第69話 VSストーム 聖なる一撃

聖石が出来上がり、宙にある石が地面に落ちたとき、スミレがふらりと横に倒れる。


 「スミレ!」


俺はスミレを抱き起こした。


 『カサネ落ち着け。それは魔力切れの症状だ。』

 「魔力切れ?『

 『魔力切れは魔力がなくなった時に、体が自己防衛のために気絶するんだよ。』

 「そこまでしないといけなかったのか?」

 『無理したんじゃないのか。みんなが助かるならと思ってな。』

 「そうか、なら無駄にはできないな。」

 「聖女様!」


ちょうどよく騎士たちがこちらに帰ってきたようだ。


 「大丈夫だ、気絶してるだけだ。聖女を頼む。」

 「わかりました、御武運を。」 

 「ああ、いくぞ、リム。」

 『了解、相棒。』


俺は魔剣だった剣と聖石を取り、鍔部分に聖石をはめる。

それはまるでそこにあったかのようになじみ、ピッタリとはまった。

スキル玉と同じように念じてみると、刀身がひ光り輝く。がそれろ同時に剣が悲鳴を上げるのがわかった。

多分、剣がもう寿命を迎えるんだろう、もって全力の一振りしかできないと感じた。

俺はできた剣を構え、リムとともにストームへ歩き出す。


一方、冒険者はというと窮地に立たされていた。

いくら熟練の冒険者であろうと戦場を経験した傭兵の技、そして、無尽蔵のゾンビの体力に次々と戦線を離脱していく。

後、残っているのは銀狼夫婦とアインのみであった。


 「くそ、本当のバケモンだな。こいつどうやって死んだんだよ!」

 「俺はその時にはいなかったが、高ランク冒険者がチームで戦い、壊滅状態になるほどの死闘の末、右手を落としたそうだ。」

 「その右手も厄介なことになっているんだけどね。」

 「後、ポーションも数本。」

 「残っているのは俺たち3人。」

 「でも、カサネ君がきたようね。」


3人で話し合っているところに俺は合流する。

 

 「おまたせしました、皆さん。」

 「おう、それが切り札か。後ろに浮かんでいるのはあの時の本か。」

 「ええ、リムっていいます。」

 「話せる魔導書か、今度色々ききたいな、シャルと一緒にな。」

 「あのシフって子も入れてあげましょうね。」

 「そうですね、皆で帰りましょうか。そのためにも目のまえの奴をやらないと」


ストームはところどころ傷ついているが、それも気になりもしない様子でこちらに迫りくるストーム。


 『奴の魔力の流れをを見るに一番に魔力がたまる部分は左胸、心臓の位置だな。そこを狙え。』

 「心臓か、狙うのは中々難しいぞ。」

 「それは俺たちがなんとかしよう。」

 「お前はそのまま、心臓を狙っていけばいい。」

 「わかりました、まかせます。」


ジャンさんとアインがストームに向かい、走り出す。その後ろからシルビアさんが弓を射る。

放たれた二つの矢はストームにぎりぎり当たらず、地面に刺さる。

ストームは大剣を振り上げ、地面に叩きつける勢いで駆ける二人に当てようとする。


 「それにあたるわけには」

 「いかないんだよ!」


二人は剣の投げ捨て、全力で走り、大剣が到達する前にストームの股をスライディングを使い、通り過ぎる。そして、通り過ぎると二人は手に持った魔鉄ワイヤーを引く。

その魔鉄ワイヤーは先ほどの矢に結びついており、両足に一本ずつ引っかかる態勢になる。矢についただけならすぐにワイヤーはストームの勢いでとれてしまうだろう。

が、矢についたワイヤーを掴むものがいた。

それは先ほどまで倒れていた冒険者達だった。矢は彼らの近くに来るように放たれていた。


 「最後の頑張りどころだ、やるぞ!」

 「冒険者の底力みせてやる!」


ワイヤーは足に引っかかる、ちょうど、傷ついた皮膚にひっかかるように、後は力の限り踏ん張るだけ。

大剣を叩きつけた前傾姿勢、足に引っかかるワイヤーのせいで前に倒れるストーム。

俺はそれを見て、駆けだす。

それでも、ストームは足がすぐに動かないと判断し、両手で地面を堀り、石を掴み投げつけようする。


 「おら、最後のポーションだ。」 

 「とっておきのハイポーションなんだ、味わえ。」


ジャンさんとアインの投げたポーションが頭に命中し、ジュっという音とともに皮膚が垂れ下がり、目を覆う。


 『ドレインタッチ』


リムが黒い手でストームの頭を掴む。


 『これも受けとけ、パラライズ!』


黒い手から電撃がほとばしり、その勢いでストームの上半身が後方に傾き、無防備な左胸が見えた。

脚力強化、腕力強化、聖石を最大まで使うように念じ、いままでとは違うほどのスピードでストームの胸に渾身の突きを放つ!


 ドッ!


左胸に突き刺さった剣が光り、ストームの内部に光が伝わる。


 「ガアアアアアアアアアア!!」


刺さった部分からボロボロとストームの体が崩れていく、その中でストームの口が開いていた。


 『見事』


最後の瞬間だけは戦士の誇りがよみがえったのか。そのまま、満足そうな顔で崩れ去り、剣も同様崩れ、灰になった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る