第31話 即制圧

「陸軍のA隊は真っすぐに直進し、堂々と目的地を目指せ。B隊はA隊の陽動に釣られた政府軍を横から攻撃し、殲滅せよ」

「了解!」


もはやテロ組織とは思えない、国家と国家がぶつかる並みの大規模な「戦争」が始まった

だが、日本独立軍は仙台に駐留している政府軍の数を圧倒している

後は短期で落として、独立宣言を行い、「日本国」の成立を外国に宣言すれば

勝利、そこまでが勝利

首都を落とすという簡単な作業を行えば日本独立軍の勝利なのだ


仙台は広い

そして、国会や裁判所など政治の中枢が集まる場所が仙台中心部

水面たちはそこから10キロほど真っすぐ北で陣を張っている

攻めるのに邪魔な障害物は無し、多少のカーブはあるが道路に沿って直進すれば仙台中心部に着くのだ


そこでA隊の陽動が堂々と直進、集中した政府軍を回った本体のB隊が攻撃

政府軍は崩壊し、撤退する

ものの数時間で仙台中心部を制圧


「健二、一旦そこで止まり敵からの攻撃を防御。戦線を維持しろ」

「はい」


水面は高台に上り望遠鏡で敵の動向を観察

各責任者に指示を渡していた

陸軍がある程度、3キロといったところでストップする

そこで、次に水面は場を整えていった


「弥生、本陣にあるありったっけの物資をすべて前線に送れ」

「はい、了解です水面さん」

「次は.....。宮は前線より400mで待機。怪我人を治療しろ」

「了解」

「最後に生井。部外者に侵入されないよう、不審な電波は遮断しろ。他に、政府のウェブサイトに大量アクセスしダウンさせてくれ」

「はい、分かりました」


基本的に水面は軍独自のチャットルームで指示を出しているが、それでも現場で各責任者に電話をすることで修正しているのだ

生井の情報グループはそのチャットルームを部外者に見られないようにしている


健二が陸軍を誘導し敵を攻撃、弥生が仲間に物資を送り回復させる。宮が傷ついた仲間を治療する、そして生井が不審な電波を消したり、政府公式のウェブサイトをダウンさせたりと妨害

各々が自分の役割にあった仕事を受け持つことで、戦いを有利に進めていた


場が整い終わり、兵士の士気や補給が高まったところで水面は総攻撃の命令をかけた

まずは空軍責任者である雪に攻撃の合図


「雪、300に上る戦闘機で政府中枢を爆撃。特に残留している政府軍を叩き、邪魔な障害を一切取り払え」


空軍の爆撃で敵が疲弊したところを、健二の陸軍3万人が総攻撃

ヒトラーお得意の電撃作戦で首都を制圧する

制空権を握っている日本独立軍にとって、政府軍など雑魚でしかない


前線を張ってから約3時間後

一時的にではあるが、日本独立軍は遂に日本省の首都である仙台を占拠し終えた

軽傷者500人重傷者15人死亡者0人という完全勝利

数の力により僅か4~5時間で仙台戦争は幕を終えたのだった


「ふう.....。やっと国会の地を踏めたな」


制圧し終え、水面たち日本独立軍官僚は国会に入っていった


「さすがに世界第二位の首都のさらに中心、国会。そんじょそこらの建物と破格が違うな.....。これも俺たちから取った税金で作っているんだけど」


その壮麗な国会を前に水面たちは圧倒されていた

床が前面大理石、一定の区間で貼られてある窓には一点の汚れもない

高そうな数々の展示品

そして驚くべきはその規模の大きさ

廊下の先が見えない、全力で走っても数分は掛かる

国会というより、西洋の屋敷


「水面さん、これから独立宣言をするんですか?」


立ち止まって意識が国会の方に向いている水面に神楽が言った


「ん?独立宣言は明日に行う予定だ」

「え?、では今日は休むんですね!」

「いや.....。今から行うのは中国人狩りだ」

「え?」


その答えに一瞬全員が混乱し、思わず疑問の声を上げた

独立宣言は今日の夜に行うと聞いていた、だがその良く分からない予定は全くもって初耳だったのだ


「あの.....中国人狩りとはいったいどういう.....?」

「仙台に住むすべての中国人をぶっ殺す。虐殺、強姦、拷問、暴力。いたぶり殺す!そこから私の復讐が始まるのだ」

「いやいや、そんなことしたら収拾なんて尽きませんよ。まだどこかに敵が潜んでいる可能性もあります」


その弥生の否定に続いて、宮も意見をぶつける


「今ここでは、敵を追い詰めるより、一応として共存の道を作るべきです。戦略上、愚策となる行動は取るべきではないと.....」


戦争の基本、士気を乱さない

宮が正論をぶつけるが、復讐にとらわれた水面にとっては聞く耳を持たなかった

今まで水面を動かしていたのは、ひとえに母の復讐

ただその目的だけ突っ走っていった


息を荒くし、目を張り詰めて、大層興奮した様子で水面はいた


「黙れ!最高責任者はこの私だ。今日の夜は予定通り、仙台を地獄に変える。これはもはや決定事項だ」


そう水面は吐き捨てると、ベランダに向かっていった


「何をするの!」

「宣言をするだけさ」

「何の宣言を?」

「決まっている、地獄の宣言をだ!」


つかつかと速足で前へ進み、外に開け放たれているベランダに立った

もうすっかり暗い暗い夜になっている、暗いくらい漆黒の闇の染まっていた

だが、地は懐中電灯の光で輝いている

チカチカと耳に来て、眩い


食事をとっている日本人に向かって、水面は言った


「者共、遂に我らの悲願を達成することが出来た。だが、まだ残っている。我らの悲痛な叫びを黙殺し、うま味を吸い続けてきた者がいる。水面が命じる、仙台中の中国人を全員ぶち殺せ」

「中国人に行われる全ての犯罪は合法とする。さあ、復讐を始めろ」


「うおおおおおおおおおおおおおおお」

「流石だ、水面様」

「家族の仇がやっと撃てる」

「パーティの始まりだ!」


暗い闇を明るく明るく照らす

今から仙台はどれだけ赤く染まるのだろう

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