第56話 東地区捜索

 「シャル、遅いな。」

 「そうね、東地区のお友達のところに遊びに行くっていっても、もう帰ってきてもいいのにね。」


予想では、夕方には帰ってくるはずのシャルちゃんが夜の営業が始まっても帰って来ない。


 「なあ、カサネ、シャルを迎えにいってくれないか?」

 「この頃は客の入りも少ないから、二人で大丈夫だし行ってきてくれない?」

 「そうですね、俺も心配ですし、ひとっ走り行ってきます。」


俺はエプロンを外し、外へ飛び出す。

しばらく、走っていると後ろから、リムが追いかけてきた。


 『何か嫌な予感がする・・・。』

 「シャルちゃんの身に何かあったかもしれないと?」

 『俺の感覚に何かが引っかかっているんだよ。』

 「・・・。」


そのまま、何も見つけられないまま、東地区についてしまった。


 「ここまですれ違わなかったな。」

 『店までこの大通りでいけるからな、すれ違わないなんてことはないだろう。』

 「ということは・・・。」


その時、路地から飛び込んでくる人影を目にする。俺はその人影に身構え、リムは素早く俺の後ろに隠れる。

 

 「カサネ兄ちゃん!」

 「シフじゃないか、どうしたんだ?」

 「さっき、あの男が出たんだ!」

 「あの男っていうと剣を持ったやつか。」

 「うん、その男なんだけど、銀髪の女の子を担いでいたんだよ。」

 「銀髪!?まさか、シャルちゃん!シフ、男はどこにいった!」

 「東門を目指してあるいていたよ。途中までつけていたんだけど、またあの気配がして、思わず隠れてしまって・・・。」

 「いい、よくやった!途中まででいい案内してくれ。」

 「わかった、こっち!」


俺はシフに従い、東門近くまで来る。

 

 「ここで見失ったんだ。」


目のまえにはそびえたつ町を囲う石壁。壁の前には物は置いておらず、怪しい穴もない。


 「どこかに抜け道があるかと思ったが、そんなことはないのか?」

 「俺もところどころ触って確かめたんだけどさ、何もなかったよ。」

 「東門近くの建物を調べるしかないのか?くっ、時間が足りない。」

 『ん?カサネ、ちょっとそこの壁に寄ってくれ。』

 (うん?どうした?)

 『なんか、目のまえの壁から感じるんだよ、多分魔力だ。』

 (壁から魔力?なんでそんなものが感じられるんだ?)

 『同じ魔導具だからかな?』

 (わからないのか・・・。いや、そんなことはどうでもいい。とにかく調べるか。」

 

俺は壁に近付き、言われた部分に手を這わせる。若干、切れ込みのような後が感じ取れた。


 「なあ、シフ。ここってこんな風につなぎ目みたいなものがあったか?」


シフが近付き、その部分に触れる。


 「いや、こんなの見たことないよ。」

 「そうなると最近作られたもんか。ちょうど人が通れるくらいの大きさだな。後はこれをどかす方法だが・・・。」

 『魔力・・・。カサネ、消化のスキル玉使ってみろ。』

 (消化を?魔力を吸いだせるのか?やってみよう。)


俺は消化のスキル玉ネックレスを発動させる。


 「わ!何!?」


至近距離にしたシフがいきなり俺が光りだしたことに驚き、目をつぶる。


 「あ、ごめんな。このスキル光るんだよ。」

 「うう、目がしょぼしょぼする。」

 『どうやら、魔力が除去できたみたいだぞ、押してみろ』


試しに押してみると切り込みの部分から前に倒れていく。


 ドスン!


倒れた壁は崩れていき、ガレキとかし、その後には外へ通じる穴が現れた。


 「ここから、奴が出ていったのか。よし、俺はここから奴を追う。シフ!このことを銀狼の休み処っていう店に知らせに行ってくれ。頼んだぞ。」

 「わかった。気を付けてね。」

 「ああ。」



 

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