44話 フェイクは真実に勝てない

X X X


 僕たちは馬に乗って、巨人居住地区へと旅立った。地図を確認しながら、茂みへと近づくにつれ、不気味な雰囲気があたりを包み込む。葉っぱや、石、木々など、僕たち人間が住むところと比べれば3〜4倍ほど大きく、血の匂いがする。


 不気味を雰囲気を感じ取った僕らは、馬から降りて歩むことに。


 しばし、最大限音を立てない事を意識しながら進んでいくと、白い何かが地面に転がっていた。


「人の骨……」

「……エリック、私のところにくっついて」

「ああ……」


 僕とソフィアは剣を持っているが、大きな巨人相手に果たして太刀打ちできるのかは甚だ疑問だ。巨人に関しては、情報があまりにも乏しく、どこが弱点なのか、どこが強いのかといった特徴もわからない。


 ただ体が大きいという情報だけだと、ネフィリムという名の巨人がどのような存在なのか、その全体像は掴めない。


 霞がかかった茂みをひたすら歩いていると、変な音が聞こえる。


「ぐうう……」




「っ!」

「エリック!誰かが来てるぞ!」


 と、僕らは早速、大木に行き、身を隠す。


「ぐうう……」


 僕らはそっと音のする方を覗き込んだ。


 すると、




 そこには巨人がいた。




 5Mを悠に超える身長、赤い髪、そして、両手足の指が12本ずつ。あれは、2足歩行をしていたが、明らかに人間ではない。


 あれは……


 化け物だ。


 怖い……


 あんなの、日本で見たことがない。


 気がつくと、僕の足が震えていた。僕は平和な日本で生まれ育ち、人間に似た存在を殺すという行為をしたこともなければ見たこともない。


 なので、あのネフィリムと戦わなければならないかと考えると、腰が抜けてきて、


 尻餅をついてしまった。


 その音を聞きつけたネフィリムは、




「ぐうう……ぐああああああああああああああ!!!!!」


 僕たちに襲いかかる。


「っ!」

 

 ソフィアは素早く剣を抜いて、ネフィリムの攻撃を防ぐ。


 かーん!!


 ソフィアの剣とネフィリムの巨大な剣がぶつかり合う音は、僕の心臓にまで届いていた。


「これは……強い!」


 と、ソフィアはネフィリムの剣を押してから退け、攻撃を仕掛ける。二人は目で追うことのできないほどのスピードで体を動かし、剣を交えて戦う。


 その姿を見て呆気に取られていると、やがて、ソフィアはネフィリムの足を切った。


「グアアアアアア!」


 と、轟音を轟かせるネフィリムは倒れ込んだ。ソフィアは無駄のない動きで、巨人の上に乗っかり頭を斬るべく、剣を振るが、


「っ!手で剣を止めるなんて……ものすごい力だ……エリック!」

「う、うん!」

「剣を抜いて、このネフィリムの頭を思いっきり刺して!」


 切羽詰まった表情でそう訴えるソフィア。だが、僕は動けなかった。腰は震えていて、立ち上がることさえもままならない。


「エリック!ルビアと仲直りするつもりだろ!?」


 ルビア……彼女の悲しむ顔……もう見たくない。それに、ここで僕が傍観すると、何よりソフィアが危ない。僕の愛する女の子が危ない目にあうのは死んでもごめんだ!


「ああ、やる!」


 と、言ってから僕は剣を抜き、闘志を燃やしながらネフィリムに向かって走る。


「はあああああああ!!!!」


 

「ぐえええええええええええええええ!!」



 僕の剣を食らったネフィリムは断末魔の叫びを上げて、息を引き取る。一つ不思議なところはネフィリムの歯は魚類のような二重歯列構造であること。


 僕は息を弾ませ、剣を抜いて一振りした後、それをしまう。それから、ソフィアに向かって礼を言うために口を開いた。


「ごめん、手間かけさせちゃって」

「ううん。エリックは素人だ。ちゃんとネフィリムを仕留めただけでも偉い」

「ルビアと仲直りしたい気持ちと、僕のソフィアちゃんを守りたい気持ちがあったから」

「エリック……」

「……行こう。目的地はもっと奥にあるから急がないと!」

「ああ!」


 




「ルビア姫殿下……やはりここはあまりにも危険です。ご覧のように、最強剣士と言われるソフィア姫殿下も一人では仕留められませんでした。もし、私たちが狙われたら……」

「……いや、帰らないわ。あの二人を追う」

「はあ……」





X X X


 セーラとマンダネはブリンケンさんの邸宅の地下研究室でをやっている。


「(セーラ)それにしてもすごいですね……手で直接書く必要もなく、押すだけで、あっという間に大量のチラシが出来上がるなんて」

「(マンダネ)ですね。このやり方を発明されたブリンケンさんはとても聡明な方だと思います」

「(セーラ)名付けてブリンケン活版印刷!これが世の中に知れ渡れば、出版業界に衝撃が走るでしょ」

「(マンダネ)ふふ、そうですね。でも今は、この大量のチラシをヘネシス王国の方々に配布することに集中しましょう!」

「はい!」

「セーラはとてもいい子ですね!」

「マンダネ様こそ、ブリンケンさんと話し合って、こんな方法を思いつくなんて、とても賢い方だと思います」

「エリックを助けたいという気持ちがあるから、思いつくことができましたよ!あとでいっぱいエリックに甘えましょうね!」

「はい!わかりました!そのためにまずは、ヘネシス王国を乗っ取ろうとする、悪い人たちの情報を発信しまくらないと!」

「セーラ、こっちおいで」

「マンダネ姫様……」


 二人は綺麗好きである。だけど、彼女らはインクが服に付着していることも知らずに、二人はお互いを抱きしめあった。


「フェイクは真実に勝てません。だからエリックとソフィアを信じましょう」

「はい……明るい未来が待っていますから」




追記



 ソフィアが戦う姿、カッコ良すぎますね。

 

 セーラとマンダネコンビも面白そうなことやってますねw

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