第52話 ※ナイルside 二つの事件

城での魔剣奪還への準備が進められている一方で、ナイル邸にもある報告が届く。


 「行方不明者だって?」

 「はい、深夜に出歩いている者がいなくなっているとのことです。」

 「何か関連のある出来事はあるか?」

 「性別、年齢ともに共通点はありませんね。方角については東側の被害が多いようです。」

 「東・・・。何がある?」

 「東門の外には草原、その後に森ですが・・・。北東には廃村がありましたな。」

 「廃村か。特徴はあるか?」

 「昔、疫病がはやった頃に村に所属した多くの冒険者が埋葬されているらしく、生前の武器を利用した墓が多いようです。」

 「武器。そういえば、教会にあった魔剣が強奪されたと報告があったな。行方はわかったのか?」

 「そちらもまだ、手がかりがないようです。」

 「そうか、とにかく、行方不明者捜索の依頼を冒険者ギルドに出そう。ギブソン頼んだ。」

 「かしこまりました。旦那様。」


ギブソンは依頼をだしに、部屋から出ていく。


 「さて、キリヤ。カサネ君の調子はどうだい?」

 「怪我の回復も済み、店の手伝いにでているようです。」

 「回復はやいね。何か報告できることはある?」

 「新たにスキル玉を作ったようで、重いものを軽々と運んでいるのをみましたね。」

 「ふむ、身体強化系かな?どう思う?」

 「この間のホブゴブリンから奪ったと思われます。」

 「やっぱ、その結論に行きつくよな。スキルを奪うとは危険な能力だな。味方でよかったよ。」

 「いざとなれば、私が・・・。」

 「勝手は許さないよ、キリヤ。カサネ君はこの国に打ち込む楔だ。革命のためのね。」

 「失礼いたしました。」

 

コンコン、ココン。独特のリズムで叩かれるノック。緊急を要する時の音だ。

 

 「なんだ?」

 「城からの連絡にございます。」

 「ドアの下から通せ。」


ドアの下から紙が入れられる。キリヤが警戒しながら、紙をとる。


 「聖女につけている暗部よりの連絡です。魔剣の強奪にかかわったのはリンガだそうです。」

 「リンガ!?これまた大物がでたもんだね。で?」

 「城で持て余してる勇者達に奪還を命じたようです。」

 「よく勇者が引き受けたね。」

 「どうやら、魔剣は勇者のものであったと伝えることで独占欲を刺激したようです。」

 「見事の釣られたワケか、にしても魔剣って勇者が扱えるものなのか?」

 「持った瞬間乗っ取られるようですが、勇者には神の加護があるそうですからね、王達はそれに期待しているようです。」

 「ふーん、期待するなら、僕はカサネ君を推すかな?」

 「そうですか。」

 「ん?否定しないのかい?彼のこと嫌っていたと思ったけど。」

 「勇者よりマシと思っただけですよ。」


そんなことを言っているキリヤであったが、若干顔が赤くなっている。


 「まあ、いいか。にしても魔剣と行方不明事件。これは同時期に起こっているワケだが、関連はあるのかね?」

 「偶然とは思えませんね。」

 「これ以上大事にならないといいんだがね・・・。」


希望を口ずさみ、外を見上げるナイルの目には不気味に赤く光る月が映りこんでいた。

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