第25話 乱入者
そしてテントから薬を馬車に並べようと出て来た時私はそれを見て思わず手に持っていた薬を
バラバラと落としてしまった。
「はぁ?なっなんでこうなるのよ!」
私が目にしたのは私達の店より更に傭兵宿舎寄りに移動されたあのセリナの店
しかもきれいにデコレーションまでされ昨日までなかった
『セリナの良く効くクスリ』等の看板が堂々とその幌柱上に掲げられている。
「あら、おはよう。今日は随分遅いわね。
私の方はもう開店準備終わってるわよ。」
「あっうっ・・・・」
あのセリナが勝ち誇ったように店の後ろのテントから出て来るなり
満面の笑顔で私に話しかけて来た。
しかも昨日よりも胸元の開いた服にスカートも短い物に替えられ
今までよりも更に過激な物になって居る。
私は返す言葉もなく呆然と彼女を見ているのみ。
やっやられた・・・。
私は気を取り直すと落とした薬を急いで拾いシェリス達の居るテントへ駈け戻って行った。
するとその後ろから嬉しそうなセリナの笑い声が聞えて来る。
悔しい~~。
「シェリス!クリア!やられた~~!」
「ミント何があったの?」
「お嬢様どうされました?」
二人が私に心配そうな顔を向けて来る。
「兎に角二人とも外へ出て来て。」
二人を外へ連れ出し彼女の店を見せると私と同じ様に驚きを隠すどころか
シェリスは私の胸ぐらを掴み迫って来る。
「ミント!
あれ一体どういう事?
ついさっき迄あんな所に店出て無かったわよね!
それにあの派手な装飾はいったい何?
一体何時やったのよ!
私達ほんの数分前まで彼女の店見張ってたじゃない!
何でああなるのよ!」
そうゼイゼイ言いながら早口で捲し立てると
店の前で満面の笑顔を見せるセリナを指さした。
「私は恥ずかしいのを我慢してこんな格好しているのに
一体どうなってるのよ~!」
最後にそう云うと私のな・だ・ら・か・な胸に顔を押し付け
私の襟首を占め始めた。
「シェリッ・・スくっ苦しいって!放して」
「あっ・・ゴメンつい。」
「でも一体どうやったんでしょうね。
ミントお嬢様何か思い当たる事はありませんでしたか?」
「それが判れば苦労ないわよ。
クリアこそ彼女の弟子と話したんでしょ。
何か感じた事は無かった?」
「そうですね。
とっても素直で良い子でした。
私の妹にしたいくらいです。」
「いや、そうじゃなくていけ好かないあの女の方よ。」
「あっそれでしたら
師匠の事は話せないと何も聞き出せんでした。」
「まあ、そうでしょうね。」
クリア自体本当にあの弟子の子の事が好きなようで
あの子の事を話していると笑顔を見せていた。
けど・・・
あのセリナは、いったい何者?
私達がそんな話をして居るとテントから箱を抱えて噂の弟子ファステアーナが出て来た。
その箱を店の台の上に乗せると私達に気付いたのか手を振って来る。
うん、赤い髪を肩まで伸ばし青い瞳に親しみやすい慎・ま・し・や・か・な・胸・確かにかわいらしい子だ。
しかしあの師匠はいけない!
かと言って今日は今更打つ手なし。
仕方なく予定していた通り店を開け新しい薬と栄養剤を店頭に置きお客さんを待った。
今日は昨日より店を開ける時間が早いせいかまだ傭兵の人達は宿舎からは現れないけれど
今朝まで飲み続けていたのか数人が宿舎とは反対側から千鳥足で私達の店へ歩いて来た。
「ミントちゃん酔い覚まし4本。」
「ネリアスさん今朝まで飲んでたんですか?」
「うっ・・飲み過ぎた・・」
見れば刈り上げた金髪に青い瞳細身の男性否
ネリアスさんが店兼馬車に両手を付き苦しそうに酔い覚ましを注文してきた。
その後ろには同じように下を向く男性が3人。
一体この人達は朝まで一体何をしてるんだろう!
本当幾ら遊びがないと云っても朝まで飲むなんて本当に男は・・
「ネリアスさんここで吐いちゃダメですよ。」
私は店から降りてネリアスさんと後ろにいた人達に
酔い覚まし(ハークレイス草入り)を1本づつ配った。
「本当にこんなになるまで飲んで一体何してるんですか?」
私が背を摩り椅子に座らせて酔い覚ましを飲ませると幾分気分が良くなったのか
にこりと笑って話してくれた。
「いや、面目無い。
何しろ昨日あんなに素晴らしいものを見たのは久しぶりだったからついこいつ等と飲みすぎちまった。」
そう云って後ろで同じように椅子に座り酔い覚ましを飲む男達を指さした。
話によると傭兵仲間の人達で彼らの名は
ヤグト赤毛で肩まで髪の毛を伸ばし黒い目の筋骨隆々の大柄な男性。
シーモル 金髪長髪を後ろで縛り緑色の瞳中肉中背
バッカル 短めの黒髪に黒い瞳少し小柄でこの中では一番優しそうな顔をしている。
そんな彼らがそれぞれテーブルをひとつづつ占領してうつ伏していた。
「一体良い物って何ですか?こんな酔いつぶれる程の物って~。」
「ミントちゃんに決まってるじゃん。」
「へっ?私?」
「うん、今日もその格好凄く可愛い~。」
「俺もミントちゃん推し~。」
小柄なバッカルさんが顔だけ上げてそう云うと
シーモルさんやグトさんと
「俺はシェリスちゃん、あの照れる姿がもう~何とも言えなく可愛い!絶対シェリスちゃん。」
「バカいえ!クリスちゃんこそ一番可愛い!あの格好でクリスちゃんに酒を注がれてみろ
失神ものだぞ!」
いやそれぞれ好みが分かれるのは良いけど私達の事でそんなにお酒が飲める物なのか?
男と云うものは本当判らない。
まあ良いお客さんだから別に良いけどお酒も程々に。
とっ思ってる間にネリアスさんが今にも寝そうになって居ることに気付き。
「ネリアスさん私達のテントで寝て行ったら?」
「ん?良いのか?」
「薬等も片づけられる様に大きな物を使ってるから男の人でも大丈夫だと思うわ。」
「そうか、ミントちゃんすまない。
おい!
お前らミントちゃんの言葉に甘えて一寝入りしてくか!」
一言云うとネリアスさん達はぞろぞろと店の後ろにあるテントの中へと消えていった。
後は・・・うん、いびき位は大目に見よう。
彼らがテントの中へ消えてから間もなく私達の店の間に人垣ができ始めていた。
あれ?
お客さんは?
ここ数日の事が噂になっているらしく薬を買いに来る人よりも私達を見ようと来る人達の方が
早く場所取りをしようと早めに宿舎を出て来たらしい。
いや、確かにお客さんを呼び込む為にこんな格好をしたけど・・
まっこの人達も私の店に来てくれればと気を取り直し薬を並べていると徐々に
店の前にお客さんが並び始め販売や薬の相談を始めた。
「「「「うっおおおおおお~~」」」」
すると昨日より大きな歓声が隣から聞こえる!
あの女~、一体何してる!
気になるが私は店を空ける訳にも置かず昨日と同じ様にクリアに様子を見に行かせた。
しばらくして帰ってきたクリアに聞くと。
「ミントお嬢様!どこで手に入れたか判りませんが向こうもテーブルと椅子を用意しています。
しかも薬を出す時にわざわざ屈んで相手の視線を自分の胸に・・・
しかもスカートも短くなってるのであの騒ぎに。」
「あんの~~。ここを何処だと思ってる!
お酒を出す場所でもないのにそんな色仕掛けで薬を売るなんて許せん!」
「あの、お言葉を返すようですが、これを始めたのはミントお嬢様で・・・」
「わっ判ってるわよ!クリア仕事に戻るわよ。」
ここに来て自分の選択ミスに気付いた。
女の魅力では・・・クッ。
でもネリアスさん達の様な人も居るしまだまだだ。
その間にも何度も大きな歓声が向こう側から上がる。
そしてこち等では微笑ましい物でも見る様な優しい視線が悲しい。
でも、センスはうちのお客さんの方が良いのがこれで証明された事になるとおもう…。
昼近くになってテントからネリアスさん達が起きて来る時も隣から大きな歓声が聞えて来ていた。
「ん?ミントちゃんあの歓声なんだ?」
「知らないわよ!見て来たら?」
まさか胸がどうこう言える訳もなく素っ気なく云うとノソノソと見に行くネリアスさんが
間もなくして走って帰って来た。
「ミントちゃん!」
「なっなっ何?」
狼狽した様子で私の両肩を掴み後ろで見守る傭兵仲間3人をそのままに私を揺さぶる。
「ミントちゃん!あんなのに負けるな!俺が応援する!」
「有難う。でもそんなに力まなくても」
私がそう云いたくなるくらいにネリアスさんの手に力が入っていた。
「あんな胸だけの女に俺・の・ミ・ン・ト・ち・ゃ・ん・が負ける訳がない!」
そう云うなり私の豊・か・な・胸を右手でムンズと・・・・訂正・・手のひらで押した。(時には正直に)
「おい!ネリアス!」
私がネリアスさんの顔を見上げ凄むもそれを無視しその手を更に強く押・し・付・け・る・
「ネリアス!俺のミントちゃんに何してんだ!」
おお言ってやれバッカルさん。
私は後ろに棚が有る為動けないことを良い事にネ・リ・ア・ス・はその言葉も無視して言葉を続ける。
「胸が大きい事がそんなに良い事か!慎まやかなこの胸こそ最高な物じゃないか!」
ネリアスさんが恥ずかしげもなく声高らかに周りに居る男達に叫ぶ!
「おい!バカ男ネリアス手を放せ!」
無視・・・
一体この男は何を考えてる?
私のこの恥じらいをどうしてくれる・・・
「触ればわかるこの柔らかさ!それにあんな大きな胸は何れ垂れる!
それに比べこの慎まやかなこの胸は垂れる要素何一つ無い!
垂れた胸といつまでも慎まやかなこの胸!
皆はどちらが良いと思う!
俺はこの胸をえら」
「いい加減にしろ!」
ボスッ!
「ッブ・・・」
私は耐え切れずこの馬鹿ネリアスの頭を飛び跳ねて殴って黙らせた。
バタリと倒れるこの馬鹿ネリアスと呆然とそれらを見ていた男たちの間に沈黙が流れる。
もういい。
今日は昼過ぎに店を閉め私はテントに籠りシェリスとクリアに慰められその日を終えた。
これも全てあの女が悪い!覚えてろよセリナ!
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