第33話 婚約発表

宰相「クロス君、君はフローズ様と婚約をしている、そうだね?」


クロス「え?ええまぁそうですけど。」


宰相「そしてそれを知っているのは私も含めて、ここにいる者そして彼女達だけだ。」


フローズ「彼女達?...ああミク達ね」


宰相「そこで、君たちの婚約発表を公に広めるんだ」


王妃「ん?それでどうなるの?」


宰相「はい、各国が欲しいのは英雄の力つまりフローズ様となら政略結婚、クロスなら強制的に結婚されるでしょう。」


国王「...娘はやらん!!」


クロス「え?」


フローズ「お父様?」


国王「それで続きは」


クロス.フローズ

(え、まさかのスルー?)


宰相「はい、ですので、彼らはもう婚約関係であり、その準備があると言うことで、今回の話をなくす、ということです。」


なるほど、ありきたりだが、最もな理由であり、これなら無理にでも誘うことは出来ない、

しかもクロスが村人ならと誘拐まがいな事をしようと考える者達もいるだろう、しかしフローズの婚約者となれば王家の者、それは国同士の戦争になりかけない。

フローズも政略結婚は出来なくなり、そんな理由で誘うこともない、とても簡単な話だった。


クロス「成る程、そうすれば下手な理由で相手も誘うことは出来なくなり、下手に動けば国が動く」


フローズ「でも、それで英雄の私達は大丈夫だとしても、ミク達はどうするの?」


宰相「彼女達は勇者マンルとの関係があります、失意の中のためこちらとしても何も出来ない状態と言っておけば大丈夫でしょう」


フローズ「........そう」


王妃「.........」


国王「ならそれで行こう、すまなかったな皆、これで一先ずなんとかなりそうだ。」


フローズ「...................」


王妃「................」


クロス「....どうしたの、フローズ?」


フローズ「え?」


クロス「いや、なんか思い詰めているような感じだから、つい」


フローズ「うん....ごめんね心配かけて、私は大丈夫」


クロス「そっか、ならここはもう任せて俺達は戻ろう」


フローズ「ええ、そうね。」


クロス「では、俺達はこれで失礼します。」


国王「うむ、すまなかったな、後は任せてくれ。」


そう言って彼らは部屋から出る


国王「後は婚約発表の日程とした準備をしなくては」


そう言って国王は書類を書き始め、宰相はそれの手伝いを始めた。


王妃「...................」


王妃は深妙な顔をしてこっそりと出て行った。

———————————————————-

フローズ(とクロス)の部屋


フローズ「.......」


フローズは部屋に入ってからもずっと何かを考えており、時折"うーん"と頭を悩ませながら、考えている。


クロス「..................」


ここまで真剣に考えるフローズを見て、一体何を考えているなのか気になってきた。


クロス「なぁフローズ」


フローズ「んー?」


呼びかけても、頭はそっちにいってるらしい。


クロス「お前何を考えているんだよ?」


フローズ「んー?」


クロス「おーい?」


フローズ「んー?」


クロス「フローズ~?」


フローズ「んー?」


クロス「...............貧乳」ボソ


フローズ「今なんて言ったおい」


クロス「怖い怖い怖い怖い怖い怖い」


どうやら聞いていたらしい

その後もフローズはずっと何かを考えて、クロスは暇なので少し仮眠を取ることにした。


~数時間後~


フローズ「うん!やっぱりこれしかない!」


そう言って立ち上がるフローズ

そして寝ていたクロスを起こしに行く。


フローズ「クーロースー!」ジャンプ


クロス「おふぅ!?」ぼふっ


フローズ「おーきーてー!」ジタバタ


クロス「わかった!わかったから!」


そう言ってフローズをどかして起きる

今の時間は少し日が影って来たところだ、周りが少し暗い。


クロス「それで、ずっと考えていたのがわかったのか?それとも決めたのか?」


とりあえず、何かを考えていたので聞いてみる。


すると満面の笑みで


フローズ「うん!決めた!」


.....俺の前だとどんどん子供っぽい口調に、なっていくフローズ、今はそれどころではないか。


フローズ「さっきさ、お父様が私たちの婚約を発表するって言ってたでしょ?」


クロス「ああ、言っていたな」


そうすることにより、一時的にとはいえ人間同士の火種も少しは消えるだろう。


フローズ「それでね、クロスは私ともするけど」


.......ん?私"とも"


フローズ「ミク達とも婚約してほしいんだ。」


クロス「.................................................」


「は?」


いきなり何を言っているんだこいつ


クロス「なぁフローズ」


とりあえず、何でそんな考えになったのか聞く必要がある


フローズ「何?クロス?」


クロス「何言ってんのお前」


あ駄目だ普通に言ってしまった。


いや、たしかにここは一夫多妻制の世界よ、ありえなくはないよ、でも、え?


何で?まじでわけわからん


フローズ「.......実はね私、ミク達と仲良くなったんだ」


クロス「.....え?」


突拍子もなく、話し始めた


フローズ「最初は勿論大好きなクロスを奪おうとするからよく喧嘩してたよ。」


あー、だから帰ってくるときにボロボロになってたのね、転んだわけではなかったと


フローズ「でもね、そんなときにクロスと会うと息がぴったりなのよ。」


フローズ「こう、クロスはこう行動するからここに隠れていればバレないとか」


今、ストーカーの事話してなかった?

あれお前らかよ、なんか視線感じんなぁと思ったら。


フローズ「私もそうだけど、彼女達も性格に難があったけど、それでもクロスの事が大好きなんだなってわかったの。」


クロス「.............」


フローズ「それに、あんな屑に感謝したくないけど、マンルのお陰で、彼女達の束縛もほとんど無くなったでしょ?」


たしかに言われてみればそうだ、昔だったらI秒たりとも離れなかったのに、今ではそんな姿が見えない。


フローズ「やっぱり私も過去の前世の事もあるから、どうしても彼女達の今の姿を見ると胸が痛くて」


...それは俺も感じた、最初は喜んでいた、でも、聖教会に行った後からは、胸が時折苦しくなる。


選択は間違っていなかった、もしこのまま何もしなければ、俺はこんな幸せな人生を過ごせなかった。


でも......


クロス「お前はいいのか?フローズ?」


俺は何もいらない、他の美人も美女もいらない

ただ、愛する者とこれから先、隣で幸せと感じられるそんな生活を送りたいだけだ。

それが例え1人じゃなくても


フローズ「私は良いわよ?」


クロス「まぁお前から言い始めたんだ、それはそうだろうな」


フローズ「ええ、それに」


そう言うと顔を紅く染めて


フローズ「私の知らないクロスの話を交互に話し合って共感し合う、ああ、なんて幸せなの」


クロス「.............」


まぁ、フローズがいいならいっか、でもあいつらにも聞かないとな、それと義父さんにも言わないと。


————————————————————

補足とおまけ


フローズについて


"フローズの口調変わってね?"


はい、クロスの前だとどんどん甘えていくようになります。

元々フローズは王女なのでそれなりに身だしなみ、礼儀、作法などいろいろ縛りがあったので、クロスにあってからは素の自分を見てほしいため、ああなった。


"何であんなに食うの?"


フローズは小さい頃はよく食べてました。

しかし王族として振る舞いが多くなり、食事より話を聞いて情報を得る、交流して親睦を深めるなどするので、食事をする時間がなくなり、それに慣れるようにあまり食べなくなった。

しかしクロスの"食べる姿可愛いね"

の一言で元に戻った。


フローズ「因みに1番好きなのはクロスの買ってきたプリンを奪って食べること!」ドヤァ!!


クロス「ふーん」ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


フローズ(*^ω^*)<許して


クロス「もうお前と一緒に寝ないわ」


フローズ「それだけはいやー!」


クロス「知らない、んじゃ」ガチャ


フローズ「あ!待ってクロスー!」


バタン


フローズ「..............ううう」


その日の夜


ガチャ......ソローリ


クロス(フローズは寝てるか?)


フローズ「う....う...グスックロスのバカぁ」グスッグスッ


クロス(泣いているのか?)


クロス「はあ」


やれやれと思いながら布団をバサッとあげる


フローズ「きゃあ!?」


すると目を赤く腫らしたフローズがこちらを見つめた


フローズ「え?クロス?」


クロスは無視して入る、そして布団の中で抱きしめる


優しく頭を撫でてそっと言う


クロス「反省してそうだから許す。」


フローズ「クロス~」涙目


そう言いながらフローズは胸の中に埋まり、足を絡ませた。


フローズ「クロスの匂い安心する」


クロス「.....俺もだ」


そう言って安心したのか可愛らしい寝息が聞こえこちらも意識が遠くなった。


翌朝、熟睡しすぎて、朝食の時間に遅れ、王妃から「朝から盛んねぇ?」

と、言われ俺たちは顔を紅くし

国王は「娘が娘がぁ...」と涙を流した。



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