第8話 スラム

ドンドン


「すみません、ちょっといいですか?」


周りにバレない程度に真波 健二がドアを小さくたたき、小声程度にドアの向こうの住民を読んでいる

最初こそ無視されていたが、あまりにもしつこすぎるため住人が出てきた


「すいません、少しお話良いですか?」


めんどくさそうな顔をしていたが、訪ねてきた人の身なりを見る代わり打って変わってその住人は下手に出た


「ヒッ、まだ税金払い終えてなかったですか?すみません、私の不注意ばかりに......どうかぶたないでください」


健二の服装が軍服だったため、警察勘違いしたのだろう

その態度に慌ててつつあったが、健二はにこやかに迎えた


「大丈夫です。私は政府の者じゃありません」

「では、どなたでしょうか?」

「日本独立軍です」

「へっ......あのテロ組織の......。嫌です、厄介を巻き込まないでください」

「あ、あの。お話だけでも」

「早く家から出ていってください!」

(難しいな......)


そのあまりの不対応ぶりに健二は困り果てていた


(確かリーダーは何て言ってたっけ?)


その時、健二は昨日の作戦会議を思い出していた


「えーと、一応個人個人で説得を行ってもらうが。健二と弥生に関してはペアで動いてもらいたい」

「何でだ?」

「理由は今から話す。最初は健二は丁寧な口調で説得して欲しい。そこで相手が了承してくれたら別に良いが。もし、相手がはっきりと拒絶の態度を示した場合、健二は今度はとても強めの態度で向かってくれ」

「でも、それだと嫌な印象を持たれるんじゃ......?」

「まだ話は終わってない。その時、弥生の出番だ。怖そうな健二とは対照的に弥生は優しそうな感じで相手を庇ってくれ。内容も反乱の話題から中国への怒りへと違和感ないように変えてくれ」

「ああ、弥生を入れるのはそういうことね。っていうか、それだと俺が後から嫌な目で見られるだろ」

「いや、そこは、まあ......後で僕が説明するから」


警察の自白させるのでよく出てくる方法

恐怖からの優しいで大抵の人間は堕ちる


(確か、ここで弥生が出てくるんだったっけか)


そんなやり取りを思い出した健二は、今まで丁寧な態度を一変させ怖い強気な態度で臨んだ


「ああ?てめえ、こっちが下手に出ていれば舐めた態度を取りやがって。殺されたいか?ああ?」

「す、すみません。舐めたつもりは無かったですか、すみません、すみません......」


その迫真の演技にすっかりとウサギのように怯えている


「な、何をしてるんですか。健二さん。駄目です、こんなことしちゃ」


その嫌な空気が流れていた所に弥生が入ってきた

弥生は入るや、仲間の健二の肩を持つわけではなく、怯えている相方を援護した


「大丈夫ですか?この人少々気が荒くて......」


そうなだめると、彼女は相手の頭を撫でた

もちろん演技ではあるが、かの上はまんざらでもない様子ではあった


「毎日辛いですよね......」

「はい......」

「分かります、今日も食料を取られて、そして重労働に奔走し、そして収穫した物のほとんどを税収者に取られる日々」

「ぐっ......」

「でも今こそ戦う時です。この辛い状況を変えたいと思わないんですか?」

「そ、それは......」

「立ち上がりましょう、私たちと。今こそ日本を再興するときです」

「!」


完全に手玉に取られている

極悪なテロ組織だということはすっかりと棚に上げ

さっきまでの反感の態度を示していたが、すっかりと懐柔し決心した


「分かりました。今の状況を変えるために立ち上がります」

「!、ありがとうございます」


こうして、心情を手玉に取った方法で日本独立軍は1人協力者を得ることが出来たのである

後は、連鎖的に仲間を増やしていくだけである

危うい所もなく1人目の説得は成功に終わったのだ



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