第11話 ◆剣術講義後に帰った教室には
ニールは呆然としたシールをその場に残し、私に近付き、頭を下げる。
「失礼いたしました、ミシェル様。」
「そうね、炎剣の一撃にはヒヤヒヤしましたわよ。」
「申し訳ありません。あの延焼具合なら、こちらが剣を当てれば崩れると確信しておりましたので。」
「え、剣を当てたの?」
「はい、相手の剣の中程に当てた結果があのようになりました。」
「あなた、随分できるものが多いのね。」
「執事ですから。」
「その言葉だけで片づけられるワケないでしょう。」
そんな会話をしているとミラさんがこちらに駆けてきた。
「ニールさん、お強いんですね。」
「はい、普段からお嬢様の護衛も兼ねられるようにしておりますので。」
「でも、あれはヒドイと思います。あなたの境遇もわかりますけど、やりすぎだと思います。」
「境遇?なんのことでしょう。やりすぎと言われてもさきほどの一撃が決まれば、私がどうなっていたかわかりませんよ?」
「ん!?でもでも。」
何かを確信しての言葉だったのでしょうが、ニールがなんの反応もしないので、言葉が出ないようだったので、ここで口を出すことにした。
「失礼します、ミラさん。あなたは家のニールが怪我をした方がいいとおっしゃいますの?」
「そ、そんなことはありません!」
「そうなのですか?さきほどの試合では危険が迫っていたのに誰もとめようとしないのでてっきりその気だと思いましたのに。」
「そ、それはニーさんが挑発するから・・・。」
「挑発ごときで怒りに任せる騎士など害悪でしかありませんわ。」
「そんなヒドイことを言わないでください!」
「どちらがヒドイというのかしらね。」
その時、チャイムがなった。
「ちょうどいいですわね、先生。帰ってもよろしいかしら?」
「あ、ああ。休憩に入っていいぞ。」
「では、いきましょうか、ニール。」
「はい、お嬢様。」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!」
後ろから聞こえる声を無視して、ニールが木剣を元の位置に戻した後、私たちは先に教室に戻ることにした。
先に教室に戻った私達はミラさんの座っていた席に切り裂かれた教科書があることに気づいた。
「何あれ?」
「嫌がらせでしょうか?誰がやったにせよ、今、この状態をみられるのはまずいですね。」
「あらぬ疑いをかけられる可能性があるわね。」
すると、教室のドアが開き、ミラさんが現れる。
「またなんですか、いい加減にしてください!教科書を台無しにするなんてヒドイです。」
なんて、タイミング!よく見るとミラさんは息を切らせている。意図して走って帰ってきたのか。
そして、ミラさん後ろからカイル様が出てくる。
「どうした、ミラ!」
「あ、カイル様。私の教科書が!」
「なんだと、教科書がどうしたんだ?」
「私のいた机の上に切り裂かれた教科書が・・・ってない!?」
私もその声に机を見ると切れた紙片すら残っていなかった。
「ミラ、何もないようだけど?」
「そ、そんなはずは・・・。」
動揺しているミラさんにニールが声をかける。
「何もないようですが、探しましょうか?」
「あ、いえ、勘違いだったかもしれません。」
「まあ、またということは何か勘違いするようなことを思いだしてしまって、勘違いしたのかもしれませんね。」
「そうですね。」
「そろそろ、皆さんも帰ってくるようですし、席についた方がよろしいのではないですか。」
「はい。」
そこからはおとなしく、席につくミラさん。
私たちも席につき、小声でニールと離す。
「あなた何かした?」
「少しお片付けをしただけですよ。」
ニールはそういって、懐からチラっと切り裂かれた教科書を出す。
それは制服のポケットには収まらない大きさ。なのに収まっている。
「どういうこと?」
「そこは執事ということで納得してください。」
「それは無理があるんじゃない?」
「ふふ」
「でも、助かったわ、ありがとうニール。」
「はい、お嬢様。」
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