第22話 絶対友とは書かない!

私達はネリアスさんに誘われた2日後

国境の町ボーグを出て後方支援の行われている場所へ行った。

すると直ぐにそこに外支援に来ている人達が思いの外少ない事に気付いた。


まあ後方支援とは名ばかりで実際には傭兵からはキッチリお金は取るし

自分の身が危ないと思えば勝手に逃げる事も出来るので正直後方支援等の体を成して居ない。


ただここでは建前上そう呼んで居ると此方へ来る前に寄った薬師ギルドで聞いて来た。

その為危ないと思えば何時でも逃げて構わないとの助言を貰って居たのだけれども

何でこんなにも人が少ない?


ネリアスさんに聞いた話では1000人を超える傭兵が居ると聞いて居たのだけれど

それに対して余りにも店の数が少ない。

食品関係の店は2件内1件は飲食業でほぼお酒を飲むだけの店に見えるし

武器店は雑貨も兼業して居る様で比較的大きいけれどたった1件

そして問題の医師は1人も居ないし薬師も同じ。


そしてやはり皆もその事が気になったらしくクリアからも

馬車が着くなり私に憂いの表情を浮かべ話しかけて来た。


「お嬢様これは少しおかしいと思いませんか?」


「そうね、確かに薬師も医師もいなければ忙しいかも知れないけれど確かに変ね。」


「私はこう云うの初めてだけどこんな広い場所に店が3件だけっという事は

以前はもっと多くの店が有ったと云う事じゃ無いのかな?」


そうシェリスが云う通り店が十件以上あってもおかしくない場所に3件だけが有るのはおかしい。

しかも良く見れば他の場所にもテントや何かを固定した様な跡が彼方此方に見える。


「まあ折角来たんだから準備だけはしようか。」


私の言葉を合図に既に手慣れた手付きで馬を馬車から外すと

テントを張り予備の薬をそちらへ移し荷台の空いたスペースに薬を並べ

別に私とクリアが座れるスペースに椅子を置く

そして何時もの様にテーブルと椅子を用意して居ると

誰かが私達に目掛けて走って来るのに気が付いた。


「ミントちゃ~~ん!」


「あっネリアスさん。」


私が手を振りネリアスさんを迎えると突然彼が私達に向かって頭を下げた。


「ミントちゃんゴメン!」


「エッ!どうしたんですか?」


「実は情勢が悪化しそうなんだ。

先日斥候に行った連中によると

デアレルス王国側の動きが活発になっているとの情報が入ったんだ。」


「それでこんなにここに来てる人が少ないのね。」


「ああ、殆どの者が昨日までに出て行った。

それでせっかく来て貰って悪いんだけれどミントちゃんには念の為ボーグへ戻って欲しい。

俺が呼んで置きながら本当ゴメン。」



そう言って再び頭を下げるネリアスさんだけれども・・・。


「でもそれが本格的に向こうから攻めて来るという訳じゃないでしょ。」


「まあ確かに古参の連中に云わせると今迄何度か同じ様な事が有ったけど

何も無かったとは云うんだが俺としては何か嫌な予感がするんだ。」


「うーん、でも見れば医師も薬師も居ないしネリアスさん達は私達が居なくなると困るんじゃない?」


「それは大丈夫だ。明日もう1人薬師が来るらしくいからそいつに頼む事にするよ。」


「1人?でも何か有った場合その人も危ないんじゃない?その人男の人?」


「ハハ、ミントちゃんみたいな女の子の薬師の方が珍しいじゃないか。

何方かは知ら無いけれど男だと思うよ。

それに1人なら逃げるにしても身軽だし男ならいざとなった場合でも薬師なら捕まった場合でも

それ程酷い扱いはされない。

でも、ミントちゃん達みたいな若く可愛らしい女の子の場合どうなるか・・・。」


そこまで云うとネリアスさんは俯いてしまった。

おそらく私達が敵側に掴まった事を考えて忠告してくれたんだろう。

でも正直私達はそう簡単には捕まらないし普通の兵士なら私1人で数十人相手でもどうにでもなる自信はある。


「ネリアスさん忠告有難う。

だけどデアレルス王国から直ぐに攻めて来る訳でもそれが確実でも無いんでしょ。

だったら折角来たんだから数日店を開ける事にするわ。

それに明日もう一人来るのなら数日有れば

私とその人でここの人達に行き渡る位の薬を出す事が出来るんじゃない?」


「それはそうなんだけど・・」


「大丈夫。その代わり何か有ったら直ぐに教えて。」


「有難う、必ず教えるからその時は必ず直ぐに逃げて欲しい。」


「了解。」


そう言ってネリアスさんに微笑み答えると彼は何かを決意したかの様に頷くと

私達に手を振り戻って行った。

そしてその話を聞いて居たシェリスはニコニコしながら私に顔を近付け。


「ミント、モテル女は辛いわね。」


「ん?何の事?」


「ほら、だってあれだけ心配してくれると言う事はそう言う事でしょ?」


「ああ私達皆若い女性だからね。

もしもの事を考えて云ってくれてるのよ。

本当は全然問題無いんだけどね。」


私がそう答えるとシェリスに苦笑いされた。

何か私変な事云った?


ネリアスさんが去った後店を開くと思って居た通り薬を切らした人や

予備を購入する人で店の前に行列が出来た。


中には私達が若い女の子と知って栄養剤と回復効果の有る例のお茶だけを買って

私達に話し掛けて行く人も居たけれどまあそれも商売の内として置く事にした。


今日一日結構多くの人に薬を売ったけれどただまだ薬を欲して居る人は多く居る様なので

明日も引き続きもう1人来ると言う薬師と共に出来る限る薬を売ろうと思って居る。


そして翌日私達が既に店を開き午前中の販売を終えようとした時

1台の1頭立ての馬車が入って来た。

馬車には薬師の旗が立てられ薬師の馬車だと教えてくれる。


「お嬢様もう一人の薬師様が到着された様です。」


「うん、判った。ちょっと挨拶して来るね。」


クリアに私が答えると最後のお客さんに薬を渡しその馬車に歩み寄って行った。


幌を被ったままの馬車からは話し声が聞える所を見ると

どうやらネリアスさんが云って居た様な1人では無い事が判る。

少なくても2人。

そのまま私が近づくと驚いた事に10代前半に見える女の子が馭者をして居る事に気付いた。


そしてその馬車が止まり中から出来たのは女性!

その女性が私に気付き此方を向いた時。


「「あっアンタが何でこんな所に居るのよ!」」


声が重なった・・・

思い出したくも無いあの屈辱・・


「マリナエル山の乳デカ幽霊!」


「何よ!その言い方は!

まあ貧乳の僻みと受け取って置くわ。」


そう云うと勝ち誇ったように腰に手を当て笑う黒髪の女。

そうもう1人の薬師とはあのマリナエル山で出会った

長い黒髪にブラウンの瞳を持つ無駄に胸がデカイあの日突然消えた幽霊女だった。

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