第10話 ◆ニールvsシール
「どうして、私が勝負を?」
「今朝は油断したが、今回は剣だ。勝たせてもらう。」
その言葉に周りの生徒はシールが負けたとひそひそと話しだした。
この空気はまずいと先生が口を出す。
「ニール君が実力者のようなら、ぜひともやってもらおうと思う、どうかな?」
「ミシェル様がよろしければ。」
ここでシールにいい顔をされると益々ミラさんの思い通りになるかもしれない。なら、ニールにやってもらおうか。
「許可します。」
「かしこまりました。」
「やる気になったか、先生、審判よろしく。」
お互いに距離をとり、木剣を構える。
「3本勝負で、2本先取で勝ちだ、では、はじめ!」
合図と同時にシールが飛び出し、上段から振りおろす。
が、ニールはそれを横に回避。
シールは振り下ろした剣を強引に斜め上に振り、逆袈裟切りをニールに放つ。
これもニールは上半身を後ろに傾け、回避。
強引に剣を振ったために、バランスを崩しているシールはニールに背中を向けている状態になっている。
が、ニールは攻撃せずにその場からバックステップして距離を取る。
バランスをたて直し、ニールに向きなおしたシールは怒りをにじませた声を上げる。
「なんのマネだ?」
「いえ、騎士の剣というものをもっと見ようかと思いまして。」
「バカにしているのか!?」
「これも鍛錬のためですよ。」
怒りに身を任せ、単調な攻撃を繰り返すシール。
それに比べ、その剣を避け、そらし余裕で対処するニール。
5分ほどでその結果がわかる。
肩で息をするシールと試合前から何も変わらない状態のニール、差が漠然だった。
「これで終わりですか?」
「くっ!これは使いたくなかったんだがな、『炎よ剣にまといて、我が敵を焼き尽くせ!炎剣!』」
シールが詠唱をすると木剣が炎におおわれる。
「それは魔法剣ですか。」
「そうだ、これこそ魔法騎士の特有魔法。なんだ、恐れをなしたか?」
「いえ、熱そうだなと。」
「っ!目にもの見せてやる!」
シールは炎剣を振りおろす。ニールは大きく飛びのいてそれを避ける。
炎剣が地面に激突すると地面が爆発し、破片が飛び散る。
「ほお、破壊力が増していますね。」
「そうだ、これが当たればひとあまりもあるまい。」
「まあ、当たればですがね。」
「言わせておけば!」
炎の勢いによって、攻撃範囲が広がってはいたものの、単調な攻撃は変わらず、さきほどの攻防と変わらない光景が目の前にあった。
「避けてないで当たれ!」
「当たれば、熱いでしょうに。」
「うるさい、うるさい。」
「しょうがないですね。」
ニールは動くことをやめて、その場にじっと立つ。
そこにシールは木剣を振り下ろす。
「もらったあ!」
「ニール!」
燃え盛る木剣がニールの頭に迫る。
そして、シールの腕が下へとさがった。
「どうだ、炎剣の威力は!」
勝ち誇った顔でニールえを見るシール。
「ええ、少し熱かったですね。」
が、炎剣を受けたはずのニールは無傷でそこにいた。
「な、なんで」
「自分の剣の状態が見えていないとは、これで騎士とは・・・。」
言われて、木剣を見てみると剣は中程からボロボロになっており、剣先に至っては灰になっていた。
「木剣なんですから、燃えてしまえば、こうなることはわかるでしょうに。」
「くっそ、剣がよければ、俺が勝っていた。」
「剣のせいにするとは情けない。」
「なんだと!」
その言葉にボロボロの木剣から目線をニールに向けるシールであったが、いつの間にか自分の首筋に木剣が突きつけられていた。
「これが戦場なら、あなたは首をはねられていたでしょうね。」
「ああ・・・。」
我慢の限界だったのだろうか、ニールからは殺気が漏れており、シールそれに当てられて声も出せなかった。
「さて、先生、よろしいですか?」
「え、ええ。勝者ニール!」
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