第23話  ライバル・・? 

「マリナエル山の乳デカ幽霊!」


「何よ!その言い方は!

まあ貧乳の僻みと受け取って置くわ。」


そう云うと勝ち誇ったように腰に手を当て笑う黒髪の女。

やっぱりこの女は嫌いだ。


この私が貧乳?

貧…貧・・・ウッグググ私だってAは・・

そう思い此方を見て居るシェリスを振り返って見た。

うん!

シェリスがCなら

私はA・・・AAは・・有るわよ・・ね。

口では言い返す事は出来ず心の中で叫んでみた。


「ハ?女は胸より心よ!無駄に胸がデカイからって何よ!邪魔なだけじゃない!」


「そうね。貴女には無縁の物ですものね。

この肩こりは本当辛いわ。」


そう云って笑いながら自分の肩を揉むその女に苛立ちが募り


「貴女私に喧嘩売ってるの?」


「私にはセリナと云う名が有るのよ。

ちゃんと名を呼びなさい。」


「この偉そうに!

少し位胸が大きいからって何よ!

互いに協力して薬を売ろうと思ったけど止めた!

勝手に店を広げると良いわ!」


そう云うとその場でクルリと向きを変え自分の馬車へと戻って来ると

シェリスが私を心配そうに見つめて来た。


「ミント、如何したのそんなに怒って。」


「あの薬師、マリナエル山の乳デカ幽霊よ!」


「乳デカ幽霊って・・・あっ!

あのワンピースを着て突然居なくなった人?」


そう言えば今日もこの場に合わないヒラヒラした胸を強調する様な服を着て居る。

しかもあの時私達に気付かれる事無く姿を消した女。


「そうだ、クリア。」


「はい、ミントお嬢様なんでしょうか?」


「あの女薬師を調べて置いて。」


「どう言う事ですか?」


「あの女普通じゃない。何か有る筈よ。

あっそう確か名前をセリナと云ってたわね。

頼むわ。」


「判りましたセリナですね。調べて参ります。」


あのセリナはクリアの顔を知らないからきっと何か掴める筈。

一体何者なんだろう?


それから彼女達は嫌がらせの様に私達の並びの列の

より前線に近い場所に店を開いた。


午後からは双方の店に行列が出来たけれど何故か向こうから時折歓の声が飛ぶ!

気になって仕方ないけれど今はクリアに任せ私達は仕事に集中する事にした。

その夜クリアが戻って来ると早々報告を聞く事にした。


「ミントお嬢様。それでは今日一日ですが知りえた事を報告します。」


「どう彼女が一体何者か判った?」


「そこなのですが実は

ミントお嬢様と出会われたマリナエル山前後の行動が全く分かりませんでした。

ボーグのギルドにも行って見たのですが彼女を知る者は殆ど居りませんでしたので

この領区の者で無いのは確かです。

それから彼女の従者をして居るのは彼女の弟子をして居り名をファステアーナ。

セリナからはファスと呼ばれております。」


「あの女、弟子を持って居るの?生意気に!

それで私達と一緒で何処からかこの国境の町ボーグが目的で来たと云う事ね。」


「それがボーグへは寄って居ませんでした。

どうやらここの傭兵と知り合い直接この前線へ来ています。」


「それじゃあその前何処に居たかもわからないって事?」


「はい、その傭兵とも旅の途中で会って頼・の・ま・れ・た・までは判りましたが

何処からか来たのかまでは判りませんでした。」


「う~ん、それじゃあ私達がボーグで店を開いて居る間一体何処へ行って居たんだろう?

近くにはそれほど大きな町も無いし近くの村に寄ればボーグの薬師ギルドに記録は残って居る筈よね。」


「薬師として働かずどこかで休んで居たのかも知れませんね。

それからミントお嬢様が仰っておられたハーブレイス草を使った薬は

現在売られておりませんでした。」


「何で?彼女最高級のハーブレイス草を持って居る筈よ。

それを使わないって・・・。

まさか・・・。」


「どうしたのミント」


考え込んで居た私にシェリスが不思議そうな表情で聞いて来た。


「うん、まあおそらくだけれど、今私達がハーブレイス草を使った薬を格安で販売してるでしょ。

もしかしたら私達がその薬を売り切ってから価格を一気に上げて売るつもりかも?」


「あ!そうか、でもその前に戦争になったらその薬草の入った薬を売るどころじゃ無いよね。

そう思わない?」


「そこなのよね~。

それが有るから私達もあの価格でハーブレイス草の入った薬を売って居る訳だし。

もしかしたらネリアスさんが云って居た様に何も起こらないと判断しての事かも知れないし。

その辺は良く判らないわね。

所でクリア時々彼女の店で歓声が上がってたみたいだけれど

一体何があったの?」


「それですが・・・」


「何?言い辛い事?」


「今日彼女の衣装覚えていらっしゃいますか?」


「ええ、あのこれ見よがしに胸を強調した服ね。」


「言い辛いのですが・・・彼女が派手な動きをする度に

揺れる胸を見て騒いで居た様です。」


「へっ?それだけで?」


「はい・・えっ・とっ・ここには傭兵ばかり他の店も男性しかおりませんので

その・・女性のそういう所を見て喜んで居たと云うか・・・・」


そこまで云うとクリアは俯いて黙ってしまった。


「ウッグ・・私達の所ではあんな歓声なんか一つも起らなかったのに何であの女の所だけ!」


とっそこまで云い自分の胸を見つめると空しくなった。

『クッ女は胸だけじゃ無いのに!』

怒りは込み上げて来るが対抗する物が無い・・・ウッ・・・


「クリア有難う明日は絶対負けないから!」


「ミント何か良い案が有るの?」


「シェリス明日はあの女より前線に近い場所に店を出すわよ。

私達に掛かれば店の移動何てあっと言う間に出来る筈。

今夜あの女達が寝てりる間に移動させてやる。

明日の朝あの女が驚く顔が目に浮かぶわ!フフフ・・」


まるで悪役令嬢の様な感じになって居るけどこの際構わない!

見てろよセリナ今日の雪辱を思い知るが良い!

そして前線後方支援での攻防が始まった。


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