第30話 首都観光-マルセル商会-
ブラックス商会の店を一通り見て、最後に一番スペースをとっているA区画の店の前にやってくる。
マルセル商会、この首都の名前であり、ここ最高責任者であり、マルセルギルドマスターの店。
ちょうど、この店にナイルさんからのお使いもあったので、ちょうどいいなと思い、店の中に入る。
中は白くきれいにされており、ここの売りである魔道具が陳列されていた。
その中でも真ん中のスペースだけが開けられており、そこにはこのように書いてあった。
冷蔵庫、コンロ、近日公開予定。
お使いの内容はこの店にアイテムリストの中にある冷蔵庫とコンロを届けることだった。
こんな予告を目立つ位置においてあるのはかなり期待されているだろう。
とにかく、店員に声をかける。
「すいません。」
「いらっしゃいませ、何か御用でしょうか?」
「ニールさんから頼まれたものをお持ちしたんですが。」
「もしかして、カサネさんでしょうか。前日に連絡を受けております。今、案内いたします。」
様子を見るにここの責任者の方だったのかすぐに奥の部屋に通された。
「では、この部屋でギルドマスターがいらっしゃいます。マスター、お客様をお連れしました。」
「んー。入ってもらってくれ。」
「かしこまりました。では、お入りください。」
店員さんがドアを開けてくれて、俺達は部屋の中に入る。
そこには書類と格闘している一人の男がいた。
「ああ、これで終わりだから、そこに座って、待っていてくれ。」
「はい、では失礼します。」
俺たちはソファに腰をおろし、待つことにした。
その間に部屋の様子を見てみるとギルドマスターという割に随分と質素な印象を受ける。
シンプルに執務に使う机、木目の模様は映えるテーブル、観葉植物。
高級というと、この沈むほどの感触のソファくらいだろう。
「ふう、終わった終わった。」
ギルドマスターがペンを置き、立ち上がると肩がこったのか腕を回して、首をコキリと鳴らしながら、俺達の対面へと座る。
「私はこのマルセルを仕切らせてもらっているギルドマスターのジネス。グランバニアから遠路はるばるようこそ、カサネ君。で、例のものはあるのかな?」
「はい、こちらですね。」
ナイルさんの話によると俺がアイテムBOXのスキルを持っていると話しているというので、そのまま、冷蔵庫とコンロを出す。
「おお、これが冷蔵庫とコンロか」
「はい、これでもまだ試作品ですが。」
「試作品ということは後何があるんだい?」
「冷蔵庫だと冷凍専用のものを追加でつくるそうです。コンロは色々な用途で使えるものを作るそうです。後はどれだけ、価格を抑えて作れるのかと実験中だそうです。」
「そうか、これで終わりというわけではないんだな。今後が楽しみだ。とは思うが、開発しているのがグランバニアだからな、届くまでが長いなあ。」
「そうですね。」
本当は俺のアイテムリストならすぐに出せるんだが、ばらすのはリンクしている人のみにしているから教えるワケにはいかないな。
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