第55話 情報共有と新たな被害者
シフと別れた後、同じく東地区にある教会へと向かう。
教会のつくりは木製で白い漆喰を使い、清潔に見える。
だが、その教会も今は兵士が多数配置され、警戒態勢のようだ。
城から派遣されている兵士なら話しかけたら、城に連行されることになるだろうと思い、どうしようかなと考えていると
「おい。」
と横の路地から声が聞こえ、その路地に目を向けるとキリヤがこちらをみていた。
「あれ、キリヤじゃないか?どうしたんだ?」
「お前に話がある。こちらに来い。」
「もしかして、アレのことか?」
「ああ、教会関係だ。」
俺達は教会から見えない路地裏に移動し、話し始める。
「で、どういうことなんだ。」
「教会で強盗が起こった。」
『魔剣が奪われたのか?』
「お前らも予想していたようだな。そうだ、リンガという凶悪犯に奪われた。」
「となるとあの子の証言は正しかったと。」
「あの子?」
「さっき、東地区で剣を持った男が人をさらっているっていうのを聞いたんだよ。」
「そうか、魔剣を持ったやつが絡んでいる可能性が高いと、ナイル様の予想もそうだな。」
「ナイルさんもか?」
「ああ、俺はナイル様の指示でここらを調べている。そこにお前らの情報が来た。」
「そうか、その男が東門を目指していたのは何かわかるか?」
「いや、潜伏先はまだ特定されていないからな。後、ある情報としては勇者が動くといったところだ。」
「勇者?」
「ああ、魔剣は勇者のものと言ったらノリノリで行くといったらしい。」
「そんな見え見えの餌に釣られるか。まあ、あの様子なら納得だな。」
『カサネ、苦労したんだな。』
「あれは城の連中と同じ害悪だな。」
「ははは、はあああああああ。」
「それとお前の気にしていた聖女も参加するぞ。」
「そうなるとは思ったが大丈夫か?」
「生活を見る限り鍛錬はかかさずしているようだし、俺達暗部がそばにいることになっている。危ない時には即時撤退させる。」
「それを聞いて、安心したよ。で、俺はそう動けばいい?」
「今、暗部全体で街の様子を見ている。なにかあれば、俺が連絡にいく。」
「了解。なら、このくらいで俺達は帰るよ。」
「ああ、ではな。」
キリヤは音もなくそこからいなくなる。暗殺者か、隠密の技はならってみたいな・・・。
俺はそのまま、店へと戻る。
-シャルside-
今日は東地区のお友達の家で遊ぶためにお休みをもらっていた。
遊ぶのに夢中で家を出る時にはもう夕日が沈みそうになっていた。
私は家に帰るために駆け足となっていた。
自分の足音と呼吸音しかしない帰り道。この時点で気づくべきだったのかもしれない。
人の気配がしない・・・。
夜のとばりが降りる時間体にこの人のなさ、薄ら寒い雰囲気に震えそうになる中、足を動かしていた。
後半分の距離で店につくところで、やっと人影を見つける。
その人影は不自然なほどに横に揺れながら歩いている。
少し心配になり、声をかけようかと思い、接近していく。
近付いていくと、男の顔がよく見えた。
口を三日月の形にした不気味な笑みをした男の顔が見えた。
その顔にひるんでいると男が声をだす。
「マダ、タリナイ・・・。」
足りない?何が?男がこちらの顔を見る。こちらを確認したとき、狂気じみた笑みを浮かべ、喜び満ちた声を上げる。
「イケニエ!イタ!」
イケニエ・・・?何を言っているの?男がこちらに駆け出す。私は逃げようと背を向けたが、足がいうことを効かず、歩くくらいの速度しかだせなかった。
ザッ!
背中から音がした。同時に痛みも覚えた。驚いて後ろを見ると血の付いた剣を握る男が私に手をのばしていた。
お父さん!お母さん!・・・カサネさん!助けて・・・。私の意識はそこで途絶えた。
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