依存
※1 レイ ハワイで観光用に用いられる花の首掛けなど。本文の意は、観光センターの演劇などで、お
※「郵便局」は、日本郵政株式会社の登録商標です。
***
北野礼子の目を
翌日も、翌々日も、彼女は診察が終わった頃に来て、俺に感謝したり、ただ、世間話をして帰った。少なくとも、俺に
俺は、彼女の目的が何なのか、詳しく聞いた。
「目は治りましたが、また、いつ失明するか、わからない事に、恐怖や不安感があります。それから、神様のそばにいれば、いつでも治してもらえるという安心感があるので、ご迷惑だとは思いますが、毎日、夕方になると足がこちらに向かうんです。ごめんなさい。ごめんなさい」
彼女は、そう語った。
おそらく、PTSD(心的外傷後ストレス障害)なのではないだろうか。悪い事をした。
その上、ストックホルム症候群に近いものを俺に感じているに違いない。俺に対する依存だ。
彼女は、間違いなく病んでいる。だって、俺の事を「神」だと思っているのだから。
俺は、彼女に再度、祈祷した。
「心の傷が治りますように」
しかし、何回やっても、効果はなかった。おそらくだが、俺の治療能力は、物理的なモノは治せるが、心の傷までは治せないのだろう。
俺は、
どうしていいか、わからないので、彼女の好きにさせる事にした。彼女は、土日以外、毎日やって来て、俺と10分くらい話したら、満足して帰っていく。
そのうち、情が
ある日、彼女が俺に行った。
「神様、お願いがございます。どうか、私をお側に置いていただけないでしょうか。何でも致します。誠心誠意、お
突撃取材に来て、メガネをクイっとやっていた強気な彼女は、もう、どこにもいなかった。何でもしますの大安売りだな。
あれ? これって、もしかしてプロポーズか?
「申し訳ないが、前の妻と離婚の時にいろいろあってね。結婚は、もう、こりごりなんだ」
「いえいえ。神様と結婚なんて、そんな恐れ多い事は申しません。祈祷院をお手伝いさせてください。何でもいたします。私は、ただ、お側に置いていただければ、それで満足です」
いろいろ考えたが、祈祷院は、俺1人では、そろそろ限界なのは確かだった。人を雇う金銭的余裕もある。俺は彼女を祈祷院の従業員(特殊関係人)として雇う事にした。
信者第1号の誕生である。
***
広いオフィスに移転し、集団祈祷を導入したので、1日に
そう言われても、おば様達の行動を俺は止められない。たぶん、管理会社でも無理だろう。管理会社が下手に注意すれば、集団で
ただ、苦情がひどくなれば、管理会社から俺が追い出される可能性も無きにしもあらず。家賃が上がったばかりなのに、また、先の事を考えなくてはならないのか。事業とは、悩みが尽きないものだ。
お陰さまで、月の売上は、700万円を超えている。もう少し家賃を払っても大丈夫そうだが、今はお金を貯めておきたい。別にここのレンタルオフィスにこだわる必要はない。他にも賃貸物件はごまんとある。敷金、礼金を貯めてから考えても遅くはないと思う。
最近、某都市銀行で「○○祈祷院 代表
祈祷院の売上は、すべて郵便振替口座に入るので、たまにお金を現金で引き出して、銀行に移し替えている。
余談だが、小さな郵便局は現金をあまり置いていない事がある。100万円を近所の小さな郵便局の窓口で引き出そうとしたら、窓口でお金がないので大きな郵便局へ行ってくれと言われた事がある。数日前に言っていただければ、確実にご用意しておきますとも言われた。
ちなみに、昨年度については、既に確定申告しているが、祈祷院については赤字だった。最初の数カ月は、客がいなかったからな。
***
礼子を個人的に雇う事に決めたのはいいが、経理以外、何をやらせたらいいのか、よくわからなかった。経理については、
門外不出の俺の祈祷ポーズを礼子に見られるのは、嫌だったが、スタッフなので仕方がない。ただ、彼女は、俺の事を神だと思っているので、俺が何をやっても、
さすがに、神様呼びは止めさせた。彼女は「はぁ様」と俺を呼ぶ。
おば様達の中にも、俺を「はぁ様」と呼ぶ人が出てきた。
俺は、下町の旅役者か! そのうち、1万円
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