerがだいたい100、braveだと最低でも1000くらいありますね。」
「へ〜」
やはりbraveとvillagerでは相当の魔力差があるらしい。これは溝が生まれるのも納得だ。ということはbraveの中でも魔力はやはり個人差があるんだろうか?
「じゃあ、魔力が一番多いやつと一番少ないやつだとどれくらいなんだ?」
「一番少ないで聞いた話ではは60とか50ですね。villagerの魔力もだいたいこのくらいですね。あと多いのは、例外を除いて8000くらいでしょうか…」
「例外…?」
「…あー、この話は長くなってしまうので、とりあえず中入りましょうか。」
そういうとノーマルは役所の豪華な扉を開けた。
「へえ。役所ってこんな人多いんだな。迷子になりそう。」
そこは外観に負けず劣らずの綺麗な場所でまるで宮殿みたいだった。
そんな役所は人混みで溢れ返っていた
しかしノーマルは怪訝な顔をして人混みを見つめた。
「いや。こんなに人が多いのは珍しいですよ。何か事件でも起こっているのでしょうか?」
そう言われて自分も人混みを見つめる。
確かに、なんとなくだが、役所にいる人はみんな焦っているように見えた。
ノーマルもその違和感を感じたようで近くの男に話しかける。
「すみません。この人の混み様…一体何があったんですか?」
男は訪ねた俺たちを見ると驚いた様子でこちらを見る。
「お前らプロフェット様の預言を聞いてなかったのか?」
「よ、預言?」
ノーマルの方に振り向く。
「あぁ、この世界には未来を預言できる預言者がいるんですよ。」
ノーマルがそう説明すると、間髪入れずに男は言った。
「そう、その預言者の中でも最も支持を持っているのがあのお方、プロフェット様だ!」
男が遠くを指差す。その遠く先にはローブを纏ったおばさんがいた。
「へ〜あの人が」
手を敬礼するように自分の額に添え、目を細めた。
「プロフェット様に預言出来なかったことはないんだぜ」
男は自信満々に答えた。
「それで、預言の内容は…なんだったんですか?」
「ああ、なんとな!今日ここにくるbraveに神の力が宿っているらしい。」
自信満々に男は言う。
「は?!なんだって?!」
いきなり、ノーマルは声を上げた。
神の力?
「神の力を持つものなんて…手で数えられるほどしか存在しないと言われているはず…もしかして、まだ現れてないのか?」
「ああ、まだ神の力を持つbraveは姿を表していないんだ」
「………」
ノーマルは何故か青ざめていた。
「なあおい、神の力ってなんだ?」
俺はおっさんに尋ねた。
「お前、神の力も知らねえのか?神の力っていうのは俺らbraveとは強さが別格の奴のことだ。まあつまり最強ってこと。説明書にも書いてあるだろ…ってまさかおまえ、新人のbraveか?」
男は疑りの目で俺を見る。
「…まぁ。そんなところだな。」
ちょっと期待して、まんざらでもなさそうに頷くとノーマルはハッとしてこちらを見る。
「……ふーん」
男はジロっとこちらを見た。その目はまるで俺を品定めするようだった。
「あ、で、これから俺は何を…」
ノーマルの方を振り向く。しかし、
「おいお前、ちょっとこっちこい。」
男に襟を引っ張られる。
「グェェッ!」
首が締め付けられる。
「ちょっと!その子に何をする気ですか」
「こいつを検査場に持ってってやるよ。ガハハハ!」
男は獲物を捕まえた獣のように笑って俺を人混みに連れ込んだ。
ノーマルは俺を見ているだけだった。
押し潰されそうになりながらもおれは必死に声を振り絞る。
「あのぉ〜俺今から何されるんですかぁ…??」
おっさんは俺のことなんか見向きもせず、どこかを見つめながら答えた。
「今から俺が検査場って場所にお前を連れて行く。そこでお前の魔力を測る。」
オッサンはニヤッと顔を歪める。
「俺の魔力…なあ、さっき言った「神の力」っての?どれくらいの魔力量なんだ?」
「今いるごく少ねえ神の力を持つ奴らだと、最低でも2万くらいはあるな。」
「2万!?さっきノーマルが言ってた量とは桁違いじゃねぇか!?」
「あぁ。そして神の力を持っているやつは今この世界に20人しかいねぇんだ。だから神の力を持つ奴は…」
「持つ奴は…?」
おうむ返しで尋ねる。
「ま、測ってからのお楽しみってやつだな」
と、男は気持ちが悪いくらいの笑顔でこちらを見るだけだった。
再び無言で人混みの中で引き摺られていると、男がいきなりわっと大きな声を出す。
「まだ能力測ってない新人のbrave、連れてきましたぁぁ!!」
すると周りがざわめきだし、俺達を円で囲むように離れる。
と、同時にマイクのハウリング音が辺りにこだまし、声が聞こえてくる。
『至急braveを壇上にあげるようお願いします』
そう聞こえると、男はオラッまっすぐ進め。と俺を突き出す。
勝手に連れ出してなんて失礼なやつだ。ぶっ飛ばすぞ。なんて思いながら、俺は言う通りまっすぐ進む。足取りは軽かった。
…まさかあの時の夢が本当に叶ったのだろうか。神の力…それがあればあの忌々しいクソスライム共を好きなだけけっちょんけちょんにできるのだろうか。
この後の俺の未来を想像するだけで胸が高まる。
ニヤニヤと前に突き進む。
するとそこには階段があった。その階段を淡々と登る。
これが俺の人生の新たなスタートなのだろう。
壇上に上がりきるとそこにはゲーセンのゲームみたいな装置に、手形がついてあった。
ここに手を当てろということなのだろうか。
俺はゆっくりと手を置く。
刹那。
ビー!ビー!と警告音のようなものが役所全体に流れ始める。下で俺を見る人たちはついにきたのかとざわめいている。
一方の俺も胸が張り裂けそうなほど興奮していた。役所の職員もどうやら急いで調べているらしい。俺は足から崩れ落ちそうだった。
別に、疲れたからじゃない。もしかしたら、俺の最強伝説が…
『た、大変です!!!』
いきなりマイクから音声が入る。するとガタッゴトッと音がなり、大きなモニターに画面が出てくる。
なんだ。せっかく悦に浸っていいところなのに。
『モ、モニタをご覧ください!!』
と職員は声を張り上げる。
そんなに俺の力がすごいのか、と誇らしげにモニターを覗く。
そこには
『マリョクリョウ 0 』
と大きく書かれているだけだった。
「は?ゼロ?」
俺は膝から崩れ落ちていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます