第一章.ギルドと、次期領主と、貧困

第3話

騒がしさが止むことのなく、何か分からないものの死体がそこら中に散乱する森。空には鳥のような翼を生やした蛇みたいな何か等が沢山いる。俺はその中の一匹の翼に狙いを定めた。




風の針ウインドニードル!」




その声と同時に目に見えぬ無数の風の針がその魔物、スカイサーペントの翼を貫き、スカイサーペントは落ちていった。俺達は落ちた方向へと向かった。




「孝君もうマスターするなんて凄いよ!」


「いや、それは桜音の教え方が上手いからだよ」


「もう!///」




 今のを糞脳筋に聞かれたら殺しに来るだろうな、と俺は思った。俺と桜音はイアン達と別れた後この森から出る為、移動を続けていた。




「わぁ~‼身の部分は食べられる位の傷で済んだね」


「うん。取り敢えず中級解毒かけてもらって良い?」


「分かった!スゥ...【聖なる神の瞬き 我が元に力よ集まりて 穢れし毒を今此処に解き放て 中級解毒スーパーデトキシフィ!】」




スカイサーペントから毒が消え、その身は白くなっていた。俺は包丁を取り出しスカイサーペントの鱗を剥ぎ、三枚下ろしにした後、ぶつ切りし、山菜と共に鍋へ入れ蓋を閉じた。暫く経ち蓋を開けると中からとても良い匂いが解き放たれ、身は食べ頃の色に変わっていた。俺は桜音とその身を食べてみると、茹で鶏のような味と食感が口へ入ってきた。凄くポン酢が欲しい。こんなにポン酢が欲しくなったことは今までなかった。だがここは異世界だ。ポン酢が手に入るわけ...あった。何もないところからポン酢が降ってきた。それもよくスーパーで見かけるやつだった。多分無意識に想造魔法が働いたのだろう。取り敢えず舐めてみたが、ポン酢だ。鍋に入れた。包丁とか鍋とか作れたが、まさかポン酢まで...それは置いといて、まずは無意識に発動する癖を直そう。そう思った。鍋を食べていると桜音が話しかけてきた。




「孝君、本当に送って貰わなくて良かった?」


「大丈夫だよ。むしろこっちの方が安全だしね」




イアン達に送ってもらっても良かったが、時間が掛かるのと、一般人に見られる可能性を考えるとデメリットだらけだ。イアン達は俺達二人の輸送係の為、遅くなってしまうと裏で繋がってると考える奴らが出てくる可能性がある。それと見つかってしまうと問題になるのは奴隷商だ。この世界は奴隷文化がある。倒せば問題ないが、吸魔石と拘束石というものが厄介だ。吸魔石は魔力を吸うらしく、力の制限や気絶、酷いと死に至るらしい。拘束石はどんなものも動きを封じるチートアイテムらしい。どちらも解除は破壊、又は使用者の解除呪文らしい。それなら歩く方が安全だ。幸い、桜音も充分チートステータスの為、倒すのは以外に簡単らしい。




 数日経った。俺達は魔物を倒して成長しながらどんどん進んで行き、ついに森から抜けられた。森から抜けるとそこにはバス三台ほどの幅の道。その周りに沢山の田畑と小さな川、そして少し遠くからは人々の声も聞こえる。それにしても長かったな。街についたらまず水浴びしたい。汚れや臭いは魔法で消して置けたが、実際に水浴びするのとは大きく違う。取り敢えず俺達は道に沿って声の方へ進んだ。




 街に着くとちょっとのことじゃ崩せないような高い壁と勇姿を抱く何人もの兵士はいる。壁は両側へ7㎞ちょいだろうか。門から20㎞は縦に奥へ続いている。門には〔!ようこそ、日の出の街・ケルゾニアへ!〕と書いてある看板があった。遂に異世界に来たという感覚を味わった。門の前に列がある。どうやら街に入るには検問に並ぶらしい。取り敢えず俺達はその列へ並んだ。それにしても異世界は凄いな。街の中では子供達が水を指から出したりしているし。そんなことを思っていると自分達の番が来た。すると、門番は手を差し出してきた。何を要求してるのか分からない




「ようこそ。身分証を拝見しても?」




 へ?身分証??どうしよう、異世界じゃ元の身分証使えないし、取り敢えずないと言おう。




「すみません。僕たち身分証なくて...」


「ほう。見た感じ隷紋もないし、この水晶で測定だけしても?」


「分かりました」


「じゃあここに手をかざして」




 言われた通りに俺は手をかざした。




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〔名前〕田中 孝




〔職業〕格闘家




〔素質〕lv70 ATK99 DFC70 SPD87 MP100




〔能力〕肉体強化:Lv10 格闘:Lv10 肉体付与付与 (雷):lv10




〔技能〕 ラッシュアタック




〔称号〕 雷神の加護   


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「その見た目で格闘家か...まぁあり得るか。通ってよ~し」


「ありがとうございます」


「あぁ!それと、身分証の発行なら、住むなら領主館で旅ならギルドへ行けば良いぞ」




 気の良い門番っだった為、なんとか抜けれた。能力情報はちゃんと化けてたな。でも今度から籠手は持っていた方が良さそうだ。 無事に桜音も検問を抜け、俺達は街へ入った。そこには洋風でありながらも少し現代チックにも見える建造物が沢山あった。


「なんか街の喫茶店がいっぱいあるみたいな感じだな。けど、やっぱり俺らの日本とかと全然違う。魔法が溢れ、服は似ている、そして古きを感じれるのだから」


「ちょっと意味わかんない」


「うぅ...」


「と、取り敢えずギルド行こ?ね」


 シンプルに悲しい。でも、自分で考えてみても意味不明だな。取り敢えずそんなことは置いといて、俺達はギルドに向かう。道中桜音にギルドについて聞かれるので答える。ちなみに俺は新しい魔法で世界を渡るネットワーク的なものを作った。某検索アプリは使えはするが、投稿などはできない。一方的に見るだけだ。因みに異世界の基本的なことを検索するのは可能だ。それによると、ギルドはいくつかあるらしい。基本的ギルドは二つで、〔冒険者組合ギルド〕・〔商業組合〕だ。冒険者組合はクエストをこなすのが基本で、主に狩りが多い。商業組合は商品の登録や自分の店、商人のクラスを上げる時などに使う因みに、俺達は冒険者ギルドに向かっている。




  そんなことを桜音に説明しているとギルドにつく。ドアを開けると酒の匂いが昼間から充満...してない。ちらほら飲んでいる人はいるが、よくみるラノベとは全然違う。町の役所的な感じだ。そのまま俺達は真っ直ぐと受付に向かうと、そこには洋風美人の受付が立っていた。髪色は赤に近いピンクで、ショートボブだ。ボーッとする。正直、顔は可愛いのレベルを越えている。痛い、ちょ、桜音さん待っ、ごめんなさい、ポコポコしないで、あなたが一番だから。...なんとか伝わったようだ。受付のほうを向くと受付さんは困っている。




「あの~...ご用件は?」


「あ、すみません。登録をしたいのですが...」


「畏まりました。では登録用紙に記述してください」




 言われた通りに登録用紙に書いていく。職業は格闘家にしたが、出身地?どう書けば良いのだろう。脳内で日本に近い場所を探す。...あった。ヒマル。明治の日本と現代が混ざったような国。取り敢えずヒマルに両方しておく。




「出来ましたら、この石板に血を一滴」


「はい」




 言われてそこにあった針で指を少し刺し、血を垂れだした。その血を石板に垂らすと能力情報の称号に{冒険者ギルド員:F級}があった。




「これで登録は完成です。規定で年に最低二回クエストを受けてもらいますのでご了承ください」




 無事に俺達は冒険者になった。それにしても年二回だけ受ければ良いとは、冒険者業が盛んということなのか?とりあえず二つクエストを受けよう。俺達はクエストボード前に行った。そこには沢山のクエストやそれに関する絵の書かれた紙が貼られていて、中にはもとの世界のファンタジー系の物に良く出る、ワイバーンやセイレーンの討伐などがあった。だが、F級の冒険者がやれるクエストは少ないようだ。




「田中君、あれ!」


「ん?…ってあれ…」




 桜音が何を見つけたのだろうと思ったら、見たことのあるレベルじゃないクエストが多くあった。取り敢えず俺達はその紙を全て持って受付へ向かった。受付に着いて桜音が受付の人に確認しようとする。




「すみません、確認したいんですが─」


「退けやガキ!」


「痛っ」




 桜音が冒険者らしき男に急に突き飛ばされて転んだ。目の前で起きたことに一瞬理解が遅くなった。受付に着いて桜音が確認しようとした次の瞬間に桜音が転ばされたのか。理解が追い付いた時まず浮かんだ感情は『怒り』だった。




「は?」




 俺はその男に詰め寄った。




「あ?邪魔だから退けや」


「…てめぇはいくつだ?」


「言うかボ─」




 次の瞬間、全体に何か分からない恐怖が襲った。それはまるで、神や悪魔に睨まれるような感覚だ。俺にはその恐怖がない。怒りの中で冷静に理解する。その恐怖は無意識にに俺が出している。目の前の男は絶望を抱いているのだろう。顔から色々な液が出ており、股からは異臭がする。脱糞と失禁を同時にしたようだ。だが、関係ない。俺は男に向かって言った。




「てめぇは……いくつだ…?」


「ヒイィッ!……わ、わたくしはにに、25になりま、ああ、すぅ……」


「てめぇは、年齢が下ならなんでもして良いと?」


「! い、いえ!違いますぅ…!年下には優しく接するべきでしたあぁぁぁ…」


「あ"ぁ"?じゃあてめぇは年上とかにはしても良いということだな?なら俺はお前に何してもOKだな?」


「ヒエッ!…」




 俺はこいつが突き飛ばしたのが桜音じゃなかったとしても、こいつを潰そうとしてるだろう。クズは治らないことが多いのは、糞脳筋で知っている。だからこういう奴は出来るだけ消した方が良い。俺は拳を握りしめ、殴りかかろうとする。




「孝君、ストップ!!私、特に怪我もしてないし……ね?」


「でも……」


「はい!もう終わり!」




 桜音は優しい。こんなクズ…って、あれ?俺何しようとしてたんだ…?今までこんなに感情出さないようにしてたのに………俺も…変わってきてるのか…。




「良かったな。でも、次は……ないからな?」




 俺は男から離れた。男の顔は、一度死んだような顔だった。




「すみません、確認したいのですが」


「あ……はい…」


「これって、狩った証明があれば良いですか?」




 俺は取ってきたクエストの紙を置いた。そこには、駆け出しの冒険者が苦労して倒すモンスターの討伐依頼だった。




「はい。何のモンスターの部位か分かるものでしたら…でも、結構苦労するモンスター達のですよ?」


「すみませんが、今からここに出しますね」


「え…」




 俺はカモフラージュ用の袋から出すように、亜空間からモンスターの部位をカウンターに出した。周りの冒険者達は驚いてる。そんなに凄くないだろ。




「…っと、これで全部じゃないのですが…」


「……」


「あれ?お姉さん?」


「……」


「すみませーん…」


「…ハッ!?申し訳ありません。鑑定しますね。空いてる人来て~!」




 あれ?やばい量だったか?ラノベ程じゃない気がするが……

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