第6話 約束
「ラング、その気持ち凄く嬉しい。でも少し待って!
私はまだ成人の儀もまだだしそしてロードも。」
「そんな事は問題無いよ。結婚は成人の儀の後で良いし。
キミのお父さんに話せばきっと免除して貰える。」
「違う!そうじゃ無くて私ロードは行きたい。
もっと色んな事を知りたいし見てみたい。
だってまだまだ私の知らない事が沢山有る筈だもの。
ラングは王都に居てその事は判ってるんじゃない?
ここに居ては気付かなかった事が沢山有る事を。」
そう、私は後17日後に迎える成人の儀にロード。
そのロードの為に私は今迄剣の訓練や生活費を稼ぎ人と接する為薬師の勉強もして
その資格も取った。
正直何者にも捕らわれず自由気ままに旅をして見たいと云うのも有るけれど
その根本に有るのは私の知らない世界を見てみたい。
女性は男性に比べその期間は少なく3年から7年と云われるロード。
ヴァンパイアにとってその期間は途轍もなく短いだから私はその時間を大事にしたかった・・・
私とラングの様子がおかしい事に気付いたのかお父様達が話を止め私の側へとやって来た。
お父様とお母様が私の沈んだ様子を目にすると
今まで楽しそうにして居たその様子が一変し心配そうな顔を私に向ける。
「ミント、如何したんだ?」
「お父様、私ロードに出ては行けないんでしょうか?」
「ミントはラングと一緒になるのは嫌か?」
「ううん、そうじゃない。
ラングは私の為に一生懸命努力して騎士になり私を迎えに来てくれた。
そこまでしてくれる人を嫌いな訳がないわ。
でも、今迄私だってロードに出る為色んな努力をして来た。
だからロードには出たい。」
確かに今迄半分遊び的な部分もあったけど剣の訓練や薬師になる為の勉強に
料理まで少なくても一人で生きて行ける為に必要な全てをこの5年間頑張ってやって来た。
特に薬師の勉強は薬草の種類や保存の仕方薬の作り方一つ間違えば大変な事になるので
その勉強はとても大変だった。
今でも思い出すだけで自分を褒めてやりたい位頑張った。
それも全てロードへ出る為。
それを突然辞めるなんて今更出来ない。
「お父様、叔父様、ラング。私ロードに出たい!
もっと世界を知りもっともっと色んな物を見て
私の知らなかった事を体験したい。
ラングが私を迎えに来てくれた事は嬉しいわ。
でも私がロードに出る事が叶わなくなるなら・・・」
うん、ラングには悪いけれどこれが私の正直な気持ち。
ラングが王都へ行ったのが私が7歳の時ラングが10歳
それから8年もの間私の為に頑張って来たラング。
幾ら私が子供の約束だと忘れて居たとしてもその事実は変わらない。
今それを知ってしまった以上この事を伝えるのはとても辛かったけれども
私自身も自分を騙し続けて生きて行く自信は無かった。
するとラングは私の肩に手を乗せ顔を私の視線の位置まで落としてくれた。
「ミント、僕は待つよ。ミントがロードから帰って来るのを。
でも一つだけ約束して貰えないか?」
「約束?」
「王都に着たら必ず僕の所へ来る事。
そしてきみがロードから帰って着たら一緒になろう。」
「それじゃあ、良いのね。」
私は顔を上げてお父様と叔父様に顔を向けた。
「叔父様宜しいですか?
お父様!」
「ミント、2人さえ良ければそうすれば良いよ。
結婚とは互いの家の事情も多分に含まれるが
我がファスエル子爵家とシェルモント家との間の婚姻話だ。
2人の気持ちが一番大事だと思う。
シュナイセンお父様はどうだ?」
そう言って叔父様がお父様を見る。
「ああ、全くクラムの云う通りだ。
ラング我儘な娘だが宜しく頼む。」
お父様がラングに頭を下げる。
「あっ!叔父さん頭を上げて下さい。
僕の方こそ勝手に決めていた事なんです。
だからそんな事はおやめ下さい。」
必死に訴えるラングだけど私が我儘なのは否定しないのね。
うん、判ってた。
でも少し位こんな時否定しようよ。
まあそんなこんなで気が付けば私とラングの婚姻話が進み
私がロードから帰って来次第結婚と云う事になってしまった。
そのロードの期間も決まりその期間5年!
まあ女性のロード期間の中間か
そんなもんかな?
贅沢言えばもう少し・・いや!
7年間全て使って行きたかったけどそれは贅沢か。
シェリスに知られればそう云われるだろうな。
彼女には私がヴァンパイアの仕来たりに従いロードに出る等云えず
その間王都の学校に入学して居る事になっている。
その学校から帰って来るとすぐ結婚しかもこの領主であるファスエル子爵家の3男
ラング、シェリスとは顔を会わせた事も無く私も話した事が無いのできっと凄く驚くだろうな。
叔父様は7日後に婚約発表をすると云って居たけれどその前に彼女に言って置かないと。
そして2日後にシェリスと会う約束をしてその日はベッドに入っても
色んな事が頭を過り浮足立って中々寝付けなかった。
2日後シェリスがあんな事になるとは知らずに・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます