第4章 悲しき冒険
第46話 旅に出る条件
ベンディ王国~王城にて~
国王「............ハァ」
宰相「..............」
国王「...............ハァ」
宰相「あの....国王様?」
国王「なんだ?宰相」ハァ
宰相「いえ、食事が全然進んでいないので、どうしたのかと....」
国王「.....理由はわかるだろ?」
宰相「ええ、まぁ」
国王「まさか私の可愛い娘が危険な旅に行く事になるなんて、ハァ」ガックリ
王妃「もう10日は経ちましたね、大丈夫だと良いのですが。」
宰相「大丈夫でしょう、側にはクロス君もいますし、それに剣聖、賢者、聖女もいます、何かあっても彼らが対処してくれるでしょう。」
国王「だと良いんだけどなぁ」ハァ
それは20日前に遡る
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クロス達は里帰りの後、国王達に村で起きた事を話した。
国王「そうか、行方不明になっていた勇者マンルが」
クロス「はい、まさかレプリカの傀儡になっていたとは、思ってもいませんでした。」
実際は少し違うが、こっちの方が話しやすいのでクロス達はこう話した
宰相「しかし、そうなるとマンルのような人間がいればいるほど、こうなる可能性もあると言うことか」
王妃「本当に厄介ね人間って」
クロス「.....本当、そうですよね」
フローズ「..........」
クロス達は前世の世界で人間の醜さを痛い程知っている
戦争が終わり復興が始まるかと思ったら
食料の奪い合い、殺し合い、子供が目の前で生き絶えそうなのにそれを見捨てる親達、それ程までに世界は人間は残酷な生き物だ(勿論そうでない人もいたが、その人ほど早く死んでいった)
そして今は魔族と戦争をしている中だ、魔物によって滅ぼされた村や国の生き残りが復讐心でレプリカの傀儡に人形になる可能性もある。
フローズ「もう、のんびりしている時間はないわね」
このままレプリカの思惑通りになってしまえば、またあの惨劇を見ることになる、そしてそのカウントダウンも確実に進んでいる、もう猶予は限られている
クロス「ああ、だから私達は偽神レプリカを倒す旅に出たいと思っています」
国王「...そうか、もう行ってしまうのか。」
クロス「はい、レプリカの思惑通りになる前になんとか阻止したいのです。」
国王「それは分かっておる、しかしお前は義理とはいえ私の息子だ、今後旅に私の息子達がお前達の旅の助けとなるように手紙を送っておこう。」
クロス「ありがとうございます」
王妃「気をつけて行くのですよ?私も貴方達の帰りを待っているのですから。」
クロス「はい、必ず帰ってきます。」
ミク「国王様、王妃様」
メミル「私達をここに住まわせてくださりありがとうございました。」
セシル「この借りは世界を救うことでお返しします」
フローズ「では、少しの間ここに滞在してある程度準備が出来次第行きたいと思います。」
国王「うむ......わか......ん?」
クロス「どうしたのですか?義父様」
何か疑問に持ったことがあったのだろう、出る前に呼び止められる。
国王「いや.....今は、聞き間違いか、何か別の声が聞こえたのでな」
王妃「別の声が?」
宰相「私は何も言っていませんよ?」
クロス「俺もです」
ミク「あたしも」
メミル「私も」
セシル「私もです」
フローズ「私も」
ここにはこのメンバーしかいない、しかし国王は何か疑問に思っているらしく、何か考えている
クロス「......とりあえず、部屋に戻りますよ?」
痺れを切らしたクロスが声をかける
先ほどからぶつぶつ何か言っていて、不気味だった
国王「うむ、すまぬな待たせてしまって」
クロス「気にしていません、ではこれで失礼しました」
そう言って頭を下げる
ミク「失礼しました」
メミル「失礼しました」
セシル「失礼しました」
フローズ「失礼しました」
そうやって彼らが部屋から出ようとする
国王(聞き間違い....なのか?)
国王は先ほど感じた違和感を拭えずにおり彼らが部屋を出るまで見ていた
フローズ「んで、いつ出発する?」
国王「やっぱり、待て」
そこでまた呼び止められる
王妃「一体どうしたのですか?何回も呼び止めて」
国王「ああ、ちょっと確認したいことがあってな」
クロス「確認したいこと...ですか?」
国王「ああ」
それを聞きミク達もそれを聞くために待つ、なんの確認だろう?と不思議に思いながら国王の言葉を待つ
国王「フローズよ」
フローズ「はい」
国王「まさかと思うが、クロスと一緒に「行きますよ?」.....やっぱり」
国王「.......何故だ?」
フローズ「それは私は英雄だからですよ?何を言っているのですか?」
国王「そうだが、お前は王女だぞ!?何を考えている!」
この時、国王が初めて怒こった姿をクロスは見た、普段温厚な人が怒るとここまで怖いのか、ミク達は"ヒッ!"と言って驚いている
王妃や宰相も国王の怒りに戸惑っており、今冷静なのはクロスとフローズだけだ
クロス(そういえば、フローズの実力知っているのって俺ぐらいなものか)
マンルとの戦いで、フローズは周りに結界のようなものを張っていたが、せいぜいそれくらいで、英雄の力をしっかりと使ったことがあまりない、しかも国王の言った通り、彼女は王女、その王女にもしものことがあれば、クロス自身もただじゃすまないだろう。
国王「クロスよ」
クロス「はい」
ギロリと睨みつけられる、しかしクロスは落ち着いた声で答えた
国王「お主1人で行けば問題ないのではないか?私の可愛い娘をそんな危険な旅に行かせられるわけがなかろう?」
クロス(やっぱりこの人は娘の事を第1に考えてくれているな)
クロスが思っていたのは、クロスの前世の事で、その国の国王は自分の子供を道具としかみておらず、娘が死のうが息子が死のうが代わりを作り、終わりだ。
だからこそ、自分の子供を大切に思っているこの人はとても心が温かい人なんだと思った。
クロス(でも、それとこれとは違う)
たしかに魔王を倒すだけなら、その旅も1人で十分だ、しかし相手は神、フローズの力は必ず必要だ。
クロス「恐れながら国王様、一つ宜しいでしょうか?」
国王「なんだ言ってみろ」
クロス「たしかにフローズはこのベンディ王国の王女です、その王女に何かあれば一大事なのはわかります」
フローズ「クロス...?」
クロス「しかし、偽神レプリカは私1人では、いえ、剣聖達の力を合わせても勝ち目はありません」
そう言ってクロスはフローズの手を握る
クロス「私達は2人で1人どちらかが欠けてしまえば、本来の力を出せません」
フローズ「お父様、身勝手ながら、今回ばかりは、お父様でもお母様でも言う事を聞くことはできません」
フローズは力強く言う
フローズ「この世界を救える力を持っているなら、私は躊躇わず使います、それが私の覚悟です。」
王妃「フローズ....」
宰相「フローズ様.....」
国王「........それがお主らの覚悟か?」
クロス.フローズ
「はい」
国王「..........わかった、認めよう」
クロス.フローズ
「!!では」
国王「だが、それを証明するための確認をさせてもらう」
クロス「..........と言いますと?」
国王「うむ、私は親善試合でクロスの戦いしか見ておらぬ」
クロス「はい」
国王「そこでじゃ、心苦しいが、フローズが本当に世界を救えるほどの力を持っているのか、クロスと戦って欲しい」
王妃「!?」
宰相「!?」
ミク達「!?」
フローズ「.............」
クロス「.................」
国王「嫌か?」
王妃「ちょっと貴方!?何言っているのよ!?試すも何もなんでクロスなのよ!別に騎士団でも!」
国王「騎士団では相手ならん、ならこの王国の中でまともに戦えるのはクロスだけだろう」
宰相「しかし、だからと言って」
国王「これくらいの覚悟がないなら、行かせるわけにはいかない」
国王の目は本気だった、それ程までにフローズの事を考えているのだろう
フローズ「わかりました」
王妃「フローズ......」
フローズ「それで認めてもらえるのなら、やります」
クロス「私もです、それで証明できるのなら喜んでやりましょう。」
国王「わかった、なら場所はあの闘技場で良いな」
クロス.フローズ
「はい」
国王「では試させてもらおう、お前達の実力を」
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続く
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