第22話 水の力

「ははははは、反乱側が次々に撤退していくぞ。もう勝ったも同然だな」


水面の撤退命令を聞き、士純中将は勝利を確信していた

全てが上手く言っているこの状況に機嫌を良くし、酒を飲んでいる

そんな酔っ払った状態の士純に黒入は進言した


「士純中将!今すぐに軍を引かせてください。包囲を固め持久戦に持ち込むべきです。これは罠です。今に私たちの軍は崩壊します」

「何を言ってるんだ。日本人たちの必死の顔を見ろ。演技に見えるか?奴らは負けたんだよ」

「なら言いましょう。あの不自然なくぼみを見てください。あのくぼみは川です。水が抜かれていますが、軍が今進軍している場所は川だった場所です」


黒入は必死に作戦の見直しを訴えたが、士純には聞く耳持たず

士純にしてみれば今まさに自軍の勝利が確定しているこの状況での黒入の訴えは出世の邪魔をしているとかしか思えなかった

黒入を見下すように、士純は正論をぶつけた


「だから何だ?」

「ああ、もう。結論を言いましょう。軍はあともう少しで川の水で溺れます」

「はは、面白い事を言うな、日本人は。良いか?俺がお前の意見を聞いている理由は俺が柔軟な思考を持っているからだ。他の上司にでも言ってみろ、最悪お前は処刑だ」

「それに、わが軍が負けることなんて絶対の絶対に無い!」


ドカン!


そう士純中佐がフラグを立てた瞬間、大きな爆発音が聞こえた

轟くように5発立てた


「な、何だ今の音は?」


士純中佐は驚き、前を向くが変わったところはない

軍はあっけにとられ立ち止まっているが、負傷している人は誰もいない


「何だ?敵側のこけおどしか?.....ん?何か聞こえる。何か近づく音がする.....」


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


大きな爆発音の数秒後、何かが近づいてくる音があたりをこだました

人か、物か、はたまた同じようなこけおどしか

爆発音から約15秒後、士純の視界には近づいてくる正体をはっきりと捉えていた


「うわああああああああ」

「水だあああああああああああああ」

「助けてえええええええええええええええええええええええ」


その正体は山から物凄い勢いで流れてきた水だった

兵たちの絶叫の後、そのくぼみは瞬く間に川と化していた

水面はこの兵たちが大きなくぼみに入る瞬間を狙っていたのだ

入った瞬間に、水面はボタンを押し山に作っていた簡易ダムを爆弾で破壊する

無理やりせき止めていたので水は溜まりにたまり、破壊することで一気に放出する

くぼみにいた兵や戦車その他もろもろ、全部荒れ狂う流水に流された


防御壁を作り軍隊を元川、くぼみの場所に留まらせたのも、撤退命令を出し敵を油断したのも、大掛かりな準備も全てが

このためにあった


「ぎゃあああああああああああああああああ」

「死にたくないー------」

「がっほ、がっほ。ごぼぼぼぼぼ」


兵たちは洪水に飲み込まれたがごとく、川の水に溺れた


「よし、この勝負。こちらの勝ちだ」

「ぐぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお、日本人がああああああああああああああああああ。許さん、許さんぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

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