第23話 ロスト

優勢を貫いていた政府側は水面の水作戦によって一斉に流されてしまった

大半の兵士は川に流され、生き残った兵士はたったの数名程度であった

武器、戦車は流され本陣は無防備に

まさに逆転の一手であった

その自分の作戦の完璧さに水面は満足した表情を浮かべ、あっけにとられている反乱側に進撃を促した


「悪逆の限りを尽くしてきた軍隊は今神の裁きにあった。日本人よ私についてこい。反撃開始だーー-!」

「おおおおおおおおおおおおおおお」

「水面様万歳ー」


さっきのさっきまでビビり散らかしていた反乱側は一斉に、勝機を取り戻した

逃げていた演技は嘘ではないが、それでも反抗意識を取り戻すほど水面の作戦の結果は破壊力があった

彼らに強い信念など持っていない

水面は改めて、反乱側の小者心を感謝するのであった


「士純中将、二師団が殲滅しました」

「士純中将、戦車が全て流されました」

「士純中将、敵側の反撃が始まります」

「士純中将、早く指示をください」

「指示を」


士純には次々と彼を落胆させるような情報が出てくる

本陣に多くの兵が逃げてきたことによって、より収拾のつかない事態になっていた

生き残ったとしても、その旅団や師団をまとめる大佐、少将が死亡してしまって身動きの取れない状態に

その最悪な状況に士純はわなわなと拳を震わせていた


「うぐう、日本人め。私の出世の邪魔をしやがって」

「士純中将、軍の80%が無くなりました。どうしましょうか.....?」

「ええい、黙れ黙れ。お前らで食い止めてこい。私はその間に逃げる」


ここにきて責任者の放棄

運命は決まったと言えるだろう


「おい花序、黒入。お前ら爆弾を括り付けて敵の大将に近づいていけ。そして爆死しろ。そうすれば敵の進軍は止まるはずだ」

「.....」

「っておい聞いているのか?今生き延びたところで俺が上司に、お前らのせいで負けた言って責任を擦り付けるぞ。おい、それは何だ.....?」


士純中将の周りの者たち全員が銃を持っていたが、その銃口は全て士純を向いていた


「お、おい待て私を殺す気か!これは立派な反逆罪に当たるぞ。な、なあ銃を下ろしてくれ、悪いようにはしないから.....」


だが、彼らの銃口は変わることなく士純を向いている

その場の全てを代表して花序大佐が士純中将の前に出た

ピクリとも表情を変えず心底見下すような目でこう言った


「士純中将、貴方は自分が柔軟な思考を持っていると言いましたよね。この状況を打開するには責任者御自らが敵に出向くべきだと思います。怒りの矛先を一人に向けさせれば、多少の時間は生まれ撤退もできるでしょう。本来戦いでトップを生贄にするなんてこと前例にありませんが.....まあ柔軟な思考を持っている貴方には理解してくれると思っています」

「お、おい馬鹿。この場での正解はトップ以外の全員を戦いに駆り出すことだぞ。そんなの私が認めない。いや、というかあちこちに設置されている監視カメラの存在を忘れたか?危機を乗り越えようと、さらに大きな壁がお前らを阻むぞ」

「ええ、ご承知のうえで死んでください」

「なっ.....」


パン!


花序が士純の足と肩を打ち動きを封じる


「ぐっ.....いたあああああああああああああああああああああ。痛いいいいいいいいいい。誰か助けろおおおおおおおおおおおおおお」


士純の絶叫が聞こえる中、眉一つ動かすことなく周りの者達は士純を放り投げた


「お前らああああああああああああああああ」

「さようなら、士純中将」


水面率いる反乱側VS士純率いる軍隊

水面の作戦により大打撃を喰らい、各指揮官の裏切りが決め手となり軍隊は敗北

水面たち反乱側の大勝利となって幕を閉じた

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