〈陽のあたる一家〉

 昔々あるところに、老夫婦の営む着物屋がありました。着物屋はとても繁盛しており、老夫婦が生活を送るのに困ることはありません。

 老夫婦には、一人息子がいました。

 けれどもその一人息子は、老夫婦がどれだけ会いたいと願って手紙を送っても、人づてに頼んでも、息子の暮らす宿を訪ねても、息子は一向に会ってくれません。

 あるとき、老夫婦の営む着物屋が火事になりました。

 火事の知らせを聞いた一人息子は、急に両親のことが心配になりました。

 息子は慌ててろくな支度もせず、着の身着のまま両親のいる着物屋へと帰りましたが、実はこの火事は、老夫婦自らが店に火をつけたものだったのです。


 燃え盛る炎に照らされた一人息子の顔を前に、

老夫婦は涙を流して喜ぶのでした。



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