第13話 2時間後

「火事だー--!」


宮の手によって付けられた火は水面が持ってきた酒によって勢いを増し

大炎上となっていた

収拾のつかない事態となり、焦りに焦った隊長は部下に吠えに吠えていたところであった


「おい、何で酒が入ってんだ!」

「そ、それが.....。置いていた奴がスパイだった模様で.....」

「スパイ?ならそいつを今ここに引っ張り出してこい」

「それが.....」

「それが、何だ?」

「まんまと逃げられてしまい.....」

「何やってんだ!この馬鹿、アホ、間抜け!」

「責めないでくださいよ。私たちみんなの責任じゃないですか!」

「いや違う。こうなったのはお前らの責任だ。事が終わった後は全て擦り付けてやるからな!」


この大ごとの事態になっても、喧嘩

鎮火作業に慎むことなく、口論に徹する

いや隊長だけではない

周りを見渡せば、鎮火作業に行うものは少数であり大多数が固まっている

彼らにとって、これほどまでの大規模な不測の事態は初めてであり対処しきれなかっ


本来10分後にスラムに向かう予定のはずだったが、いるはずもない外側からの敵に注意を張る始末

これから火事以上の大事な反乱になるとも知らずに

水面・宮、応援に駆け付けた日本独立軍が錯乱しまくる

何万といる大軍が少数の小手先に翻弄される

刻々と時間を敵側へ与えてしまった


一方、スラム側では

警察がトラックの方へ意識を集中してしまい、なんと3時間も事態の鎮静化に費やしてしまったのだ

その間、刻々とスラム側では反乱の数を増やしまくり

約束の2時間が越えた頃には約束の場所に大群衆が集まっていた

それもスラム中のほとんどの家庭を味方につけたので、上空から見れば蟻が群がる光景に等しかった


「見てくださいよ、この数!反乱の企ての参加を促して、なんとかスラムのほとんどを説得に成功しましたよ。ええと、」

「俺の名前は健二だ」

「ああ健二さんという名前でしたか。で、この後何をするんですか?健二さん?」


予想以上に集まっており、その光景に健二はめまいを起こしそうになっていたが

本来の目的を思い出し、我に返った


「あ、ああ.....今からあのトラックに積んである武器をこっそりと手に取る。そして、警察どもを一斉射撃すれば.....」


そう一時置いた後、自信ありげに健二はこう言った


「俺たちの勝利だ」


目前まで勝利が近づいていることにどよめく日本人だったが

そのうちの一人が冷静なおもむきで健二にこう言った


「しかし、警察に見つからずというのは難しいのでは。現にトラックの方へ俺たち以上の何万もの警察どもがいるんですよ。普通にきずかれるのでは」


未来の幸福にひたむき始めていた日本人たちが、それを聞くやまた暗い顔をしたが

健二は臆することなく、堂々と誇らしげ気に回答した


「そこは大丈夫だ。今、実は俺たち日本独立軍の何千人もの部員が警察の動きをかく乱してる。だから絶対の絶対に気付かれることはない。だから安心して動け」


もちろん何千人もの部員というのは嘘である

実際は数名しかいない

だが時には嘘をついて安心させることが重要であり、長年組織にいた経験から健二は安心させるための嘘をついた

が、無知で馬鹿なスラムの日本人は真に受け、再び安堵の表情を浮かべた

彼らには芯というものが存在しなく、状況次第ではすぐにコロコロと心変わりする輩が多い


しかし今となっては、その小者ぶりに感謝する健二であった


「さて.....ふんぞり返った売国奴たちの鼻をへし折ってやりますか」

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