第7話
「いや来ないでって言ったのに何でまた来てるのよ」
「食事にロケーションは大事だってわかった。教室より屋上で食べるほうがおいしい」
「なにそれ」
「それと世界を救いたくて」
昨日と変わらず優しい青空の下。
階段室の壁を背に座る麻倉の前に立って、僕は真っ直ぐに彼女を見つめた。
「世界はもう救われてるよ」
「麻倉にはそう見えるかもしれないけどね」
平和が一番だと彼女は言った。もちろん僕もそう思う。
でも、立つ場所によって見える景色は違うんだ。
「君は透明じゃない」
僕の言葉を運ぶように、彼女の下へふわりと風が流れた。
麻倉志穂は確かにここにいる。彼女にも見えているはずだ。
僕の瞳に映り込む、透明色の君が。
「僕は君も
麻倉は僅かに目を逸らした。そして座ったまま「どうして」と小さく呟く。
そのか細い声も僕の耳にしっかりと届いた。
「いつかの質問に答えるね」
あの日、彼女は知らない振りをすることもできた。見つけた財布に見て見ぬ振りをして、時間が解決するのを待つこともできたはずだ。
それでも、彼女は迷わず財布を手に取って矢面に立った。
世界を救いたい。それだけのために。
「僕には君がヒーローに見える」
君が守ったこの世界で。
君が心から笑えないなんて、何が平和だ。
「君が救われなければ世界は救われない。それだけで十分だよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます