第62話 VSリンガ イケニエを襲うゾンビの波

アサシンのジョブを取得したことで、リンガのスキルの影響はほとんど効かなくなり、こちらの攻撃が入るようになる。

リンガも魔力膜を展開しながら、対抗していたが、消化を使うことで中和。

そこに攻撃、パラライズを放つことで段々と傷をつけていく。

そして、その攻撃で怒りが増し単調な攻撃を繰り返すことになる。


 「どうした?殺人鬼ってこんなもんか。」

 「うるさい、黙れ!イケニエの分際でこの俺に傷を負わすとは!」

 『傷どころですむと思っているのか?』


万一のことを考えて、俺は積極的にあおり、誘拐された人達から離れるように攻撃をあたえる。

後、もう少し離れれば、安全だろう。

と、誘導しながら戦っているとリンガが突然止まる。


 「どうした?もうあきらめたか?」

 「あきらめる?それはこちらのセリフだ。」

 「もうお前の攻撃は俺に届かないのに何を言っているんだ?」

 「まあ、お前には届かないだろうな、他のイケニエにも攻撃が届かない位置まで移動させるくらいにな。」


こいつ、怒りに支配されているワケじゃない。こちらの狙いが読まれた。


 「バレたとしてもこの位置ならお前が人質に手を出すまえに倒せる。」

 「まあ、たしかに俺はやられるだろうな、俺だけならな・・・。」


リンガが後方に目線を向けると、そこには廃村から移動するゾンビの姿が見えた。

 

 「な!?」

 「俺がお前だけに集中してると思ったか、イケニエを失うのは勿体ないがな、お前の方がイケニエの価値がありそうだ。さあ、どうする?ゾンビはあいつらを襲うだろう。お前がイケニエを救おうとすれば、俺が後ろから切る。俺を倒してからゾンビを倒しにいく?そのうちに何人死ぬだろうなあ。」

 「この外道が!」

 「うーん、いい響きだ。それは褒め言葉と受け取ろう。」

 「くそっ!リム、ゾンビを止められるか!?」

 『相手は死体だが、パラライズで多少は止められると思う。』

 「やらないよりマシだ。頼む。」

 『了解だ。』


リムがゾンビ達に向かう。

それをリンガは見送る。


 「止めなくていいのか?」

 「あがく姿を見るのが楽しみなんでな、さあ、続きをしよう。」


俺ははやく、ゾンビもとに行くために全力をもってリンガと切り結ぶ。

その間にもゾンビは人質のもとへと進行する。

その動きはリムのパラライズで阻害されるものの、少しの効果しかなくゾンビと人質の距離は縮む。

俺はそれを横目に見ながら、俺は焦りながらリンガと戦う。

 

 「どうした、攻撃が雑になっているぞ?」 

 

先ほどまでの余裕はなく、こちらの傷も増えていき、魔力浸食の影響で動きが阻害される。合間に消化を使い、打ち消すが、それに使うと奴の魔力膜を突破できないという悪循環に陥る。


 「ほら見ろ、もう後もう少しだ。今、どんな気分だ?」

 「最悪だよ!」

 「それは結構。ああ、お前の絶望に沈む顔が見れると思うと心は弾むなあ。さあ、惨劇の始まりだ!」


ゾンビの腕が人質に伸びるのが見える。やめろ、止まってくれ・・・。この手はまた、届かないのか・・・。


あきらめかけたその時、墓場に光が差す。

 

 「ホーリーカバー。」


声が響き、ゾンビの動きが遅くなる。そこにゾンビの後ろから切り込む騎士達の姿。そして、その中心には数週間ぶりに見る女の子の姿が見えた。


 「先輩、お久しぶりです!」


そこには聖女にふさわしいいいで立ちの後輩スミレの姿があった。

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