第60話 魔剣の力

勇者達が廃村へとたどり着いた頃、カサネは東の森の入口にいた。


 (この奥にシャルちゃんがいるのか?)

 『ああ、壁で見た魔力が影響してるのか魔剣の残滓が見える。』

 (よし、気を付けていくか。)


森に入ると生きものの気配がない。


 (生きものがいない?)

 『多分、魔剣のせいだろう』

 (魔剣のせい?)

 『ああ、あの魔剣の魔力なんだが、混じった魔力で濁っているんだよ。』

 (魔力が混じる?)

 『他人から吸収してるんだろうな。そして、そこを見てみろ。』


横を見るとフォレストボアが倒れている。その体はミイラのように干からびていた。


 (なんだよ、アレ。)

 『あれが魔剣にやられたなれの果てだ、何もかも吸いだして魔力に変えているんだよ。』

 (前に被害にあった時はそんな情報なかったぞ。)


本屋聞いたのは魔剣に操られるという点だけだった。


 『あれの性質は魔力の支配だ、魔力吸収したうえで体の自由、精神を支配する。前の時は魔力が弱かった、そして、今回は魔力が強かったというワケだ。』

 (じゃあ、今、シャルちゃんは。)

 『魔力を吸われている状態だろうな、でもさらわれているということはこいつと同じようにミイラになっている可能性はない。』

 (まあ、吸うだけなら犯行現場近くで足りる。まだ、生きている可能性はある・・・。)

 

森の中に生きものがいないとわかると足が早くなった。

森を抜ける頃、森の外から音が聞こえる。


 (この音は戦闘音?)


森を抜ける寸前で近くの木に隠れ、そっと音の聞こえる方を見る。

そこには戦う騎士達とくさった人間のような者がいた。


 (なんだアレ?人間ではないようだが。)

 『アレはゾンビだな、ゾンビ魔力を見てみると魔剣の魔力で動かしているようだ。』

 (ゾンビか、あれを倒す方法は?)

 『通常は頭をやればいいが、今回は元となる魔剣からの供給源を断った方がはやいな。』

 (騎士達には悪いがおとりとなってもらおう。ん?勇者達もいるな。)

 『ああ、様子を見るに強いんだろうが、なんだあの戦い方。あんなんじゃすぐ剣折れるぞ?』

 (おおかた、自分の強さに胡坐かいて、訓練なんかしてなかったんだろ。)

 『ダメなやつの典型だな。まあ、おとりならそれくらいでいいだろう。』


騎士達の健闘を祈りつつ、こそこそと廃村にのこされた魔剣の残滓をリムに見てもらい、静かに廃村奥へと向かう。

そこには墓場が広がっている。


 (さっきのゾンビの出所はここか、かなりの量だな。)

 『ほとんどの墓に穴がある、ここから出たゾンビがさっきのか。』


見ると崩れた墓が多く、無事な墓は見られなかった。が、墓の中心にある巨大な剣がある墓だけは無事だった。


 『あの剣がある辺りに魔力が集まってるな、気をつけろ。』

 (ああ)


墓は身を隠す部分が少なく、堂々と正面から近付くしかなかった。

近くに来ると巨大の剣の前には大量の魔石が置いてあり、そのそばには倒れた人が多くいた。そして、その中にシャルちゃんがいた。


 「シャルちゃん!」

 『おい、声を出すな!』

 「ゾンビを抜けてきた奴がいたか。いきのいいイケニエは歓迎だ。」


魔石の前に座っていた男がこちらに振り向き、ニヤニヤと笑う。

その男の手には美しい刀身をした剣、が、鍔部分に不気味な雰囲気を持つ宝石がはめ込まれている。


 「お前がリンガか。」

 「うん?ああ、こいつの名前か。有名なのか?道理でいい質をしていたはずだ。」

 『こいつ、喰らったな』

 「ああ、喰らったぞ。」

 「こいつ、リムの声が聞こえるのか!?」

 「ああ、魔導具か。意思をもった奴には初めて会うな。まあ、すぐに別れることになるがな!」


リンガが魔剣を構え、こちらに突撃してきた。

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