第73話 ※王side 事後報告
カサネ達が宴会で盛り上がっている頃、王城では今回の事件の報告がされていた。
王は玉座にすわりながら、眉間をつまみつつ、報告を受けていた。
「では、勇者達はゾンビに敗走、聖女と護衛の騎士たちが魔剣と戦い、魔剣は壊れたと?」
目の前には刀身の折れた剣と割れた魔剣の水晶が置かれていた。
当初、剣は城のある名剣を渡すつもりであったのだが、騎士たちとの模擬戦にて使った剣が数秒の攻撃で刀身がボロボロになる自体に渡す剣では耐えられないという判断になり、急遽、名剣を探すことになった。
そして、情報を集めているうちに候補にあがったのが魔剣であった。
この魔剣は勇者召喚前に起きた狂戦士ストームの無差別殺傷事件の時に所有していたものだと確認がとれた。
人を何人も切りつけたにもかかかわらず、その切れ味は落ちず、刃こぼれもしない・・・。
まさに理想的な剣である。
すぐさま魔剣を確保するために、封印措置されている教会へ連絡を取り、引き渡されるとこになった。
が、魔剣はリンガに奪われてしまった。
その奪還に動かない勇者を言葉巧みに操り、魔剣を奪還したと周囲に周知させれば、我々の評価もあがり、他国からの支援金も上がると一石二鳥の作戦のはずだった。
だが、蓋をあければ、この通り
「帰ってきてからは部屋に閉じこもったっきり、出てこず。ドアを開けようとすれば、魔法が飛んでくると・・・。なぜ、こうなった!」
強さに問題はなかったから、送り出したのだが、経験が足りなかったせいで剣が早々と折れ、魔力の使い方を学ぶこともなかったので、暴れたうえに魔力切れで動けなくなり、そこをゾンビにやられたというのだ。それでも勇者に選ばれた人間の肉体は頑丈であり、傷を負ったものの、無事だった。が、体は丈夫でも心が持たなかった。ゾンビに囲まれるまま、何もできずに殺されそうになる。その光景を勇者達は映像で見ていたからなのか、恐怖が倍増してしまった。そして、王達は体さえ無事なら大丈夫だろうと考え、心に原因があるとはわからなかった。
「なんとか勇者達を元に戻す方法はないものか。」
「ただいま、精神に働きかける文祥、宝物庫からの有益な物を探させております。剣に関しても魔剣には劣るものの名剣はありますから。」
「それは折れた剣よりもいいものなのか?」
「それは・・・。」
「言わんでもわかる。元々、耐えられる性能がないから魔剣を求めたのだ。魔剣の修復を頼むしかないかの。」
「魔剣を修復できる職人なぞ、ドワーフくらいしか・・・。」
「ならん、ならんぞ!あんな人間に劣る種族なんぞにやらせるワケにはいかん!」
この国の貴族は大半が人間が一番であると教育されており、その筆頭が王とその側近である宰相であった。
それゆえにナイルが重要しているドワーフのダラスは秘匿されている。
後の問題である魔剣に意識を乗っ取られることは考慮していないのも問題であった。
そんな王達が議論をしている部屋にノック音が響く。
「誰だ?」
「魔導士長にございます。勇者達の心を回復させる方法を見つけましたのでご報告に参りました。」
「おお、それはいい。よし、入れ。」
「失礼いたします。」
黒いローブを来た老人が手に巻きものを持って、部屋に入ってくる。
「で、勇者達を回復させる方法とはなんだ?」
「それについてはこちらをご覧ください。」
そういって、広げられた巻物にはある魔法について書いてあった。
「これは闇魔法に関する書物です。」
「闇魔法とは?」
「闇魔法とは暗闇と精神に働きかける魔法であるとのことです。これを使えば、勇者は以前の姿に戻るかもしれません。」
「ほお。回復できるのであれば、それでよいな。」
「ですが、闇魔法の適正がないと難しいと思われます。適正のある者を見つけるか、劣化でもよければ使う研究をしてみますがどうなさいますか?」
「ふむ、適正のある者を探すには時間がかかりそうだな、よし、研究を優先せよ。」
「かしこまりました。そのようにいたします。」
かくして、闇魔法の研究が開始されたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます