27話 エリックとセーラを覗き込むマンダネ
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マンダネはソフィアの時と同じく、王宮の一番奥にある部屋を貸してくれた。ソフィアとセーラは別に3人一部屋でも構わないと言ったが、マンダネが固く拒否し、結局、僕は一人で寝ることに。しかし、寝る時以外は基本出入り自由なので、二人は渋々折れて条件を受け入れた。まあ、ここにおいて一番権力を持っているのはマンダネだしな。彼女の意見を尊重してあげよう。
と、いうわけで、突然だが、僕の部屋のベッドには二人の男女がいて、ある行為に及んでいる。
「はあ……はあ……やばい……もう動けないや」
「エリック様……こんなにヘトヘトになるまであんなに激しくされるなんて……」
「っ!あああ!痛い!そこ痛い!」
「ご、ごめんなさい!もうちょっと優しくしますね」
「だ、大丈夫だよ。セーラちゃんとても上手だから……このままでお願い。よし!この調子で明日も頑張るぞ!」
「エリック様ったら、とても元気ですね……ふふっ。でも、あまり無理はなさらないでくださいね」
「ああっ!や、やっぱりちょっと弱めに頼む……」
これは決していかがわしいアレではない。健全な会話である。昨夜、マンダネに農作業を手伝うと大口叩いたのだ。なので、僕はエルニア王国の人たちと畑を耕した。日本だと、広大な畑を耕すために主にトラクターが使用され、ガソリンさえあれば、簡単に作業を行うことができる。
だが、ここは異世界。もちろんそんな先端技術の賜物なんか存在しておらず、あるのは牛と人。なので僕はスコップ・ショベルや土ならしレーキといった道具使ってひたすら肉体労働をした。昔のエリックは贅沢の限りを尽くしていた王子。もちろん運動なんかするはずもなく(いい体と見た目ではあるが)基礎体力は酷いレベルだった。
なので、くたびれた僕の体をセーラがマッサージでほぐしているところなのだ。セーラの指が僕の肩と腰と太ももなどに触れ、今日の疲れが吹き飛ぶような気分だ。でも、これ、明日起きたら絶対筋肉痛やばいやつだ……
「それにしても、エリック様は王子様であられるのに、マンダネ姫と仲直りするために直接農作業をされるなんて……」
マンダネside
「それにしても、エリック様は王子様であられるのに、マンダネ姫と仲直りするために直接農作業をされるなんて……とてもロマンチックで素晴らしいと思います」
「昔、酷いことを言ってマンダネを苦しめた罰だよ。これくらはしないと……あ!痛い!」
「す、すみません!」
「いいよ。続けて」
「はい!」
イラス王国では農業は平民のやる下賎な仕事だという認識がまかり通っているのですが、エリックは今日、私の国の民たちと一緒に農作業をしました。汗水流しながら一生懸命頑張る彼の姿に、老若男女問わず、みんな彼を可愛がってあげました。ラケルちゃんの父にあたる農業協同組合の長であるイサクさんもエリックのことをとても気に入っていて、一緒に食事をする関係にまでなったのです。
納得がいかなかった私は、ソフィアに数えきれないほどの質問を投げかけました。エリックに弱みでも握られたのか、催眠にでもかけられたのか、あれは本当のエリックなのか、などなど……
けれど、ソフィアはまるで恋する乙女のように顔を赤らめて「私の全てはエリックのものだ。これが私の自由意志」だと言っているだけでした。あれは脅迫を受けた時の顔ではない。読んで字のごとく「恋に落ちた女」。
あんなのは本当の彼ではありません!私の知っているエリックは、傲慢で鼻持ちならない性格の持ち主なのです!一国の姫たる私に奴隷メイドになれと脅迫してきた非常識極まりない男!
でも、
あのセーラというメイドがエリックに向ける視線は、とても色っぽくて切なくて、下手をすれば、私まで引き寄せられてしまいそうになるほど
「ソフィアちゃんはどこ行った?」
「ここの王様と王妃様と話し合い中です」
「……申し訳ない。なんだか二人を巻き込んでしまったみたいで」
「とんでもございません!ソフィア姫様も私も……エリック様の力になりたいから、ついてきました!」
「ふふ……やっぱりセーラちゃんが僕のメイドでよかった!ありがとう!」
「エリック様……」
「好きだよ」
「私も、エリック様が大好きです……私はエリック様の所有物です……どうか、この婢女を心行くまでお使いください……それが私にとっての幸せ……」
「ありがとう。セーラちゃんは僕を支えてくれる大切な存在だ。だから、ソフィアちゃんの手助けと僕の世話を引き続きお願い」
「命懸けでやらせていただきます!」
「こっちおいで。セーラちゃん」
「はい!」
なななななななななななんという甘々な会話!こんなの、こんなのあり得ません!こんな優しい会話のできる王族の男は私の知る限り一人もいませんから!
エリックはいつしか仰向けになり、セーラというメイドに向かってちょいちょいと手招くと、セーラというメイドはとても嬉しそうな表情で彼に飛び込んてきました!
エリックは、そんなメイドを犯すことなく、優しく抱きしめて、頭を優しく撫でてあげています。自分の性的欲求を満たすためではなく、あくまで相手を想う気持ちがこもっている笑顔。
「……こんなのあり得ません……嘘に決まってます!農作業の件もきっと三日坊主で終わるに違いありません!」
「あれ?マンダネ?ドアの隙間から中を覗き込んで何している?」
「きゃっ!そ、ソフィア!?」
「顔がすごく赤いけど、どうした?調子でも悪いのか?」
「わ、私は大丈夫です!大丈夫だから!」
「え?」
気がつけば私は逃げていました。別に後ろめたいことは何一つないはずなのに。エリックを監視するというちゃんとした目的があるのに、なぜ私は逃げているんでしょう。
「あ!ソフィアちゃん!おかえり!」
「ただいま……」
「ソフィアちゃんもおいで!」
「姫様!右が空いてますよ!いっぱいエリック様に可愛がっていただきましょう……ふふ」
「う、うん……」
「ソフィアちゃん。どんな感じだった?」
「……やっぱり信じてもらえなかった。だけど、手応えはあった。農作業をやるエリックの姿を見た陛下は危害を加えたりはしないとおっしゃったから、しばらくはここに滞在できそうだ。その間に色々話してみる」
「それはよかった。ありがとう。本当に君がいてくれて助かる」
「エリック……」
……エリック、まだ農作業は始まったばかりです。あなたの根性、見定めてあげましょう。
きっと、昔みたいに、すぐ本性を現して私を傷つける言葉をいっぱい吐くに決まっています!
追記
マンダネちゃんもなかなか可愛いですねw
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