第4話 人としての親友

「フフフンフフ~」


今日はすこぶる機嫌が良い。

何しろ昨日お母様に怒られたばかりで以前から予定していた

親友のシェリスと会う約束がダメになるかと思って居たのに

すんなり許可されたからね~。


ただしシェリスに迎えに来て貰う事という一文が付いたけどまあ一緒に出掛けられるなら良いや。


し~か~も何と今日バーモンドの剣技の練習で3回しか負けて居ない・・・

1回も勝ててないけど・・


けどこれは私にとって大変な出来事なのよ!

何しろ今迄最高記録が昨日までの5回!

それを2回も上回って居るんだから。


そう云う訳で昼・寝・を・す・る・暇・も・惜・し・ん・で・洋服を選んで居る所。

私専属のメイドクリアが5枚目の服を持って来たワンピースに目が留まった。

ライトブラウンのワンピースでスカート部分が膝より少し下あたりまで有る。

しかもウエスト部分が絞られ動き易く目立たずそれでいて可愛らしいデザインが気に入った。


そのワンピースを着て姿見の前で確認して居るとドアをノックする音と共に

可愛らしいその声が聞えて来た。


「ミント、居る?」


「シェリス!今開けるね。」


そして私がドアを開けるとそこには

プラチナブロンドに赤い瞳を持った可愛らしい少女が立って居た。


そう私達『プラティ』と同じプラチナブロンドに赤い瞳と云う容姿を持つ人族

それが彼女シェリス

私達と出会う切っ掛けにもなったその容姿でよく2人で街を歩いて居ると姉妹にも間違われる事がある。


そして今回も。


「「あっ!」」


互いの服を見て驚いた。

だって色違いの同じ様なワンピースを着て居たんだもの。

でもこんな事は良くある事で時には互い

示し合わせた訳でも無いのに

色もデザインも良く似た服を互いに選んで来た事も有る。


私にとっては無くてはならない大事な親友。

でも、彼女は私がバンパイアである事は知らない・・・


「又ミントと同じ様服だね。」


こてっと頭を横へ傾けて笑うその姿が又可愛らしい

おそらくこの領都リリアントで私・の・次・に可愛らしい少女に違いない。


「へへ、本当そうね。でも誰もシェリスを迎えに出て来なかった?」


そう、本来なら今日シェリスが来る事を誰もが知って居るので

メイドの誰かが出迎えて出て来てもおかしく無いのだけれども

シェリスは一人で私に部屋へやって来て居たから。


「うん、出迎えてくれたけど知ってるからって走ってミントの部屋まで来ちゃった。

勝手知ったるミントの家ってね。」


そう云ってピースサインを出すシェリス。

性格も私に似てるかも・・・


シェリスとは私年齢も近く私より2か月誕生日が早いだけの16歳

目は私より少し垂れ目で可愛らしい女の子で

髪の長さも腰まで有り身長も殆ど同じその為後ろから見れば

何方が私か判らないと何時も一緒に居るクリアに云われた事が有る。


まあそれだけ似て居れば姉妹に間違われる事は十分判るし

何だか嬉しい。


「離れて居て顔が判らなくても横から見ればミント様とシェリス様の違いは直ぐ判りますけれど。」


「煩い!」


ヌグググ、たっ確かにシェリスは少なく見積もってもCカップ以上は有ると思うけど

私だってAカップ・・AA位は有る筈だし直ぐに・・・


「クリアが余計な事を云ってるけれど私は成長期だし直ぐ追い付くわよ。

うん!絶対に!」


「しかしミント様はその時気付いて居なかったシェリス様も成長期だと云う事に。」


クリアが嬉しそうにそこまで言い切ると

最後にニコッと笑って

シェリスの様にピースサインをした。


「ええい!クリア煩い!」


「フフフ、相変わらずクリアは面白いわね。」


いや、聞いている分には面白いかも知れないけど言われてる方にしてみれば

鬱陶しいだけなのよ。

シェリスさん。


まあそのまま二人で遊びに行けたのでクリアの事は許す事にしてあげたけど・・

ヤッパリね~。


街中へ入ると以前気に入った小物を見つけた雑貨店へ入り2人でお揃いの

ペンダントを買い今度は洋品店へ行きウインドウショッピング。


2人で店の表に出された服を見て居ると突然後ろから

声をかけられた。


「シェリスとミントじゃないか、相変わらず仲が良いな。」


振り向くとブラウンの髪を短く刈り同じブラウンの瞳を持った少年が立って居た。


「ファークス!」


シェリスが笑顔でファークスと呼んだ。

シェリスとファークスとは幼馴染でシェリスは彼に恋心を抱いて居るのを知って居る。


ファークスも満更ではない物の中々二人の間は進展しないでいる。


まあこんな美人が自分を好きで居るなんて中々信じる事など出来ないからね。

私は黙って二人を見守るだけ。

私はシェリスさえ幸せであれば良い。


その代わり泣かせたら只では置かない!


「でも後ろから良く私立ちだと判ったわね。」


「そりゃあ判るよ。その綺麗な髪をした2人が揃えた様な服を着て居れば。

 そんな仲が良い2人なんてこの辺じゃお前達位だろう?」


「うん、有難う。でも服は別にそろえた訳じゃ無いんだけどね。」


照れながら答えるシェリスが更に可愛らしく見える。


「それでも似たような服を2人で着て来るなんてそれだけ仲が良い証拠だよ。」


う~~ん良い雰囲気。

でもファークスの押しがいまいち弱くそれから数言話すと

何処へ行ってしまった。


シェリスは去って行くファークスの後姿をずっと見てるし

あ~じれったい!


結局ファークスはシェリスとだけ話し私の事はスルー!

ここにリリアント1の美少女が居るのに何故一言も声を掛けない?

それ程シェリスしか目に入って居なかった事?

だったらもっと押せば良いのに。


今度あったら私が恋のキューピットになってやろうか?

何方にしろファークスの押しの弱さが悪い。


それから2人で楽しく食事をして又ウィンドウショッピングを楽しみ。


午前中買ったお揃いのペンダントを着けあって2人で似合ってる等と褒め合い

本当に楽しい時間を過ごした。


夕方薄暗くなって来たのでシェリスを家まで送りその帰り際

少し離れた店の片隅に隠れている一人の女性に振り向きざまに声を掛けた。


「クリア、居るんでしょ。出て来なさい。」


「やはり気付いて居ましたか。」


「当然でしょ。」


お母様が親友のシェリスを迎えに越させたもう一つの理由

それはクリアが私を監視出来るようにする為。


確かにシェリスと一緒ならクリアを撒く様な素早い動きは出来ないからね。

でも私ってそんなに信用無いのかな?


前科・・・?

言い訳出来ないかも知れない・・・


「クリア、ちょっと食事をしてから帰るわ。」


「どちらが宜しいですか?」


「そうね。今日はグランシアにしましょう。」


『グランシア』それは領都リリアントでも1、2を争う高級宿

そこに止まるお客は富裕層が多く食事も良い物を食べてる人が多い。


でも私が狙うのは馭者。

彼等も使えている主が良ければそれなりの物を食べ血もなかなかの美味。


逆に主の方は良い物を食べ過ぎて脂ぎって居たりするので

私の好みは程良い甘みの有る喉越しの良い若い馭者の血。


しかもこの時間は宿に着き馭者が馬の世話をしている時間。


「クリアお願い。」


私は宿の馬車置き場裏手の影に身を潜めクリアに誘い出して貰う様に頼んだ。

狙うは丁度馬小屋に馬を入れた若い馭者。


「あの、すみません。」


「はい、何でしょうか?」


「お嬢様が足を挫いてしまって宿の中まで連れて行きたいのですが

私一人では連れて行けないので出来れば手伝って頂きたいのですが。」


クリアがその男性に困り果てた様子で声を掛けると

その男性は快く引き受けてくれた。


「良いですよ。何方ですか?」


そうやって彼女が私の居る所まで連れて来るとしゃがみ込む私に

その馭者が顔を近付ける。


「もう大丈夫ですよ。一緒に宿の中へ行きましょう。」


「有難う御座います。」


そうして彼の首に抱き着く様にして引き起こされると

その首に牙を食い込ませた。


「うっ」


それと同時に私の口に中に生暖かく甘くどろっとした物が流れ込んで来る。

その間彼は快楽神経を刺激されウットリとした表情をする。


その間ほんの数十秒。


私達は月に一度ほんの少しだけ血を飲めば

後は普通の食事で事足りる。


その首筋から口を放すと直ぐにその傷口は塞がり

その男性も1分もすれば意識を取り戻す。


そうすれば意識を取り戻す前10分間の記憶を失い何が有ったかさえ覚えていない。


まあ暫らくの間快楽神経を刺激されたせいで

幸福感に満たされた状態が続くけどそれは別段問題無い。


「クリア貴女もどう?」


「いえ、私はお嬢様からだけで十分ですので。」


「そう。」


私達は彼を安全な馬小屋の前まで連れて行きその壁に背を持たせ掛け

意識を取り戻すのを陰から確認するとそのまま気付かれない様に家へ帰って行った。


流石にこんな所はシェリスには見せられないよな~。


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