第66話 狂戦士ストーム
「なんだ、このでかさ」
『これは巨人族か。いや、それよりは小さい。ハーフ?』
「先輩!これは?」
地震が起き、巨大な手が現れたことに驚いた様子のでスミレと騎士達がこちらに来る。
「すまん、魔剣の狙いはこれだったようだ。」
「人質はこれのために集められたというんですか。」
「ああ、誰かこれの正体を知らないか?」
「それでしたら、ナイル様の指令で調べていたことがあります。この廃村には疫病に侵され滅びました。その疫病の原因はこの地に埋葬された傭兵。人間と巨人族のハーフ狂戦士ストーム。大剣と魔剣を持ち、狂ったようにすべてを殺していったそうです。今思うと魔剣の影響を受けていたと思われます。」
「じゃあ、魔剣の元の持ち主がこいつというワケか。で、どうしたらいい?」
「まず、人質達の安全を確保しましょう。避難と足止めで別れて行動しましょう。」
こうして、話している間にも突き出た腕が何かを探っているのが見える。
「じゃあ、俺は足止めをする。」
「あれがゾンビというなら私も残ります。」
「聖女様!あなたは危険です。我らの中から残りますのであなたは避難を。」
「この中でゾンビに対抗するには私のスキルが必要なはずです。それは聞けません。」
「・・・決心はかたいようですね、わかりました。避難を終えしだい、すぐに戻りますので無理をなさらぬように。」
「はい、そちらも気を付けて。」
騎士達はこちらに敬礼してから、避難を開始する。
「さて、あの手を切り落としたら、終わらないかな?」
『さきほどの男より魔力膜が多い、全力で切ろうとすれば傷はつけられるだろうな。』
「傷くらいにしかならないか。」
「先輩。もしかして、この本さん?と話してます?」
「ああ、こいつは魔道具リム。念話で話してる。」
「魔道具・・・。念話ですか。私にも聞こえませんかね?」
「それは後で考えようか、ん!動くぞ。」
腕が目的のものをつかみ取る。それは魔石の山。魔石の山をつかみとった時、その手に吸い込まれるように魔石が消えていき、それに反応するように、頭ともう一つの腕が地面を割りながら出てくる。よく見ると右手首から先はなく、魔剣から出ていた黒い手と同じものが右手を形成していた。
それからはあっという間に足まで地上に現れ、咆哮をあげた。
「グオオオオオオオオオオ!!」
辺り全体が震えるほどの咆哮に俺たちは耳を押さえる。
咆哮が終わり、耳の押さえをといて、ストームを見上げるとこちらをしっかりと見ている瞳と視線が合う。
「こいつ、普通のゾンビとは違い、意識がある!」
ストームは刺さっていた大剣を右手でつかみ、抜いた勢いのまま、横なぎを放つ。
避けようとするが、俺の後ろにはスミレがいる。
ここままではスミレに当たると判断して、大剣に剣を合わせる。
ギィィィン!
金属同士の甲高い音が響き、俺は上に向けて受け流そうとするが大剣の勢いを少ししか殺せないまま、吹き飛ばされ、墓にぶち当たり止まる。
「がはっ!」
『カサネ!』
「先輩!」
声から察するに二人が無事なのがわかった。
あまりの衝撃に息が詰まる。下に向き、息を整えると前を向く、そこには大剣を振り下ろそうとするストームの姿があった。
俺は横にころがり回避するが、大剣を叩きつけた時に衝撃で散った墓のかけらがこちらにも飛ぶ。
破片だけでもなり痛いが、その破片の後には左手の裏拳が迫っていた。
「ホーリーカバー!」
『ドレインタッチ!』
二つの声が聞こえた時、光がストームの動きを阻害し、リムから伸びてきた腕が左手を押さえる。
左手が俺に到達するのが遅くなり、俺は脚力強化を使って、その場から離脱し、二人の近くに戻る。
俺が左手の攻撃範囲から離れるころ、左手は黒い手を振り払っていた。
そして、ストームは忌々しそうな目をこちらに送っていた。
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