第70話 激戦の後で

 「何もなくなったな。」

 『ああ、奴の大剣だけが残ったな。』


ストームの体はすべて、灰へと変わり、風に流されることで消えていくだろう。後に残ったのは大剣・・・。


 「ああ、誘拐事件の解決の報酬のみか。ここにいる冒険者で分けると少ないな。まあ、生きてるだけで儲けもんだ。」


がっかりとしたアインだったが顔を上げると晴れ晴れとする顔をしていた。


 「まあ、帰ったらシャルのためにお疲れ様会でもしてやるよ。」

 「ほんとですが、おやっさん!」

 「ああ、ここの全員、招待してやるよ。」

 「おい、聞いたか、おやっさんの驕りで宴会だ!早く帰るぞ!」

 「マジか、こうしちゃいられねえな。」

 「さっさと帰ってねえとな。」

 「いやっふぅ、酒だ酒だ!」


さきほどまでボロボロで横たわっていた冒険者達はスクッと立ち上がるとお互いに肩を組んで、町へと帰っていく。


 「ほんと、あの人達、頑丈ね。」

 「さっきまで倒れていたのに、大丈夫なんですか?」

 「大丈夫、大丈夫。城でいばっているような騎士達とは体の出来が違うからな。」

 「まあ、そうですね、あの連中には見習ってほしいものです。」

 「って、うお!」


ジャンさん達と話しているうちに近付いてきていたらしい騎士がすぐ後ろにいた。


 「あ、どうも。スミレの調子はどうですか?」

 「はい、さきほど目を覚まされました。今はマジックポーションを飲んで、魔力が回復しましたからもう安心です。」

 「そうですか、ありがとうございます。」

 「おい、カサネ?」

 「はい、なんですか?」

 「騎士と知り合いってどういうことなんだ?」

 「ああ、それはですね。・・・実は城から追い出された後に協力的な貴族の方が尋ねてきまして、その時に知り合ったもので。」

 「下手な言い訳しなくてもいいぞ。聖女と知り合いっていう時点でなんとなくわかる。」


呆れた様子でいうジャンさん。


 「まあ、お前がいい奴というのはわかっている、それでいいんだよ。」

 「っ、ありがとうございます。」

 「さて、騎士さんよ。この後、どうするんだ?口封じってワケでもないんだろう。」

 「我々の目的は魔剣の奪取。でも、魔剣はもうないですしね。何か言い訳を作らないといけませんね。」

 「うーん、この辺りに刺さっている年代物で代用できるか?」

 「そうですね、折ったものでも持っていけば、上も満足でしょう。まあ、魔剣のことなんて気にしていられないでしょうが。」

 「それはどういうことだ?」

 「まあ、そこは我々にとっていいことですよ。それでは、今回の費用については主から何かしらあると思いますので、おまちください。それでは失礼いたします。」


そういうと騎士は敬礼をしてから聖女の元へと戻っていく。


 「じゃあ、帰るとしますか。」 

 「あ、カサネ君は聖女さんと話してからきなさいな。その代わり、帰ったら手伝ってね。」

 「はい、ありがとうございます。」


ジャンさん達3人と別れ、スミレ達へ向かう。


 「スミレ、気分はどうだ?」

 「あ、先輩、今はだいぶ落ち着きました。」


木にもたれかけて座り込んでいるものの顔色はいいスミレをみて、ほっとする。


 「あ、そうだ、コレを回収していたんだ。イイワケの時に使えるか?」


俺は魔剣の砕けた水晶と、灰となった魔剣にはめていた聖石の欠片を出す。


 「この水晶イイワケに使えそうですね。ただ、その石は持って帰るとまずいと思います。」

 「確かにこの石を持って帰って、製作方法がばれたらまずいかもな、ならどうする?」

 「そうですね、ここに埋めていきましょうか。」

 「そうだな、この墓も荒れてしまったから、供養のために埋めてしまおうか。」

 

ゾンビが出てきた墓は穴ばかり、ストームとの戦闘で墓石は破壊され、土が吹き飛び、木はなぎ倒され、台風が通過したような有様だった。


 「それでしたら、こちらの整地は専用の部隊がいますのでおまかせください。」

 「・・・そうですか、おまかせします。


証拠隠滅用の裏部隊でもいるんだろうなと薄ら寒い予感がしながらも水晶のかけらと聖石のかけらを渡す。

敵対したら、眠れぬ夜を過ごすことになりそうだ。


 「じゃあ、後で色々と説明の連絡するから、ここで別れよう。」

 「連絡って簡単にできませんよね?この方々に頼むんですか?」

 「いや、他の方法が見つかったんだよ、後でのお楽しみだ、じゃあ、またな。」

 「はい、お元気で先輩。」



 

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