第28話 覚悟
「いや、だってその服にその可愛らしい声。
何で仮面を付けてるのか判らないけど
ミントちゃんしか居ないじゃん。」
そして指さす私の服・・・・しまった~~!
この日も仕事をするつもりであのミニのスカートにへそ出しルックの
何時もの服に着替えていた事を今気づいた・・・。万事休す・・・
しかもバッカルさんは私をミントと呼び譲らない。
その時私の後ろからも。
「ミントちゃんなっ何でバッカルにキスなんか!」
ネリアス!
あのバカも私をミントと見破ってるみたいだし・・・・。
「バカ!私はミントじゃないって言ってるでしょ!
それにキスじゃなくて薬を飲ませただけで深い意味無いから!」
「バカって、ミントちゃん
最近俺の扱いちょっと酷くない?
例え薬を飲ませる為だとしてもキスと変わらないじゃんか!
俺が怪我すれば良かった~!
それに後ろに立ってるのは
シェリスちゃんにクリアちゃんで間違いないだろう?」
そう言うとネリアスは頭を抱え蹲まってしまった。
「ミント気付かれちゃったんなら仕方ないんじゃない?」
シェリスはそう言うけど
私としてはヴァンパイアであることを隠しておきたい。
そんな私の気も知らずにクリアが目の前でフードを取った。
「クリア!」
「ミントお嬢様もう気付かれてますので
ここは潔く正体を明かした方が良いかと思います。」
「じゃあ私も」
そう云って続けてシェリスも仮面を外してしまった。
2人して顔を晒したのなら
私だけ仮面を着けていても意味がなく
私もその場で仮面を外す事にした。
「バッカルさんシーモルさんヤグトさん・・・えっと・・序にネリアス。
手伝って欲しい事があるんだけれど良いかな?」
「俺はミントちゃんに命を救われたんだ何でも言ってくれ。」
「シェリスちゃんの為なら何でもするよ」
「クリアちゃん俺は何をすれば良い?」
「ミントちゃん俺の扱いだけやけに雑じゃない?
でもそんなツンデレのミントちゃんも可愛いんだけどね。」
バッカルさんやシーモルさんヤグトさんは快く承諾してくれた
ただ一人何を勘違いをしている男が
私をツンデレと云って居るけれど
それは違う。
以前私の胸を鷲掴み自己主張してから
私がネリアスを見る見方が変わっただけであって
決してデレ等ネリアスに見せた事は無い。
でもその事に気づいていない様子が・・・
まあその事は置いといてまず私達がやらなくてはならない事は
周りに居る味方の怪我人の保護。
敵側の怪我人も多数居るけれどそれは狙い通り
少し離れた所で陣を成して居た人達は
引きずられる様に後方へと安全地帯へ連れていかれ
混戦状態に陥り怪我をして倒れている人達の方は
私達が手出ししない事を確認すると怪我人同士助け合い
味方の方へ戻りその途中から彼らの仲間が助けに入っていた。
だから
「怪我人を収容して宿舎へ連れて行って欲しいのよ。
そして怪我の酷い人や 瀕死状態の人にはこれを飲ませて。」
そう言って薬袋に入った小瓶に入った私の血を使った薬を渡した。
それから私達は傭兵団の人達と協力して宿舎へ負傷者を運び込んだ。
しかし中には既に手遅れとなり亡くなった人達も多くその中には
私達の薬を愛用してくれていた顔見知りも数多く居る事に気づいた。
「私の決断がもう少しは早ければ
こんなにも死者を出さなくても済んだかも知れないのに
私は一体何を悩んでたんだろう。」
私達が傭兵宿舎まで下がり死者が並べられた前に立ち呟いていると
シェリスが後ろから私の肩に手を掛けてきた。
「ミント、そうじゃないわ。
貴女は何もしなければ死んで居た筈の人達を助けたのよ。
そんなに悔やむ事はないわよ。」
「でも、・・・。」
「ミント!確りしなさい!
貴女は間違った事はしていない。
本来国同士の争いに巻き込まれない様に逃げるのは
私達ヴァンパイアだけで無く一般人にとっても当然の事
それを貴女はこの人達を見捨てる事が出来ずに介入した。
だから本来逃げるべき私達が彼らを助けたのよ。
それにおそらくネリアスさん達は私達が普通じゃない事は気づいて居る筈なのに
何もその事に対して言わないのは隠してくれて居ると言う事に他ならないんじゃない?
だから貴女は間違っていない。
選ぶべき人も行いもよ。」
シェリスは私の両肩を両手で掴み諭してくれた。
「ミントお嬢様少々宜しいでしょうか?」
「どうしたの?」
シェリスと話をしていると突然クリアが私に話しかけて来た。
「こちらの方がミントお嬢様とお話ししたいと申し出られまして。」
見るとクリアの後ろであの鎧を着て指揮を執っていた男性が立っていた。
「私ここの指揮を任されておりますファランクスと申します。
回貴女方に助けらたと部下の者に聞き皆様にお礼を申し上げようと参りました。」
「えっあの私達、それ程の事は・・」
「いいえご謙遜を。助けていただき誠にありがとう御座います。
ただ・・」
「なんでしょう?」
「このままこの場を去っていただけないでしょうか?」
「えっ!だってそれじゃここに居る皆は生き残れないじゃないですか!
私達は皆さんを助けようと」
「もう充分です!」
指揮官だというファランクスが怒鳴りつける様に強く言葉を返してきた。
その表情は苦悶に満ち強く歯を食い縛っていた。
「我々はここで死ぬ事を恐れている訳では無いのです!
この命をもって国を守る事を誇りにしていると言うのに貴女達の様な少女に助けられ
生き残った等どうしてそのような恥辱を受け生きて行けるでしょうか?
勿論貴女方には感謝はしております。
ですのでの貴女方の正体を詮索するつもりはありません。
どうかこのままこの場を去って戴きたい。」
そう言いつつ頭を下げ動こうとしないファランクス。
そこから地面に涙が一粒二粒と落ちる。
「判りました。
でも傭兵の方達も同じ意見なのでしょうか?
それに敵兵の数を見ると、
とても持ちこたえられそうにありませんが・・
このままでは敵兵に侵攻を許すのではないのですか?」
「貴女達の様な少女に何が判る・・・。
我々はこの時の為に厳しい訓練を耐え抜き小競り合いと云えども
日々敵国と戦い命のやり取りをしながら今に至るのです。
覚悟は既に出来ている。
既に後方の部隊へも伝令が走って居るので今夕方にはここに到着するでしょう。
幸い貴女方に怪我人も治癒させてもらい彼らの戦意も上がっている今
今夕方後方部隊が到着するまで戦線を維持させる事が出来るでしょう。
いや!させて見せます!
ですからどうか・・私達の誇りを汚さないで頂きたい!」
「・・・」
その言葉に周りを見渡すと全員無言のまま事の成り行きを見守っている様に見えた。
「判りました。私達は余計な事をした様ですね。」
「団長!」
その時前線から一人の兵がファランクスに走り寄って来た。
「どうした!」
「敵陣営が動き出しました。直ぐにおいで下さい。」
「判った。」
そしてファランクスは私達に振り向き
「それではこれで私は失礼します。
どうか貴女方も無事この場よりの離脱を祈って居ります。」
そう言ってその場に居た傭兵全員を連れて走り去ってしまった。
「ミントどうするの?」
シェリスが心配そうな顔を私に向けて来た。
「うん、約束だもの手出しはしないわ。でも・・」
「どうしたの?」
「彼らの最後を見届けたい。」
「大丈夫?多分ミントにとって一番辛い選択かも知れないわよ。」
「ううん、大丈夫。それよりこのまま彼らに背を向けこの場を後にした方が
私にとって辛いもの。
せめて彼らネリアス達の最後位は見届けたい。」
そう云う間にも彼らの笑顔や私の胸・・・ネリアス達の顔が浮かんで来る。
「じゃあ行こうか。」
私はシェリスとクリアを連れ前線へと歩き出す。
すると森を抜ける直前剣戟の音と共に
男達の怒声が聞こえて来た。
「ネリアス達の最後の戦いが始まった。」
私達は居ても立っても居られず前線へと走り出した。
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